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「つながり」を読み解く英文読解(番外編)~ん?何かが違う…?「無標と有標」~

▼「つながり」を読み解く英文読解(番外編)です。「番外編」としたのは,どこに入れるか迷ったのためです(笑)。

▼私たちは毎日,多くの時間「ぼんやり」と過ごしています。朝起きてから夜寝るまでの間,ひたすら意識を何かに集中させ続けることはないはずで,かなりの時間を無意識に過ごしているはずです。

▼いつもと同じように目が覚め,いつもと同じように身支度をし,いつもと同じように学校や職場に向かう…こうした習慣的な行動はほとんど意識されることなく行われているはずです。しかし,普段と変わらない風景の中に,ある日突然,異なる風景が飛び込んできたとしたらどうでしょうか。

▼たとえば,私は仕事のために平常授業のある時は週に5~6回は新幹線に乗りますが,ほとんどが「のぞみ号/ひかり号」または「さくら号/みずほ号」なので,毎回同じような車両しか見かけません。しかし,時々,「ドクターイエロー」と呼ばれる保守点検用の黄色い新幹線の車両を目にすることがあります。そんな時は「おっ!珍しい」とついそちらに意識が向かいます。

▼意識していない平常の状態のことを「無標(unmarked)」と言います。これに対して,いつもと違う状態のことを「有標(marked)」と言います。新幹線の例で言えば,ドクターイエローが「有標」になります。

▼実はこれは,ことばを学ぶ上でも大切な区別です。たとえば,言語学における「無標/有標」について,"Oxford Dictionary of English" では以下のように定義されています。

□ marked:《Linguistics》 (of words or forms) distinguished by a particular feature
(《言語学》(単語やかたちについて)特定の特徴によって区別されている)

□ unmarked:《Linguistics》 (of a word or other linguistic unit) having a more general meaning or use than a corresponding marked term
(《言語学》(単語やその他の言語学的な単位について)対応する有標の言葉よりも一般的な意味や用法を持っている)

▼単語における「無標/有標」
[unmarked / marked] duck(アヒル) / drake(アヒルの雄)
⇒ drakeは「オス」という特定の特徴によって区別されているため有標。これに対してduckは無標。
[unmarked / marked] host(主人)/ hostess(女主人)
⇒ hostessは「女性」という特定の特徴によって区別されているため有標。これに対してhostは無標。

▼文構造における「無標/有標」
[unmarked] Tom bought this car.(通常の語順の文)
[marked] It was Tom who bought this car.(分裂文による強調[強調構文])
⇒文と文の「つながり」を生み出す時,意図的に語順を変えて「有標」の文を作ることがあります。いわゆる「倒置構文」や「強調構文」がその代表例です。しかし,「いつもと違う(有標である)」と気づけるのは,日ごろから「無標」のかたち,つまり,通常の文構造を把握できているからこそ可能になることなのです。

▼英文を読んでいて「(。´・ω・)…ん?どこか変だな?」と感じられるようになったら,それが文法的にある程度正しく読めるようになったことの証なのかもしれません。そして,その「違和感」を生み出しているものが何であるのかを知り,その知識を使ってさらに読みながら考えることが大切なのだと思います。

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