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ブロックチェーンスタートアップに入社してから1年が経過したので振り返る

この記事では、ブロックチェーン企業に入社してから1年が経過して得たものを記録としてまとめることを目的とした記事です。また、記事の中で便利なtipsやスタートアップ全体に共通すること、ブロックチェーンスタートアップだからこそ特殊な点などを散りばめています。

総括

スタートアップ全体として共通することとして言えそうなことは、軌道に乗るまでずっと辛い(別に今もそこまで乗っていません)ことです。

全体の方針として自律分散的に働ける会社で実質的な責任を取る必要のない立場で自由にやらせていただいていますが、いつ市場が冷えるかもわからないブロックチェーン領域で実際にリスクを取っている代表の立場を考えてみるだけで少し気分が悪くなります。

予定は立てるが、マーケットの影響や顧客からの反応を得てみると予想とは全く違うことが多く、入社当初の予定とは大きく違うことをやっているのが今です。

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人間は通常では一貫性を求める生き物ですが、変わってはいけない前提条件が変わったり自分たちを内包するメタ的な要素が変化した場合には自分たちの行動も変化する必要があります。

その度にアイデアを白紙に戻してゼロベースからニーズを分析し、サービスの切り口を考え、ビジネスの構造を組み立てなければならないというのが、直感と常識に反する事実でした。(そういう背景から、ビジネスではなく人に投資するという言葉の解像度もあがりました。)

業界内の人からすると自明ですが、ブロックチェーン企業特有のものとしては日本で勝負するなら法律は絶対に欠かせません。

技術力やマーケティングのみで勝負するのであれば無国籍企業として優良なプロダクトをリリースするのも選択肢の一つですが、国の中の一企業として健全な成長をするのであれば法律解釈の整理を怠ると一発退場もあり得ます。

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いわゆる流行りのスタートアップビジネスにおいては法律違反で一発退場というのはあまり聞きませんが、ブロックチェーン領域においては当たり前にあります。

なにをするにも法律部分への配慮をしなければならないのはブロックチェーン企業特有のものであり、法律部分への配慮と分散思想がブロックチェーンビジネスをわかりにくくしていると考えています。

話がずれたので働いた感想をまとめると

・とにかく大変
・変わり続けないといけない
・ブロックチェーンスタートアップは色んな意味で難しい
・理解が難しい分パワーアップする

という感じです。しかし、残業は一切していませんし、毎日知恵を振り絞るのは楽しいのでかなり充実していました。


以下は、1年間で学んだものです。

カルチャーが優位性になるのは本当

サービスを練る上でMoatの話をすることがあるのですが、突き詰めて考えるとMoatになりうるものは全てカルチャーに紐づいていました。

採用すれば解決、資金を投じれば解決、ビジネスモデルを変えれば解決という風にいかない要素がMoatを築き、それらは全てカルチャーが基盤になっていることに気づきました。

よく「カルチャーは大事」という教科書的な本はありますが、読んで感じる以上にカルチャーは重要であると実感しています。

カルチャーというのはかっこいいそれっぽい言葉ではなく「こうある形だよね」という組織に浸透しているふんわりしたものの解像度を極限まで上げて言葉にしたものでなければならないという印象を受けました。


ブロックチェーンを絡めたビジネスを考えるのは面白い

学生の時は四季報を片っ端から読んで利益率の高い企業を見つけ、決算資料を読んで分析していたので色々なビジネスモデルの構造は理解しているつもりでした。

しかし、ブロックチェーン領域は様々な要素が通常のビジネスとは異なるため、既存のものをそのまま当てはめるとおかしなことになったり、良いように見えて利益が全く上がらなかったりします。そのため、財務三表をどう組み立てるかをフェーズごとに0から考える必要がありました。

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スタートアップだと売上の構成要素を分解して収益性を測ることが多いかと思いますが、それが事業を進めるにあたってPL、BS、CFそれぞれに与える影響を同時に考える必要があり、それが非常におもしろいです。

ブロックチェーン業界はまだ儲かる構造そのものを追い求めているフェーズであり、その構造を見つける、もしくはエコシステムを作る人が勝てるおもしろいものだと思いますので、ゼロベースで儲かる仕組みを考えるのが楽しい人はおすすめです。

既存の業界の儲かる構造を抽象化して当てはめてみると意外な領域から考察を得ることができるため、自然と広く浅く勉強できるようになります。

ファイナンスもおもしろい

入社時にファイナンスをやったことがないからやってみたいという風に言ったところ、事業計画の策定やピッチ資料をはじめ、かなり踏み込んだところまでやらせていただきました。

web上の記事では具体的なファイナンス手法が公開されておらず、スタートアップにおいてエクイティファイナンスといえば第三者割当増資というところが多いという認識ですが、J-KISSなど近年増えてきた資金調達方法を分解して見てみると投資家側と起業家側のリスクリターンのバランスが明瞭になり、解像度が上がりました。

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ファイナンスは基本的な内容+条件にあった交渉によって決まりますが、妥協点を探ったり提案したり、様々なシチュエーションを考えてリスクリターンのバランスを調整する思考実験をしています。

事業によって調達方法や資本政策の描き方の違いがわかってきたため、様々なビジネスモデルを想定した上での思考実験はこれからも続けたいと思っています。

また、私はブロックチェーン業界にいるからというのもありますが、トークンを使った特殊な資金調達方法にも興味があります。

現在は株主と経営者と従業員という形のピラミッド構造であるのが株式会社の特徴ですが、社内外の境界線を曖昧にした社会的な利益をもたらす法人の可能性も探りたいです。(そちらの方が柔軟で強度があると思っています。)


法律もおもしろい

究極的には儲かれば良いのですが、スタートアップは法律を理解した上で勝負するともっと良いなと思いました。

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儲かるだけであればPLが立ちやすい企業を設立して地道にキャッシュを追い続けるのが良いですが、法律の新しい解釈を見つけたり誰も切り開いていない部分を攻略しにいくと、仮に失敗しても他の誰かがその上を超えてイノベーションを起こしたりできるのだなと、代表と話していて気づくことが機会が多くありました。

規制があってこそイノベーションは生まれるので、しっかりとルールを理解することは不可欠です。そのため、ブロックチェーン業界の弁護士の先生方が推薦する本や理論に関してはキャッチアップを強化していこうと思っています。

2年目

2年目は、社会に対して明確な利益を提供しながら会社を稼がせたいと思っています。稼ぐ、という風に言うとがめつく聞こえますが、持続可能なエコシステムを作るためにはお金が循環する仕組みが必要であり、より良い人を採用し、サービスを改善し、会社として持続するために稼ぎ続ける必要があります。

しかしサービスの性質上、多くの方が使ってもらうことによって循環する性質を持つサービスであるため、業界の多くの事業者の方々にも稼いでいただく必要があります。

年始に書いたnoteと内容はかぶってしまいますが、商売上手になるために多くのビジネスを観察し、センスを身につける1年にしたいと考えています。


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