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[ R ] グラフの描き方で印象が全く異なるはなし。

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概要 グラフの描き方を変えると,変化を実際以上よりも大きくみせたり,二つの条件の間に差がないのに,あたかもあるように見せることができます。それは,読み手をだますことですから,グラフの作成者はグラフを作るとき,読み手に誤解を与えないよう注意して作図する必要があります。


グラフの描き方

3月8日は国際女性デーです。この日は女性の権利向上の必要性を伝えるために設けられています。

労働政策研究・研修機構が男女間の賃金格差のデータをアップしています。

この60年間で男女の賃金格差はずいぶん解消されている

そのデータをもとに,男女の賃金格差が平成から令和にかけてどのように変化してきたか,R で作図しました。

図1. 男女の賃金格差の推移(50を基準とした場合)

労働政策研究・研修機構は,男性の賃金を100とした場合の女性の賃金を算出しています。女性の賃金が100であれば,男女の間の賃金に差はないことになります。

図1をみると,男女の賃金格差はずいぶん解消されてきている印象をもちます。

この60年間,男女の賃金格差は解消されないままになっている

それでは,図2をみてください。

図2. 男女の賃金格差の推移(0を基準とした場合)

図2も,労働政策研究・研修機構がアップしているデータ,図1のデータをもとに作成した,男女の賃金格差の推移です。

図1とちがい,60年間,日本では男女の賃金格差の改善が進んでいない印象をもちます。図1と図2とでは全然うける印象が異なりますが,使っているデータは同じです。

それでは何がちがうのでしょう。

作図の仕方で印象が変わる

図1の縦軸をみてください。50 から書かれています。図2は 0 からかかれています。

図3. 何を基準に作図するかで印象が異なる

横軸をどうとるかによって,こんなにも印象がかわってしまします。

男女の賃金格差はずいぶん解消されているといいたいひとは,図1を使うでしょう。逆に賃金格差は解消されないままだといいたいひとは,図2を使うでしょう。
どちらが正しいのでしょうか。

どちらの「意見」もある部分正しいですが,使用する図として,ふさわしいのは,もちろん,0 から 100 まで横軸にとっている図2のほうです。

図1のように途中から描くと,小さな差を大きく見せることになってしまいます。事実とちがう印象を読み手に与えかねません。不誠実といってもいいかもしれません。

おもしろい読み物

図の描き方や統計的な指標をつかって,ひとに誤った印象を与えることは容易にできます。

わたしたちの直感は正しい判断をする場合もあれば,間違った判断をする場合もあります。例えば,50人の集団のなかで同じ誕生日のひとがいる確率はどれくらい?チョコレートのつかみどりをしたとき,つかんだチョコレートが偶数になる確率と奇数になる確率はどちらが大きい?将棋で最初に打つかどうかで勝率は異なるか?それぞれ,確率的に計算して答えを出すことができますが,それらは私たちの直感のはたらきでは到達できないものです。へー,数学っておもしろいね,と子どもが
思うきっかけに,統計学や確率の話題はなるかもしれません。

へーっていうときは,必ず私たちの直感が裏切られるときですから。

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