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玉置浩二さんの言う愛は今の時代に必要なものなんじゃないか。こんな本を読んだ。「心を病んだらいけないの?」(新潮社)

1997年の発表だから,もう今から30年近く前のアルバム。私は玉置浩二さんの「JUNK LAND」という題名のアルバムが好きで,その中でも「太陽さん」という曲が好きだ。

「太陽さん。おはよう」という一言から始まる曲です。一生懸命,自分の思うように必死に生きています。親にも安心してもらえるように生きていきたいです。でも,とてもしんどいですという玉置さんの声が聞こえるような気がして,聴くと,悲しくなる曲です。

「心を病んだらいけないの?」(新潮社)という本がある。精神科医の先生と歴史学者の先生の対談。

夢がないといけないの?コミュニケーション能力って本当に要るの?友達って要るの?親ってそんなに重要なの?といった具合に,今の世の中で大切にされているものが,本当にそんなに大事なのかをふたりで考えていくはなし。

結局,愛って必要なの?という話に行き着くのですが,精神科医と歴史学者のふたりは,共感するような,混ざり合うような,支え合うような愛はいらないんじゃないかと言う。そうじゃないくて,お互いを尊重し合うような親しい関係が必要なんじゃないかと言う。どうも,ふたりは愛という言葉で自分と他人が融合するようなもの,情緒的なもの,共依存的なものというイメージをもっているんじゃないかな。んー,いいすぎか。

少なくとも,ふたりは愛を情緒的なものとして見ているように思う。

玉置浩二さんは愛を歌うミュージシャンなのですが,玉置さんの愛は,混ざり合うようなものじゃなくて,誰かをじっと見守るような,気づかないけど,実は,あったんだよ,というような愛。一瞬だけ強く燃えて消えてしまうような儚いものではなくて,じっと支えつづけるような愛。

情緒的なものではなく,そう意志。愛おしいという感情的なものでなく,一緒にいつづけるという意志。

玉置浩二さんはずっと何十年も前からそんな愛を歌っていたと思います。

私たちの間違いは,たぶん,自分と他人の境界線を守る,他人を尊重するということを忘れて,全部,正しい自分のいうとおりに他人をさせないと気がすまなくなっていることにあるのでしょう。虐待,パワハラ,性加害,いじめ,みんなそれは他人の境界を犯す行為です。虐待なんて,ある場合には愛という名目のもとに行われている。けれどもそれは愛でもなんでもない。他人を尊重していないところに,愛なんてあるわけないです。少なくともそれは他者に対する愛じゃないです。自分に対する愛,自己愛にすぎない。

今のいろいろな問題の要因のひとつには,私たちがあまりにも自分が好きで,他人を大事にするということを忘れているからではないでしょうか。

私は自分も他人も大事にしたい。



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