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「つながり」を読み解く英文読解(8)~連結表現①~

〈「つながり」を読み解く英文読解(1)〉でお話ししたように,私たちは,2つの情報が並んでいるのを見た時,無意識にその2つの間の「つながり」を読み取ろうとします。

▼たとえば,以下の文章において,①のセンテンスと②のセンテンスはどのような「つながり」になっているでしょうか。

  ①Illegal wildlife trade results in the loss of precious species and also severely alters the ecosystems in which species and people live.  ②In the Greater Mekong, the region’s biodiversity is threatened to the point where the survival of species like tigers and elephants hangs in the balance.
(2014年度獨協医科大学医学部)
http://www.worldwildlife.org/places/greater-mekong
〈語彙〉
□ illegal 違法な
□ wildlife trade 野生動物の取引
□ result in A Aの結果になる
□ loss 失われること,損失
□ precious 貴重な
□ species 種(しゅ)
□ severely 激しく,厳しく
□ alter O Oを変える
□ ecosystem 生態系
□ the Greater Mekong 大メコン圏(the Greater Mekong Subregion)
⇒カンボジア,タイ,ベトナム,ラオス,中国,ミャンマーに渡る,メコン川流域の総称。
□ region 地域
□ biodiversity 生物多様性
□ threaten O Oを脅かす
□ to the point where S + V~ SがV~するところまで
□ survival 生存
□ hang in the balance 不安定な状態にある,きわどい瀬戸際にある
〈和訳〉
違法な野生動物の取引によって,貴重な種[の動植物]が失われる結果となり,さまざまな種[の動植物]や人間が暮らす生態系を激しく変えてしまう。大メコン圏においては,その地域の生物多様性が脅かされ,トラや象のような種の生き残りはきわどい瀬戸際にまで追い詰められている。

▼①のセンテンスでは,〈[原因] 違法な野生動物の取引⇒[結果] 貴重な種[の動植物]が失われる/生態系を激しく変える〉という因果関係について述べています。そして,続く②のセンテンスでは,the Greater Mekong(大メコン圏)という固有名詞が登場していますが,これを見た時にこのセンテンス②の役割が「①の内容についての具体例の提示ではないか」と判断することができます。

▼もちろん,①と②の間には for example などの「具体例」を示す連結表現はありません。しかし,the Greater Mekongという固有名詞の他に,センテンス①の precious species に含まれるものとしてspecies like tigers and elephants(トラや象のような種)という「下位語」(⇒〈「つながり」を読み解く英文読解(6)~同一表現の繰り返しを避けながらつながりを作る仕組み④~〉の[01.70]を参照)があると考えられることからも,②が①の具体例にあたると判断できるはずです(さらに言えば,①のthe loss of precious speciesが,②のsurvival of species like tigers and elephants hangs in the balanceに言い換えられているという解釈もできるはずです)。

【1】連結表現とは

▼「つながり」を考える時にはこうした仕掛けを読み取ることが大切ですが,同時に,文と文,段落と段落の「つながり」を特に強く生み出すために用いられる道具についても知っておく必要があります。それが「連結表現(Cohesive Devices / Linking Words)」です(参考書によってはDiscourse Markerと書かれているものもあります)。

▼上の例文の②の冒頭に "For example" と書かれていれば,「ああ,この②は①の具体例なんだな」と判断しやすくなりますね。しかし,連結表現は多用しすぎるとくどくなるため,全ての文と文の間で用いられているわけではなく,上の例文のように書かれていない場合も多いので,連結表現だけに頼らずに文と文の間の関係を考えることも重要です。

▼また,一つの連結表現が複数の意味で用いられる場合もあります。たとえば,indeedという連結表現は,前の内容を具体的に説明して「実際」という意味で用いられることもあれば,Indeed A, but B(確かにAだがB)というように〈譲歩〉の連結表現として用いられることもあります。

▼さらに,複数のセンテンスを結ぶだけでなく,従属接続詞のように1つのセンテンスの内部で「つながり」をはっきりさせるために用いられるものもあります。
ex) Although children under 18 years did not have the opportunity to vote in the 2016 Brexit referendum, 61 per cent of males and 80 per cent of females in the youngest cohort of votes (aged 18 to 24) voted to remain.
(18歳未満の子どもは2016年のブレグジット国民投票に投票する機会がなかった、最も若い層の投票者(18歳から24歳)では男性の61%と女性の80%が残留することに投票した。)
https://www.irishtimes.com/opinion/brexit-s-consequences-for-children-in-border-regions-will-be-profound-1.3837752

▼ここでは連結表現を,意味の観点から①順態接続(順接)②逆態接続(逆接)③説明の大きく3つに分け,それぞれについて下位区分を示し,どのような表現が用いられているのかを学びます(*1)。また,以下の分類では便宜上,逆態接続の中に主張表現を表す「評価副詞」を含んでいますが,これはそうした評価副詞が逆態接続とともに用いられることが多いためです。

【2】連結表現の全体像

[02.10] 順接(copulative conjunction:順態接続):A⇒B
┣[02.11] 因果関係(cause and effect)
┣[02.12] 条件(condition)と帰結(result / apodosis / consequence)
┗[02.13] 目的(purpose)と手段(means)
[02.20] 逆接(adversative conjunction:逆態接続):A⇔B
┣[02.21] 対比(contrast)・比較(comparison)
┗[02.22] 譲歩(concession)と主張(assertion)
[02.30] 説明(explanation):A=B/A=B, C, D, E…/A+B+C…
┣[02.31] 具体化(specification / concretization)・同格(apposition)
┣[02.32] 抽象化(abstraction)・一般化(generalization)・要約(summary)
┣[02.33] 類比・類推(analogy)・類似(similarity)
┗[02.34] 列挙(listing)・追加(addition)・補足(supplement)・補強(reinforcement)

▼次回以降,これらの連結表現について例文とともに詳しくみていきたいと思います。

【注】

*1:この区分は絶対的なものではなく,あくまでも便宜的な分類である。また,以下の英文のifのように,その部分だけでは単なる「条件」なのか,それとも「譲歩」なのかを判断することが難しいものもあり,柔軟に対処しなくてはならない。
ex) Human nature being what it is, this result will probably have little effect in the saleroom: the glamour of Cremona will take more than one such result to dispel it. But it does suggest that young players who cannot afford a Stradivarius should not despair. If they end up with a cheaper, modern copy instead, they might actually be better off.
https://www.economist.com/node/21542380/all-comments
(人間の本質が今のままならば,この結果はおそらく販売店でほとんど影響することはないだろう。クレモナの魅力を払いのけるには,そのような結果が1つだけでは足りないだろう。しかしそれは,ストラディバリウスを買えない若い演奏家たちが絶望すべきではないということもまさに示している。たとえ彼らがその代わりに,最終的により安い現代の模造品で終わるとしても,実際には彼らの方が豊かであるのかもしれないのだから。)


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