見出し画像

旅行商品はコロナを踏まえ、どう変わるべきか?

この1年半、旅行業界に猛威をふるい続けてきた新型コロナウイルスは、ゆるやかではあるものの落ち着きをみせてきました。ワクチンパスポート&PCR検査があるものの、いくつもの国では隔離なしでの渡航が解禁され、重く動くことのなかった世界への扉が徐々に開かれてきました。

先日、ついにタイも観光客受け入れを開始しました!アウトバウンド事業者にとって明るい兆しがついに訪れ始めました。

しかし、日本の旅行業界はそう楽観視できる状態にないのが実態です。今年3月に、最大手JTBは資本金を23億400万円から1億円に減資し、税制上の中小企業になりました。先日、日本旅行も同様の対応を行い規模を縮小しました。

きびしい現実ではありますが、業界として着実に復活していくためにも、コロナで変容したニーズに目を向け、今後の展望を描いていく必要があると思っています。

旅行商品はコロナを踏まえ、どう変わるべきなのか?


コロナで激減した旅行商品のひとつが「パッケージ型団体ツアー」などの企画旅行。現時点で、密を避けることが難しく、万が一コロナ感染者が発生した場合に経路を追うことが難しい団体ツアーは、参加者だけでなく提供者側にとってもリスクの高いものになっている。

パッケージツアーとは、旅行会社があらかじめ旅行目的地および日程、宿泊、交通、観光などのサービス内容ならびに料金を設定し参加者を募る旅行のこと。標準旅行業約款でいう募集型企画旅行のことで、パック旅行とも呼ばれる。
出典:JTB総合研究所

そもそも、近年個人がインターネットにアクセスできる時代、FITの台頭で『自分で調べていくことができるのに。なぜ知らない人と団体行動し、特定のルートを回らなければならないのか』といった意見も多い。

FITとは、団体旅行やパッケージツアーを利用することなく個人で海外旅行に行くこと。Foreign Independent Tourの頭文字の略。Free Individual(Independent)Travelerともいう。
出典:JTB総合研究所

不特定多数の他人があつまり、自由度の少ない団体ツアーには懐疑的な人が増えてきたの現実だ。実際に、世界中の情報がインターネットによって一般化したことで個人で好きなように旅行ができるようになった。海外も例外ではない。

しかし、そんな時代に突入しても私は「パッケージ型団体ツアー」には一定の価値があったと思っている。それは他者と繋がり、仲良くなる体験です。旅行商品の潜在的な価値としてこれまであまり言語化されてこなかったが、知らない土地で一定の時間を共有すると人は仲良くなりやすい。バックパッカーが同じ旅路を共にすると友達になっていく現象もそれに近い。今回深堀はしないが、分断が進む社会で一定の価値を発揮する旅の要素だと思っている。「パッケージ型団体ツアー」はそれらの個人旅行にはない潜在的なニーズを内包するものであり、今後も一定の需要はあるかもしれない。

マイクロバス規模で行うアレンジ旅行の可能性

先述の通り、大人数での「パッケージ型団体ツアー」はリスクが高く難しい実情がある。一方で、他者と繋がる体験を内包した旅行商品には一定の価値がある。その中で、リソースを投じるべきはスモールグループ向けの商品をつくることかもしれない。

画像1

修学旅行や社員旅行のように事前の打ち合わせをした上で参加者の希望に沿った形の受注型企画旅行を、スモールグループ向けに実施する。家族や若年層、特定のジャンルなどにターゲットを絞った上で、旅行のプロが商品をつくり提供することで満足度の高い旅行が実現する。

ただ、こうした旅行商品をつくっていく上で突破しなければならない課題は、1)コスト構造改革と、2)アレンジ力に長けた人材の確保だ。

そもそも大衆向けにつくれらたパッケージ型団体ツアーが形を変えずに残り続けた要因は、その汎用性と採算性の高さにあった。同じような商品で価格もそれなりに高くても一定の集客を実現し続けていたため、旅行会社としては手放す理由がなかった。

しかし、スモールグループ向けの商品となると同じコスト構造では採算が合わなくなるため、適切な価格設定を行い、参加者のニーズに合わせて旅行をアレンジする能力が必要になってくる。それらの対応を柔軟に行うことができる組織体制にしていけるか、旅行会社は問われているように感じる。

短期案件依存への危機感

現在変化が問われる旅行業界において、売上の大きなシェアを単価の高い修学旅行や社員旅行など大口団体案件や「GoToトラベル」に依存していることに、一定の危機感がある。

確かに、コロナ禍において、業界や会社が厳しい状況で採算を合わせていくこと、これまでのお客さんに対して答えていく姿勢はかならず必要だ。

しかし、「そもそも修学旅行はいまの形でよいのか?」「FITが台頭する中で、旅行会社の役割は?」「現代における旅行の価値とは何か?」といった時代の変化に伴う、本質的な課題に対して向き合うことを、今の近視眼的な対応で遅れてしまう可能性がある。

コロナによって、あらゆる課題が浮き彫りになったいまだからこそ、これまで目を向けることを避けてきたコトに向き合うべきタイミングなのかもしれない。

社会自体が多様化するなかで、業界がそこに合わせて柔軟に変化していく必要に迫れているように感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?