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コロナが変容させるB2BセールスとSales Techの未来

新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活様式を一変させ、経済活動にも大きな変容を及ぼした。感染のリスクを避けながらトップラインの維持・向上を図るため、B2Bセールスも否応なくオンライン中心の活動に切り替わり、そのための対応が各社で急ピッチに進められた。この1か月強の期間、突如として訪れた危機的状況を何とか乗り越えようと、組織単位、また営業部員個人単位で、営業活動のための様々な努力と工夫が懸命に行われた。

こうした状況が今後も継続することが予想される中、B2Bセールスも新しい形を模索していかなくてはならない。本稿では、新型コロナウイルスの感染拡大により生じた営業活動への影響を数値で確認しつつ、B2BセールスとSales Techの目指すべき未来について考えてみたい。

数値で見る営業活動への影響

新型コロナウイルスが流行する前の世界でも、スタートアップを中心にオンラインでの営業は既に浸透していたが、それでも、特に最終的な受注の段階においては対面交渉が主要な営業手法とされていたように思う。新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う各社のリモートワーク導入により、日本のB2B事業者の営業活動も変容を余儀なくされた。予想されたことではあるが、McKinsey & Companyの調査(以下「McK社調査」という。)によれば、国内B2B事業者の90%強が営業手法を変え、オンライン/ウェブによる販売が主要な営業手法に取って代わることになった。

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日本の場合、このようなオンラインのみでの営業活動では成果を挙げることは難しいと考えられていたように思う。ただ実際には、多くの事業者において新しい営業形態は効率的と感じられているようだ。McK社調査では、68%の企業においてこれまでと同等以上に効率的と捉えられており、その数値は緊急事態宣言が行われた直後の53%から1か月弱で15%上昇している。

移動時間が存在しないため連続で面談をセットできるし、営業ルートを検討する等の作業もなくなるので、この結果には頷ける。この期間でオンライン面談のツールも普及し、回数を重ねることで営業担当者と顧客も徐々にオンライン営業の抵抗感や対面営業でなければ決められないという固定観念がなくなていったのだろう。

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McK社調査では、こうしたオンライン中心の営業手法について、63%の国内B2B事業者が12か月以上継続すると回答している。オンライン営業の効率性を考えると、実際にはオンライン中心の営業形態が更に継続することも予想される。

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Self-service型のセールスへの移行

今後、対面での営業を必要としない顧客の購買行動が定着していくと、次にどのような変化が生じるだろうか。展示会等のオフラインでのマーケティングの効果やテレアポの成功率が激減し、対面での営業の重要性が低下したとしても、日本ではオンライン面談やメール、アウトバウンドコール等何らかの形で営業担当者が主体的に顧客に接する営業形態が好まれるように思う。

他方で、新型コロナウイルスの感染拡大以降、B2Bカスタマーにおいてウェブサイト上で完結する形での購買行動は増加傾向にあり、McK社調査では12%向上している。

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グローバルで見ると、B2BカスタマーにおけるSelf-service型の購買傾向はこの3年で大きく増加している。もちろん、商材によって向き・不向きがあるだろうが、コロナの影響でデジタルチャネルが充実していくと、リーサチや評価・検討に留まらず、購買の意思決定に至るまでウェブサイト上で完結させたいと考えるB2Bカスタマーは日本でも増えてくる可能性が高い。

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顧客の購買行動としてSelf-service型が好まれるようになると、自社のウェブサイト上で簡単に情報収集やオプションの比較をして、迅速に購買の意思決定を行えることが必要になる。そのために、オウンドメディアや動画コンテンツ、パーソナライズされたメッセージの発信等、コンテンツリッチにするための施策をこれまで以上に積極的に進めていくことになるだろう。また、近年はウェブサイト上でのチャットボットでの対応が普及しているが、自社ウェブサイトでの購買行動の重要性が増すのであれば、むしろバイヤーが求めるときはいつでも、電話、ビデオ会議、またはWebチャットで簡単に営業担当者を呼び出せるような仕組みを採用し、営業人員もその対応に充てるということも検討が必要になる。

