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ベンゾジアゼピン減断薬 -「頓服」は依存を防ぐのか

結論から申し上げれば、ベンゾジアゼピンを頓服で服用してさえいれば依存リスクを抑えられるということはない。「頓服」の定義の中には使用頻度は含まれないからだ。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を「不眠時1錠」で頓用処方された患者さんは、それを毎日服用するかもしれないし、月に1回しか服用しないかもしれない。

僕は「週5回まで使用可」の頓服としてベンゾジアゼピンを処方することがある。勤め人の患者さんに、出勤前日夜に睡眠薬を、或いは出勤前に抗不安薬を服用するよう指示して処方する。薬無しでは仕事前日は眠れない、出勤時に耐え難い不安が生じるが服薬しさえすれば落ち着き遅刻せずに出勤でき仕事も出来る、といった患者さんが少なからずいるからだ。
実は僕はこの服用方法を「頓服」だとは思っていない。実際には平日に関しては定期服用だからだ。患者さんにも「電子処方箋に『平日のみ服用』という選択肢が無いので頓服として処方しますが本来の意味の頓服ではありません」と説明している。
ベンゾジアゼピンを週5回頓服する場合の依存リスクはおそらく低くはない。服用するベンゾジアゼピンの半減期いかんでは1日1回週7回服用した場合と依存リスクは変わらないかもしれない。患者さんにもその旨を説明し、しかしわずかにでも依存リスクを下げるために職場ストレスの無い日は服用を控えてもらう(現在のところ服薬しない週末に離脱症状を呈する症例を経験したことはない)。

処方箋上「頓服」として処方されたベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬を1シート(10錠)、2~3ヶ月に1度処方するだけの患者さんもいる。この場合の依存リスクは経験的にはかなり低そうだ。 エビデンスとなるような研究はみつけられなかったが、僕の感覚ではベンゾジアゼピンの場合は週1~2回程度の頓用が、依存が起こらない上限の服用頻度ではないかと思っている。

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