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読書日記0629 柄谷行人「『マルクス その可能性の中心』英語阪序文」『群像』2020年3月号のメモ

1年前のFacebookの投稿から。
研究のためのメモ。

柄谷行人「『マルクス その可能性の中心』英語阪序文」『群像』2020年3月号のメモ。

柄谷行人は『マルクス その可能性の中心』の英語阪序文において、『資本論』に言及する時に商品の価値形態論を取り上げているのだが、ここで柄谷が重視しているのが交換=コミュニケーションである。それは、『マルクス その可能性の中心』においてソシュールの言語学にマルクスとの類似性を見出して論じることで明確になっている。

その際、注意しなければならないことは、柄谷が商品の価値形態のコミュニケーションを記号の交換として言及する時に、商人(資本)という歴史的に存在した商人の問題も同列に取り上げているということだ。

だから、「概して、そのような差異が生じるのは、遠隔地の間の交易である。」(「『マルクス その可能性の中心』英語版序文」)というように、商人資本主義における剰余価値を、遠く離れた場所を前提とする交易(つまり交換=コミュニケーション)の問題も議論しながら考察することも出来るのである。ちなみに、柄谷は『ドイツ・イデオロギー』に言及する時にも「交通」に注目している(柄谷「交換様式論入門」PDF、2017 の注1)。たしかにマルクスは記号の作用を研究していた訳ではないから、交通というヒトやモノのコミュニケーションから社会構成体を考えていたのである。

もちろん柄谷の主眼は交換=コミュニケーションである訳だが、マルクスへの言及にもあるように全く社会や文化というものを考慮に入れていないということではないのである。だから、このような思考から、柄谷は記号が交換=コミュニケーションされる場所として浮上する日本(日本近代文学や柳田国男など)も考察されるのだった。

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