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「予習に時間がかかりすぎる」とよく耳にしますが…

▼毎年,受講生の方から「予習に時間がかかりすぎます。どうすればいいですか」とか「効率的な予習の方法を教えて下さい」という質問を受けます。たしかに悩ましい問題ではありますが,「効率性」云々を考える以前に,まず考えるべきことが二つあります。

【1】力不足のために時間がかかる

▼予習に時間がかかりすぎるのは,大半の場合,「力不足」が原因です。具体的には「知らない単語や熟語がたくさんあって,その都度辞書を引かねばならないために時間がかかる」とか,「問題が難しくてわからないから考え込んで時間がかかる」といったことが原因なのだと思います。

▼残念ながら,ハードルは誰も下げてはくれません。与えられた問題と自分の実力との間に大きな隔たりがあれば,解答(予習)するのにそれだけ多くの時間がかかるのは当たり前のことなのです。同じ問題でも,解ける力のある人ならば,予習にかかる時間は少なくて済むはずです。

▼ゲームにたとえれば,ラスボス戦にまるごしで挑むようなものです。何のアイテムも持たずに,あるいは必要なアイテムが不足した状態で敵に挑んでも勝てるはずはありません。あるいは,最初はうまくいったとしても途中で力尽きてしまいます。

▼ですから,「自分はまだこの問題に十分解答できるだけの力が足りていないのだ」ということを自覚し,効率性云々を考える前に,調べるべきことは調べることが必要で,その分,多少の時間がかかっても仕方がないのだ,と思って現状を受け入れて欲しいと思います。

▼これは経験則からの話になりますが,予習→聴講→復習のサイクルを続けていくうちに,予習にかかる時間は次第に減っていきます。それは「あ,これは既に勉強したことだ」「この単語は以前にも出てきた!」ということが増える,つまり,力が着いてきた分,予習にかかる時間が自然に減っていくということです。

▼初めは誰もが苦労します。力が足りていない以上,時間も手間もかかります。しかし,それを謙虚に受け入れて,地道に続けていくしかないのです。

【2】「予習」の意味を勘違いしている

▼これは先生によって考え方が異なるかもしれませんが,私自身は「予習とは,わからないことを発見してくることだ」といつも話しています。先程「調べるべきことは時間がかかっても調べる」と話しましたが,調べてもわからないことはわからないものですし,調べ方を間違っている可能性もあります。

▼予習の段階で満点をとる必要はありません。予習とは,授業を理解するための準備なのですから,「自分がどこがわからないのか」を発見できればそれで十分なのです。

▼私自身は「わからないことは,授業で解決しましょう。それでもわからなければ遠慮なく質問を。わからないことをわかるようにするのが私の仕事です。わからないからといって叱られるようなことはありません。授業であてたり挙手して答えてもらうことがあるかもしれませんが,間違えても構いません。授業は,安心して間違えても良い場なのです」といつも話しています。試験本番で間違えないようにするためにも,授業でどんどん間違えて,直していけば良いのですから。

【3】二段階での予習を

▼そのために私は,「予習はできれば二段階で行ってきてください」と話しています。最初は自力で,一定の制限時間内で試験本番と同様に解答し,2回目は辞書などでわからなかったところを調べて訂正する,という方法です。

▼その際,1回目の解答は消しゴムで消したりせずに残しておき,色を変えて訂正しておくようにしなくてはなりません。これによって「自分がどこでつまづいたのか」が明らかになります。それこそが予習では最も大切なことなのです。

【4】全訳の作成は不要

▼なお,英語の予習でよく問題とされるのが「長文の全訳を書くべきか否か」ですが,私自身は,「全訳は書かないこと。ただし,簡潔なメモを段落ごとにとっておくことで,自分が今,どんな文章を読んでいるのかを意識すること」と話しています。

▼もちろん,「和訳せよ」という設問に対しては,きちんと解答を書いて授業に臨まねばなりません。というのも,そうした問題の多くが何らかの訳出上のポイントを含んでいるためで,そこがきちんと訳せているかどうかを確認することが必要だからです。

▼しかし,試験本番では「全訳」を書いている暇はありませんから,日頃から「訳に頼る」癖を取り除かねばなりません。また,授業にもよりますが,私自身は必ず,授業で復習用の全訳を配布するので,受講生がいちいち自分で全訳を書く必要はありません。

▼ここに書いたことはあくまでも私自身の方針ですから,先生によっては意見が異なるところもあるかと思いますが,一つのアイディアとして参考にしていただければ幸いです。

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