マネジメントは人への理解が重要という話
ファンズ株式会社 CTO の若松(@yshnb)です。
今回からはしばらくの間、「CTO の思考シリーズ」として私自身の考え方を書いてみようと思っています。第1回はマネジメントについてのお話です。
マネジメントの中でも、ここでの対象としてはピープルマネジメントに焦点を当てたものです。
今回は組織のマネジメントに携わる中で、個人的なマネジメント観として重要と考えているトピックを書いてみました。
マネジメント手法の一般論と限界
ピープルマネジメントの手法として知られている方法はさまざまありますが、マネジメントは人と人との関わり方である以上、多くの場合において型通りにいくとは限りません。
1on1 の機会を増やすことがいつも正しいか?
一例として、「1on1 で頻繁にコミュニケーションをとる」という手法があります。 1on1 自体が有効な機会であることは否定しませんし、私も実施しているわけなのですが、 1on1 によるコミュニケーションを頻繁に実施することがよいのかどうかは、その人や組織の状況次第です。
一般的にはコミュニケーション過多であるよりも機会不足であることが多いので、こうした対話の機会が重要であるということは一理あります。しかし一方で、コミュニケーションよりも業務に集中したい人、必ずしもコミュニケーションの機会を必要としていない人もいるはずで、画一的に 1on1 をやる、と決めてしまうことがいつも最適とは限らないはずです。
1on1 のような手法ありきで考えるのではなく、マネジメント対象となるメンバーがどのような価値観を持っていて、会社や組織に対してどのようなことを求めているのかを、できるだけ解像度高く理解することが重要と考えています。
さまざまな人がいることを理解する
マネージャーとしてはメンバーが高評価を得られるよう導きたいのが本音
会社の中では、多くの会社で昇進のための仕組みやシステムが用意されていることでしょう。
年次により自動的に昇進するような企業の場合はともかく、成果主義の会社であれば、キャリアアップや昇進は、なんらかの形で成果や能力を評価されることで実現されうるもののはずです。この観点からは、マネージャーである上司として、メンバーが高い評価を得られるように導いてあげることがマネージャーの役割です。
メンバーが高い評価を得られるような成果を残せれば、その総和として組織やチームとしての目標も達成され、会社としても理想的な結果に着地させられるはずです。もし仮にメンバーの多くが高い成果を残したのに、それが会社の成果につながらなかったとすれば、それは戦略が正しくないということであり、経営戦略の問題ということになります。
そもそもマネジメントを経験されている方ならわかると思いますが、マネージャーとしての役割であるとしても、ネガティブな評価を伝えることは心苦しいものです。この意味でも、マネージャーとしてはメンバーが高い評価を得られるように導いていきたいという気持ちがあります。
すべての人が昇給・キャリアアップを求めているとは限らない
ところが、すべての人がそうした高い人事評価・およびそれを通じたキャリアアップを望んでいるとは限らない、という点も考えておく必要があります。
キャリアアップや昇給を求めていない人に対して、いくら目標達成のために頑張れと言ったとしても、その人に対しては響かないことが多いでしょう。そうした人に対しては、その人がどのような価値観をもっているのかを理解していく必要があります。
キャリアアップを求めていない人が望むこと
では、そうしたキャリアアップを求めていない人が望むことはなんなのでしょうか?
必ずしも昇給やキャリアアップを望まない中、穏和な人間関係の中で働くことを望むのか、感謝の気持ちが示されるような環境を望むのか、それとも知的好奇心などで自己実現をしたいのか、その人が求めていうることをできるだけ詳しく理解することが重要です。
もし今携わっている仕事が面白いと思っていないのであれば、どんなことに対してであればモチベーションを高く維持できそうなのか、仕事以外でもそもそもどういう時にモチベーションが高いと感じるのかなどを聞くことで、その人の価値観を理解する一助にはなると考えています。
自分自身でも本心がわからないことは思いのほか多い
また、メンバーから話を聞く中で、話をしている本人が本当に望んでいることを必ずしもうまく言語化できるとは限らないという点にも注意する必要があります。
一度話を聞いた時に話していたことが、少し時間が経ったころにあらためて話を聞いてみると全然別のことを言っていた〜なんてこともよくあることです。
繰り返し話を聞く中で理解を深めたり、同じことでも別の角度から話を聞いていくと、今まで気づいていなかった価値観を知ることもあります。こうしたことも頭の隅に置いておきながら、話を聞いていき、その人への理解を深めていく必要があります。
必ずしも本当に思っていることを言ってもらえるとは限らない
マネジメント対象のメンバーと利害関係のある立場であったりとか、この人には言っても伝わらないだろうと思われている場合には、率直に話してもらえるとは限りません。
これに関してはできるだけ率直に話してもらうように伝えたり、信頼獲得に努めるしかありませんが、このような可能性もあるということも念頭には置いておくことが必要です。
「人への理解」から選択肢を提示する
マネージャーが提示できる選択肢を把握する
マネジメント対象のメンバーのことを十分に理解できてはじめて、会社の方向性とも一致し本人にとっても望ましい結果になるように導くことができるようになります。
ですが、マネジメント対象のメンバーに対し適切な提案ができるためには、そもそもマネージャーとして提案できる手札を理解しておく必要があります。
