元商社のIT担当が憂う日本のIT事情

「メールアドレス変更しました!登録よろしくお願いします!」

というアドレス変更のメールを送っていたのはほんの10年前の話。読者の中にも、このメールをアドレス帳の隅々まで送り届けた経験を持つ人もいることだろう。筆者においてもそうである。一方、スマートフォンの普及が進んだ現在では、LINEがメインのコミュニケーション手段となり、メルアド変更メールの文化は廃れてしまった。

更に遡れば、文通であったものが電話に代わり、固定電話同士のやりとりに子機が加わった。その後音声によるコミュニケーションがメールに代わり、今となってはよりシンプルなLINEというメッセージ交換が主流になった。但し、ここまで進化しているのは若者を中心としたコミュニティ内での話であり、中年以上が中心となっているコミュニティにおいてはその限りではない。

とはいえ、ここ1年で商社を取り巻くIT環境は大きく変わった。自前で持っていたサーバの多くをクラウドサービスに移行し始め、チャットツールの導入により、気軽なコミュニケーションが増えたことは確かだ。ただ、どうしても大事な連絡はメール+電話が主流であることは変わらず、チャットツールの使い道はあくまでもランチのお誘いや、業務外の話ばかりで、あくまでも「気軽な」コミュニケーションの領域を出ない。電話の方が早い、大事な連絡をチャットでするのは失礼だ、という意見は未だ多い。

ところで読者の皆さんは普段の買い物は現金派、電子決済派のどちらだろうか。筆者は電子決済派だ。理由は主に以下の二つ。
1.財布に現金を持ち歩きたくない
2.電子決済の方が会計のスピードが早い
1つ目の理由については記載の通り、特に小銭は嵩張って財布が分厚くなるし、一々現金をおろしに銀行に赴くのは面倒だ。2つ目については、行列のできているレジで、端数の小銭を財布の中から血眼になって探している人が、どれだけ後続の人々に迷惑をかけていることか、当人は考えたことがないのだろうかと不思議に思うことが多々ある。欲を言えば、無人レジで電子決済が最も効率的だし、更に言えばAmazon Goのように、支払いすら必要なければ日々のストレスは緩和され、日本はよりハッピーになると強く思う。

そもそも、電子決済は愚かクレジットカードを嫌う人が多い日本。詳しい理由はわからないが、「セキュリティがー」や「いくら使ったかわからなくなるからー」だの、いくらでも解決できる理由しか聞いたことがない。クレジットカードや電子決済に限らないが、各企業が年間数億 〜数十億、下手すると数百億かけて強化している専門的なセキュリティと、一個人の懐のどちらが安全か、論ぜずともわかるはずだ。「いくら使ったかわからない」と案じるような人は、現金であろうがクレジットであろうが、計画的にお金を使うだろう。そして、更に言えばクレジットカードの利用履歴を直接アプリと連動し、家計管理をすることも、マネーフォワード等のアプリで容易に行うことができる。

企業の連絡形態も、日常の支払い管理も全て、何かと理由をつけて従来の方法を正当化したいだけで、要は変化に適応仕切れていないだけなのである。人の習慣を変えるのは難しい。しかし、だからといって何もしなければいつまでたっても変わることはない。最初は不慣れで非効率になるかもしれないが、徐々に慣れ、むしろ効率が上がる日が必ず来るのだから、企業も、個人も変化を恐れず、もっと世の中の流行りに身を任せてみても良いのではないだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?