見出し画像

つづく変異株、旅行業界はこの絶望を直視できるのか

ゆるやかではあるものの、海外渡航者も増え始め、各国が門をひらきはじめた矢先、新しい変異ウイルス、オミクロン株が出現。12月2日現在、日本を含め世界の27の国と地域で確認されている。

私自身ここ最近のnote記事の中で、コロナ収束の光が見えてきた状況に対しての前向きな内容を書いたつもりだ。

しかし、今回の変異株の件で、正直フェーズが変わったと思っている。昨年2020年の夏前頃に、将来の旅行業界に対し業界規模は半分になるという見立てをしていたが、自分は間違っていたと言わざるをえない。

この件は、アウトバウンド業界において一時的な向かい風ではなく長期的に厳しい現実の訪れを示唆しているように映った。

「もう元には戻らない」最悪のシナリオ、訪れる絶望

コロナ以前のアウトバウンド業界は調子がよかった。日本政府は、観光立国推進基本計画(平成29年3月29日閣議決定)にて、2020年までに日本人海外旅行者数を2,000万人にするという政府目標を掲げ、これに向けて官民一体となった取組を推進してきた。そして見事に2019年には2,000万人の大台に到達。そんな矢先で訪れた新型コロナウイルス。

結果的に、2021年の出国者数をコロナが影響する前の2019年4月と比べると97.8%減。月別の数値をみると絶望的な状況だ。

画像1

これらの数値に対して「落ち着けば元に戻る」「今は辛抱するしかない」といった声が業界ではちらほら見受けられる。しかし、果たしてそうだろうか。そもそも元に戻るという確証はどこにあるのか。今回のオミクロン株の出現は、そうした拭えぬ疑念に対して核心をつくできごとだったように映った。

コロナが落ち着きを見せ始め、徐々に海外渡航者数も増える予兆がある中で、変異株の出現。準備していたツアーも一斉中止せざるえない事業者も多い。そしてこの「変異株」といういつ再来するかわからない不確実性の高いリスクは、今後も定期的に訪れる可能性はとても高い。その度に、一斉中止という対応に追われることになる。そんな状況でビジネスを続けていくことは到底難しくなってくる。

定期的に訪れる変異株に振り回される業界は、バタバタと倒れ、気付いたらどこにも海外旅行事業者がいなくなっている。旅行者の海外体験を下支えする業界は崩れ去る。そんな最悪のシナリオはよりリアリティをもって迫ってきている。

「大企業」は絶滅へと向かう巨大恐竜なのか

画像2

先述の通り、業界として変化が求められている中で、大企業は環境の変化に対応できず絶滅へと向かう巨大恐竜にみえてきてならない。正直、心配だ。

変異株のような不確実性の高い状況に対して、スピーディーで臨機応変に動ける組織体制が必要になってくる。しかし、人件費や設備投資など巨体を動かすために多大なコストをかけている大企業の体制では、そうした対応は難しいのが現実だ。これまで巨大だからこそ大きな力をもって影響力を発揮してきた一方で、チャンスを捉えてスピードをもって動く必要がある状況では、その組織形態が足かせになっている。

このままでは、旅行業界で大企業が培ってきたものが消えてしまう危機感すら感じる。そもそものコスト構造の変革や組織体制の転換が迫られているなかで、私は絶滅することなくずっと生き続けている雑草を意味する「ルデラル」という概念にヒントがあるような気がしている。

ルデラルな組織や生き方への転換


植物には三つの生き方があるそうだ。その中の1つがR型「ルデラル」という生き方。一言でいうと雑草のような生き方になる。

【植物の3つの生き方(CSR成功戦略)】

C型:コンペティティブ(競争型)
競争に強いタイプ。自然界は弱肉強食の世界で、強い者が生き残り、弱い者は滅びゆく。
S型:ストレストレラント(ストレス耐性型)
競争型の生えることのできないような過酷な環境に適応するのがS型。水が少なく過酷な砂漠の条件で生きるサボテンが典型。
R型:「ルデラル」とは、荒れ地を生きる植物
弱者と呼ばれる植物たちが、成功を収める生き方。「雑草」はルデラルな生き方の典型。

こうみていくと、植物の世界は、まさに今我々が生きている世界と同じではないか。特にC型(弱肉強食)、S型(耐え抜く)は日本人の生き方のモデルとして一般的に認知されていると考える。

そしてR型。雑草の「ルデラルな世界」は一般とは違う特殊な世界=スタートアップの世界に通じるものがあるのではないか。
そう考えると「ルデラル」な生き方は危機を迎える観光業界にもヒントを与えてくれるように感じる。

【ルデラルの戦略】
・チャンスを捉えてスピードで勝負する
・状況にあわせて変化する
・大きな相手とは小ささで勝負する
・多様な種でチャンスを広げる
・小さな成功を積み重ねる etc…

ルールややり方が決まった世界(既存業界)では、明らかににC型、S型に有利になっている。決まったコトや他人と比べてその世界で通用する能力を高めれば、勝つ可能性が高まり、生き残ることができる。

たとえば、スポーツ業界はその典型だ。
野球には絶対的なルールが有り、そのルールの中でもっとも能力を発揮できる人が一流として活躍することができる。イチローや松井は、野球というルールの中で能力と努力する力を兼ね備えていたことで一流と呼ばれるようになった。これは一般社会でも同じで、一流会社の会社員、一流大学の研究者、専門家や職人は特定の決まった枠の世界で活躍できる素養と努力を重ねたことにより、活躍できる力を身につけることができる、そういった世界だ。

いまや旅行業界はそのルールが足かせになりかねない。そもそも業界自体が衰退の一途を辿る状況。このなかで、各社が存続していくためには、他者を凌駕する強者になるのではなく、とにかくコロナが落ち着くのを耐え凌ぐ道を選ぶのでもなく、この不確実性が高い荒地で確実に生き延びる体制(≠耐性)をいちから作ることが必要なのかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?