マネージャーとして提案できることの一例としては次のようなイメージです。
今やっている仕事に対してモチベーションを感じられないのであれば、仕事の意義を伝えたり、よりモチベーション高く携われる仕事を与えられるよう試みる
人間関係がうまくいっていないのであれば、対話の機会を設ける(それでもうまくいかないのであれば、組織内の異動やコミュニケーションラインを変えるなどを提案する)
現在の制度や仕組みが望ましくないのであれば、仕組みを変えられるような提案の手解きをする(あるいは、マネージャー自身が提案を行うなど)
もちろん会社という組織は営利組織であり、リソースも有限です。そのため、必ずしも期待を叶えられるわけではないという前提は理解してもらう必要があります。また本人の能力的にそのタイミングでチャレンジしてもらうのは厳しいのではないか、と思うこともあるでしょう。
その人がどんな価値観を持っているのか、どんなことを期待しているのかという理解と合わせ、できるだけその期待値を叶えられるように動くことがマネージャーに求められることなのだと考えています。
マネージャーの限界を理解しておく
少々話は変わりますが、マネジメントにおいて重要なことの1つは、マネージャー自身のメンタルが健全であることだと思っています。
マネジメントというのは往々にしてさまざまなトレードオフがあり、精神的負担もあると思います。ですが思い悩んでも解決できないことは解決できないので、そこは一種の割り切りが必要です。
たとえば、会社の業績が悪かったり、本人が客観的にみて成果があげられていない中で、高い報酬を求められてもそれに答えることは難しいでしょう。もちろん業績を改善するにあたっては人の力が必要なわけで、現在の報酬が人材市場に比べ明らかに市場価値より低いならば一定の合理性がありますが、いつもそのような状況とは限りません。
また現在携わっている仕事に対してモチベーションが低いということに対しても、モチベーションの上がるような仕事が必ずしも自社内に存在するとは限りません。
これらの事情を理解してもらえるかどうかは別なのですが、どうしても正面から要望を叶えられない場面では、伝えられる範囲で誠実に伝えきると共に、現時点で可能な選択肢を提示しきることができることなのかなと考えています。
採用でも「候補者への理解」を深めることが重要
採用活動における選考は、候補者側からの見極めの場でもある
人への理解を深めることは、採用の場面においても重要です。面接をはじめとする選考プロセスでは、候補者の方の話を聞く中で自社において活躍できるかを見極めていくことになると思います。
一方で、候補者の方が自社において活躍できるかどうかだけではなく、候補者の方が自社に入社いただけたときに、候補者の方の期待を叶えられるのかという点も重要です。この点が叶えられないと、いくら自社に貢献してくれそうな方であっても、候補者の方の期待に沿えるような機会ではなく、結果的に短期で離職してしまう可能性があるためです。
叶えたい期待はどんな事業に取り組めるのか?という点もあれば、仕事の内容かもしれません。また待遇や報酬、ポジション・裁量のようなものを期待される場合もあるでしょう。またそれだけではなく、どんな人と働くのか、同じビジョンを持って働けるのか、気持ちよく働くことができるのかといった、人間関係を重視することもあるかもしれません。
自社への転職によって候補者の方の期待を満たせるか?
転職される候補者の方にとって、転職は人生の転換点であるはずです。もし候補者の方が入社後、自社で実現したいことが叶えられないとすると、時間をかけて選考に臨んでいただいた方にとっても、不本意なまま働き続けるかあらためての転職を余儀なくされることとなる可能性もあります。
そのためには、選考の過程で、次のような点を理解することが重要になると考えています。
候補者の方はどのような価値観を大切にされているのか?
現職や以前の仕事で満たされないことはなんなのか?
上記の満たせなかった観点を、当社であれば満たすことができるのか?
満たせないことがある場合は、無理に取り繕うことはせず、現状をしっかりと伝えた上で、それでも納得してもらえるかを念頭におきながら入社していただくことが重要だと考えています。
選考では対話の接点が限られている
組織におけるマネジメントとは異なるのは、採用候補者の方の場合、面接などでお話を聞ける機会は限定的ということです。候補者の方はほかの企業の選考も受けている中で、当社にもわざわざ時間を割いて受けていただいているということが通例です。
一方で、選考が進み当社でも採用したいと考え、候補者の方も真剣に検討をしてくれているけれども、本当に当社が候補者の方の期待に沿えるかわからない場面でもあります。このような時には当社として期待していること・候補者の方が当社に期待することの双方をすり合わせることも必要と考えています。
採用する候補者の方を入社後はマネジメントすることを考えるならば、採用とマネジメントは本来地続きなはずです。そういう意味でも、入社前後でできるだけ期待値のギャップが生じないようにするべきだと思っています。
大事なのは人への理解を深めること
ここまでさまざまなことを述べてきましたが、採用・マネジメント共ににおいて重要なのは、その人が「どんな人であり、なにを期待するのか」をできるだけ深く理解することだと思っています。
その人がどんな価値観を持っているのかを深く理解することで、会社としての期待と個人が求めることの双方にとって望ましい機会を作り出せるものと考えています。
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最後に
人材募集について
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