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関係性の美学、リー・ミンウェイ展 /ティム・バートンのポラロイド写真(2014)

2014年
森美術館で鑑賞

台湾出身のミンウェイの作品は2012年頃、銀座の資生堂ギャラリーで見た事があった。
手紙や贈り物をテーマにした、どこかロマンティックで、現代アート的な難解さを感じさせない作品。
自分も周りの人たちと一緒に作品に参加しながら、きもちがほぐれるような温かい展示であった。

リー・ミンウェイは、90年代以降の「リレーショナル・アート」「関係性の美学」という流れの中で注目された人であるらしい。
人との関係性の難しさ、未知さ、面白さは誰もが抱えているものであり、心を砕いているところだろう。
初の大規模な展示であるという今回は、人と人との関係だけでなく、政治や宇宙に至るまで、目に見えない「関係性」という概念に様々な方法で、「かたち」を与えよう、という試みがなされている。
普段は読み飛ばすようなプロローグやセクションごとの文章などしっかり読み、作品を鑑賞した。
今までさんざん見たなあ、と思うような作品、例えばジョン・ケージや鈴木大拙館について再度考え、自分なりに理解した部分もあった。

面白かったのは、ただの石とそれを模倣したオブジェ、買うとしたらどちらを選ぶ?という展示。
実際に購入者は、どちらかを選ばなければならない。
私ならオブジェを買う。
そこに人の手がかかっているし、作品としての価値がある。
ただの石を買った人はいたのだろうか。

どっち?

花を知らない人に渡すプロジェクト。
ルールは来たときとは違う道を通って帰る。
そして、知らない人に展示してあった持ち帰り用の花を渡す、という自分には結構難易度の高いミッションだったが、思い切って一輪持ち帰り、美術館を出たところで歩いていた女性に手渡した。
喜んで受け取ってもらい、嬉しい体験となった。

最終セクションでは、アーティスト本人が在館していて対話をする事もできる。やさしい英語で話すエレガントな佇まいの人であった。

関係性に関する本を読もうと思った。

上記展示と同日にティム・バートン展も鑑賞した。
ジブリ以外のアニメーション映画をほとんど見ていないが、ナイトメア・ビフォア・クリスマスくらいは見た事がある。
その程度の知識で行ったのだが、なんせ展示最終日という事もあり、もの凄い混雑であった。
キャンバスや立体作品はもちろん、ノートの切れ端や新聞のような紙切れに描かれたドローイング、絵コンテにいたるまで、すべてに魂が吹き込まれた、弱気そうでチャーミングなモンスターに魅せられ、洪水のような創作意欲に圧倒された。

しかし、私にとってのハイライトは、本人が仕事の息抜きにとっていたという大判のポラロイド写真。
息抜きのわりには完成度が高すぎる。
ライティングも、オブジェもクオリティが半端ない。
何百点ものドローイングの延長上にあって、それらと変わらない世界観を持っていることに感心した。

(2014)


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