いずれにせよ、B2Bカスタマーについても、B2CのE-commerceのような顧客体験の提供を目指していくべきであろう。

Sales Enablementによるデータ起点の営業人材育成

オンラインでの営業活動が常態化し、顧客のSelf-service型購買行動の比重が増していくと、営業組織やその育成方法も自ずと変化が必要となる。

まず、対面での営業活動を行う場面が極端に減ると、敢えてインサイドセールスとフィールドセールスで営業人員を明確に区別する必要がなくなってくる。そうすると、いわゆるTHE MODEL型の営業組織は馴染まなくなるかも知れない。また、営業組織として場所と時間を共有することの意義が薄れていくと、そもそも営業人員を社内で抱える必要性も低下し、在宅環境で効率的に活動可能な人材に対して積極的に営業の業務委託が行われるようになると考えられる。

このようなオンライン型でかつ業務委託先の人員が重要な営業組織になると、これまで行われてきたOJT中心の人材育成にも変化が必要となる。近年、国内でもSales Enablementという営業人材育成の仕組みが注目され始めているが、PostコロナにおいてはこのSales Enablementの取り組みも各社で積極的に採用するべきだろう。

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Sales Enablementという仕組みの捉え方には様々な考え方が存在するようだが、基本的には、SFAやCRMに蓄積したデータや成果を起点として、体系化された育成コンテンツの提供とトレーニングのフォローを行うことが重要な要素となる。Association for Talent Developmentにおいて示されている通り、Sales Enablementは営業部門そのものと両輪を成す重要な部門とされている。

近年、国内でも様々なSFA・CRMが普及したが、それらに蓄積されたデータを人材育成に活かせていないという会社も多いと聞く。オンラインやウェブ上での営業活動と購買行動が増えていけば、SFA・CRMに蓄積されるデータも自ずと増加する。そうしたデータを眠らせることなく、Sales Eneblementに活用することができれば、Postコロナの時代においても強い営業組織の構築は可能であるように思う。

Sales Techの第三の波が拡大

新型コロナウイルスによる営業手法と顧客行動の変容は、Sales Tech領域のイノベーションも大きく加速させる可能性がある。

SFAやCRM等のSales Tech系のツールは、過去の活動や実績をデータとして整理・保存し、管理することには優れていたが、そのデータをどのように営業活動に活用するかという分析や予測の部分については人の判断が求められていた。実際、そうしたデータに基づく分析や予測は容易ではなく、ツールを導入しても結局社内で上手く活用できないという課題が存在していたように思う。

この課題に関して、Gartner社によると、現在Sales Techは第三の波の中にある。SFAやCRMに蓄積されたデータに基づく分析や予測について、アルゴリズムにより自動化するツールが今後拡大していくことが予想されている。

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例えば、機械学習を用いて、営業部隊に求められる次善のアクションを継続的に予測分析し、提案するAlgorithmic-guided Sellingや、将来の販売予測やトレンド予測を行うPredictive Lead Analyticsといった仕組みだ。まさに、これまで人間には行えなかったCRM上のデータに基づく分析や予測をAIが代替するものになる。これにより、個々人が判断することによる不確実性が取り除かれ、かつ、プロアクティブな営業活動が可能となる。

コロナによる営業活動のオンライン化が進み、デジタルの購買行動が拡大していくと、SFA・CRM上のデータも蓄積が進むことになる。そうすると、蓄積されたデータを活用するためのアルゴリズムの開発ニーズも大きくなり、第三の波も加速する。Sales Techスタートアップは、このタイミングを好機と捉えて、成長のためのアクセルを踏むべきだろう。

おわりに

新型コロナウイルスの影響により営業活動と顧客行動が大きく変容する中、この営業領域のスタートアップには大きなチャンスが訪れているように思う。既に国内でも営業領域の様々なサービスが提供されているが、このコロナの環境にあって更に新たな課題の解決を目指すスタートアップが現れることを願いつつ、今後もこの領域に注目していきたい。

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森・濱田松本法律事務所(弁護士)→STRIVE(ベンチャーキャピタリスト)。金融庁出向、New York University School of Law卒、New York州司法試験合格、米国法律事務所での勤務経験を経て、VCへ参画。https://strive.vc/

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