ヤッパリ「まちづくりはひとづくり」でしょう〜その1『ことのはじまり』

山梨県立大学は、南アルプス市で南アルプスWAKAMONO大学というコミュニティづくりの事業に参加しました。なぜ南アルプスWAKAMONO大学が生まれたのか。そこでは何が行われ、何が生み出されたのか。

企画者・発起人である南アルプス市の保坂久さんが投稿してくださいました。地域コミュニティをどうつくりあげていくのか。語りかけるようにわかりやすく書いてくださいました。ご興味のある方は、ぜひ、ご一読ください。何回かにわけて、連載いたします。早速、ことのはじまりから。

ことのはじまり


2014年(平成26年)の1月。
そのとき私(保坂)は迷っていました。東京の大手広告代理店が全国で募集した、人材育成の企画事業に応募し、先方との打合せも進め、組織内部にも予算化の了解を得て、あとは細部を詰め、新年度から実施すればよいことになっていました。でも、このやり方が本当にまちにとってよいことなのか今ひとつ決めかねていたのです。

前年の秋に「フューチャーセンターをつくろう」(野村恭彦著)を読んでいました。市の政策担当だった私は、まちの将来の方針を決定する仕組みとして、こんな機能があったらよいんだろうなーと、漠然と考えていました。

別件で芦安という地域の振興について、県立大と連携の打合せをしているときに、「フューチャーセンター」をテーマにしたシンポジウムが開かれることを聞きました。この山梨でずいぶん進歩的なことをするものだと、1月29日にできたばかりの県立図書館へ出かけていき、「フューチャーセッション」を見学し、シンポジウムを企画している山梨県立大学特任教授の佐藤文昭先生を紹介されました。シンポジウムの最中でしたが、幕間に、「フューチャーセンター」のほか、意見交換をさせて頂きました。佐藤先生のお話はとてもシンプルかつ本質的でとても納得し共感できました。

帰りの車の中で、県内にもとてもよい考え方の方がいた。WAKAMONO大学の講師は、佐藤先生にお願いしようと心を決めました。実は、大手代理店企画の考え方が、私にとっては今ひとつしっくりきていなかったのです。

当時は、「コミュニティデザイン」とか「ソーシャルデザイン」とか、まちづくりに「デザイン思考」という新しい考え方が出てきた頃でした。「著名な○○デザイナーの△△さんが、どこかの自治体で地域の人々と地域活性化に取り組み、すごい成果が上げた」というような話がメディアに流れて、私たちの関心を引いていました。市で地域活性化につながる人材育成を企画していた私も、いろんな事例を調べ、著名な講師による、華麗なワークショップや派手な発表会、素敵な冊子作成などをイメージしていました。大手広告代理店の企画も、デザイン思考によるまちづくりの手法を学ぶ内容となっており、その手法を記した本の著者が企画したパッケージになっていました。有名な大手の広告代理店であり、パッケージ化もされていて、委託すれば、あとは安心と考えていました。

しかし不安もありました。東京に拠点のある相手と本当にうまく事業を進められるのか。市にとって小さくない費用が内容に見合うのか。1年分の予算は確保できても、将来につながる投資とすることができるのか。打ち上げ花火でよしとするつもりはありませんでした。

佐藤先生との話はこんな感じだったかと思います。参加者の思いはそれぞれ違うだろう。市が決まった内容にあてはめるのではなく、参加者たちが話し合って、何に向かって、そこで何をするのか、事業自体をゼロから作っていくことが大切ではないか。そうでなければ自分事にならず、定着しないのではないか。そんな内容だったと思います。

3日後、組織内で委託先変更の合意形成を済ませ、佐藤先生が在籍する県立大学の地域総合戦略センターに事業委託を依頼しに出かけ、快く内諾を頂きました。1月31日のことでした。


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