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ほんとうに、旅行会社は必要ですか?

先の見えない状況がつづく旅行業界。

ワクチン接種が進み海外渡航がみえてきた矢先、オミクロンの出現。開きかけた国境は瞬時に封鎖されてしまった。自由に国外移動ができた時代は遠い過去になりつつある。

この厳しい状況で、旅行事業者は「オンライン旅行」をはじめ突破口を探してきた。私はこの期間で行われてきた試行錯誤は、今後の業界の発展にきっと繋がってくると思っている。一方で、旅行者が激減している今だからこそ、立ち止まって考えたいことがある。

私自身は旅行業界の人間ではなく、昔業界に関っていて、現在海外系スキルシェアのサービスを運営している立場での意見です。

「自由旅行ができる時代、旅行会社の役割はなにか?」

変化が求められる旅行業界は、今後さまざまな選択肢がありえる。先日、その一つの考えをnoteで掲載した。

自由旅行ができる時代、旅行会社の役割はなにか?

この問いはあらゆる選択肢を検討する上で、絶対に考えなければならない問いだと思っている。そしてこれはコロナ以前からずっとあった。

FIT(Foreign Independent Tour)の台頭以降増え続ける自由旅行。この10年で旅行のスタイルはほんとうに激変した。その変化に対して、果たして旅行事業者は適応できているのだろうか。コロナが収束し渡航解禁になった時、本当に業界は潤うのだろうか。もしかしたらコロナ以上に危機を招く本質的な課題なのではないだろうか。

私はこの問いにきっちりと向き合わない限り、これまでそうだったように業界はジリジリと疲弊していくと思っている。いまこうして立ち止まることができているからこそ、求められる変化について熟考したい。

もともと旅行会社は海外へのゲートウェイだった。

海外渡航のハードルが高かった時代。いまのように現地の情報は簡単に手に入らず、チケット手配も個人でやるのは現実的ではなかった。それでも「海外へ行きたい」「異国情緒を味わいたい」そんな日本人の欲求を実現してくれていたのが、旅行会社だった。

当時は、海外にいくなら旅行代理店にいくのが当たり前。面倒でハードルが高かった海外への渡航チケットやホテルの手配は全て担ってくれていた。はじめは飛行機やホテルの選択肢も少なかったが、企業努力によってユーザーにとって旅の自由度が高いスケルトンツアーなどが生まれ、より海外への門が開かれていった。まさに日本人にとって旅行会社は海外へのゲートウェイ(入り口)だったと思う。

しかし、今そのゲートウェイとしての役割が旅行会社にあるのかを再考する時が来たのかもしれない。

旅行会社の衰退は本当にコロナだけが原因なのか

俯瞰して見てみると、当時旅行会社が売っていたのは海外旅行の「体験」というより、ホテルやチケットといった「商品」であった。つまりサービス提供者というよりも、仕入れ業者に近い形態のビジネスだったのだ。当時それが必要であり、時代もそれを求めていた。しかし、インターネットの台頭により海外の情報は可視化され、個人でチケットやホテル購入していくFIT(個人旅行)が急激に増加していった。以前に比べて、海外へのハードルは心理的にも下がった転換期と言える。

それにより、海外への心理的ハードルが高かったユーザーに対して、安心感と商品を提供することによって成り立っていた旅行会社は変化が求められることになった。しかし、実態は年々海外渡航者が増え続ける一方で、旧来型旅行会社の成長は比例するものにはなっていなかった。

じりじりと時間が経過する中で、胡座をかいていたかはわからない。ただ現実として、2021年3月には、最大手JTBは資本金を23億400万円から1億円に減資し税制上の中小企業になり、日本旅行も同様の対応を行い規模を縮小した。

無論、コロナが最終的な決め手になったのは紛れもなく事実だ。しかし本当にそれだけが理由だろうか。もしかしたら、時代の変化に適応していくことが叶っていれば他の未来もあり得たのではないだろうか。一時代を築き、日本人の海外へのゲートウェイを担ってきた旅行会社であるからこそ、そんなことを考えてしまう。

では、これからどんな未来がありえるのだろうか。

旅行会社の資産は特別なスタッフ

これまで培ってきた知見や資産をどう生かし、時代にあった価値を提供していくか。

その一つの突破口が、彼らがもつ優秀なスタッフだと思う。

現状、旅行者は自分達で組み合わせたいコンテンツ(チケットやホテル、訪れるスポットなど)を自由に選択して旅行に出かける。しかし、自分で調べられる範囲は限られている。まだ見ぬ現地での体験や、全く知らないが訪れたら絶対に面白いスポットは山ほどある。そしてそれは個々人によって異なっている。既存のまとめサイトや検索では出てこない。

しかし、特定のエリアやジャンルに特化した旅行のプロフェッショナル達は、いろんなコンテンツを組み合わせて提案する旅のコンシェルジュとしての才能を持っている。一人一人に寄り添い最高の体験を提供することができる特別な存在だ。ここに旅行会社が生き残る道があると思っている。

現在、コロナによってかつてのように海外への心理的なハードルは高まっている。ここで個々人に寄り添う最高のホスピタリティを提供することができれば業界としても一筋の突破口が見えてくるのではないか。

最後に、上記のような業界として特別な人材は、業界復活のために貴重な存在だ。彼らを生かす、もしくは育てる試みが必要になってくる。しかし、これをいち企業が行っていくのはハードルが高い。だからこそ、本来業界発展のために存在する旅行業協会にはこうした取り組みを検討してほしいと思う。業界のために動いてくれることを切に願っている。

過去、旅行業界は消費者ニーズの高まりに合わせて、効率を重視し分業制を取ることで、大量生産大量消費型の事業モデルに変化していった。一人の能力のある旅のコンシェルジュを育てるのではなく、徐々にその旅行会社の資産を失っていったことに気づき、早く事業モデルを転換できるかが生き残る道かもしれない。

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