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私の "地域おこし観"

地域おこし、町おこし、地方創生、etc。
これらの言葉はほぼ同じことを指しますが、使う人の立場や意識、使われる文脈によって、それが真に表しているものは、結構差があると思っています。

そしてその差によって、地域おこしの名の下に世に現れるアウトプットにも、それ以上に差が出ると感じています。
新しいものを創るのか、故きを温めるのか、アレンジするのか。
箱物を作るのか、コミュニティを作るのか、有形無形問わず場を作るのか。


私は、八郷留学は教育業だと自覚していますが、その根底には地域を豊かにしたいという思いがあります。

今日は、自分がどんなつもりで地域おこしをしているのか考えてみました。


地元のお祭り「じゃかもこじゃん」

私の地元には、「じゃかもこじゃん」という神楽のお祭りがあります。

地元も地元、現石岡市の中の、旧八郷町の中の、柿岡という字の中の、八幡町(上四町)に分類される4つの地区の集まりがこのお祭りの主体です。

毎年、中秋の名月を境内の正面に迎えて、装束と面を被った演者が笛と太鼓の拍子に合わせて舞い、神社に神楽を奉納するお祭りです。

ある演目で演奏される太鼓のリズムが「じゃかもこじゃん」と聞こえることから、この名前で親しまれています。

ほんの最近まで、小学生女子が演じる巫女と、地域に婿に来た男性が演じる早神子とを除いた全ての演目は、八幡町に長く住む家の長男が演じるものとされてきました。
それくらい、由緒があって、排他的とも受け取られかねないものです。

正式名称は「柿岡八幡宮太々神楽」。
山車やお神輿が交差するような、祇園祭系のイメージではなく、神社の拝殿(建物の中)で行われる太々神楽は、どちらかというと能や狂言に近い雅な雰囲気のお祭りです。

子どもの頃は屋台と餅まきを目当てに、友達と遊びに行っていました。

演目に使われる十二の面


八郷留学を始めてから1年が過ぎた頃、じゃかもこじゃんで龍神を演じている先輩から、見に来ないかと誘いが。

15年ぶりくらいでしょうか、久しぶりにじゃかもこじゃんを見て、想像以上の衝撃がありました。

知らぬ間に身体に染み付いていた笛と太鼓の音、見覚えのあるおじちゃんたち、十五夜独特の八幡宮の雰囲気。。

ああ、ここで自分は育ったんだ。
いや、育てられたんだ。。。

そして毎月の練習会に参加するようになり、翌年には拍子方として参加することになりました。

じゃかもこじゃん若手メンバー

20代から60代までのメンバーの共通項は、同じ地区に生まれ育ったということのみです。
仕事も趣味も全く異なる、特定のテーマで繋がっているわけではない大人たちがこうして集まることって、今の時代はそんなに簡単にできることじゃないと思います。

自然と子育ての相談もするような関係になりました。
地域全体で子どもを見守る体制はこうしてできるのです。

じゃかもこじゃんデビューの日

拝殿に上がり大拍子と呼ばれる鼓の座につき、境内を見下ろすと、再従兄弟が三世代の家族総出で見に来ていました。

狐の面を被った演者がぴょんぴょん跳ねる「天狐」という演目の時、4歳になる再従兄弟の長男が、それを見て真似をするではありませんか。

その様子を見て一緒に跳ねる再従兄弟とそのお嫁さん。
さらにその後ろで微笑む再従兄弟の両親。

しかもそのそばでは、小学生になったばかりの移住者の子どもも踊っていました。

なんと素晴らしい光景でしょう。


全ての演目が終わった後の拝殿

こうやって子どもの頃から、地元のプライドが遺伝子レベルで、育っていくんだ。。。

きっとこの子たちも、大人になってここに戻ってきた頃にでも、じゃかもこじゃんを見て、この笛と拍子の音を聞いて、懐かしさを覚えるんだろうな。
今よりもずっと歳をとった僕や、周りの先輩たちの顔を見て、見覚えがあると思うんだろうな。

地域の子どもたちに、そんな思い出を作ってあげられること。
なんと幸せなことでしょう。

「子どもの頃に見た思い出のじゃかもこじゃんを、こうして大人になってやれるって、いいよね」
一回り上の先輩がそう言っていました。

地域の誇りはこうして受け継がれていくのです。

シビックプライド

Civic pride = 市民としての誇り。
地域おこしで最も大切かつ一番最初にやるべきことは、これが何なのかをちゃんと理解すること、もしくは理解できなくても、深く考えることだと思います。

このまちをどんなまちにしたいのか。
変えなければならないところはどこなのか。
変わってほしくないところはどこなのか。

八郷留学を始めるときに、この里山の自然と、人と自然とが共に生きる暮らしのあり方は、残したいと思いました。

八郷民にとってのシビックプライドはそこにあると思っています。
*じゃかもこじゃんで受け継がれるものは、八郷の中でも極一部の地区の民のプライドであって、八郷全体で共通しているもののことを考えた場合です。

八郷が八郷であり続けるために。

何度も言ってきましたが、前よりもその中身が鮮明になってきた気がします。

八郷民としての誇りを、地域の子どもたちに持ってほしい。
八郷に留学しにくる子たちにも、それを味わって、八郷を好きになってほしい。

最近、地域外から八郷留学に繰り返し来てくれる子たちの中には、八郷に引っ越ししたいとまで言ってくれる子がちらほらいます。
現実的なことを考えたら難しいだろうけど、そう思ってもらえるだけで、地域おこし冥利に尽きます。


因みに、現在のじゃかもこじゃんは長男でなくとも、地区に長く住む家の出でなくとも、ウェルカムです。
一緒に御神楽したい方はご連絡ください笑。

もし私たちの活動に共感しサポートしてくださる方がいたら、差し支えなければお名前を教えてください。お会いできればもっと嬉しいです。いただいたお金は、子どもたちと八郷の里山のために使わせていただきます。