逃亡

少しの間だけでいい、おそらく、あまりながくは居られないだろう。それは星の瞬きより刹那的かもしれない。ここには昵懇の間柄は居ない。身を匿ってくれる味方も存在しない。静謐な森の中に身を横たえ、満月の晩には擦り減った魂を癒しながら、小鳥の囀りで歌をうたい、無音に近い風のささめきに耳を澄まして平穏な心持ちで過ごしたい……外部からの不安や恐怖、孤独、苦痛など、身も心も押し潰そうと低い悲鳴をあげる重力から、ひと時の無重力的解放感を味わいたいだけなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?