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No.137 『スター精密』 社長の分析と嬉しい出来事

スター精密の12月期決算説明会を動画で視聴しました。説明してくださった佐藤衛社長とは過去に何度か対話したこともありますが、決算説明会のプレゼンテーションを聴くのは今回が初めて。静岡の「みのもんた」、強烈なキャラクターが人気を博した佐藤肇会長の後ではさぞかしやりにくいだろう。半ば同情する思いで耳を傾けてみると、意外にも、といっては失礼ですが、非常に好印象でした。

温厚にして理知的。繊細にして誠意的。育ちの良さが毛穴から滲み出ている。さすが我が母校、青山学院大学の卒業生。「えー、世界の経済は・・・」のような、聴く者をゲンナリさせるマクロの話から口火を切るのではなく、みずから手がける事業の実情をいきなり静かに語るところから始める。まるで太宰治の「人間失格」の書き出しのよう。投資家・アナリストを引きつける「つかみ」をちゃんと理解していると感じました。これも肇会長の指導の賜物かもしれません。

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「去年の2月。中国の工作機械の受注が21台まで激減しました。米中貿易摩擦など、それまでも苦労の多い環境でしたが、それでも100台を超える受注を確保していたにもかかわらずです。この状況を踏まえて、第1四半期の決算で期初の会社計画を取り消させていただきました。ところが、4月に入って中国の受注が165台と2月の約8倍まで急回復。これを受けて、中間決算では最終利益の段階で1億円の黒字見通しを発表しました。その後、中国の需要に牽引されて欧州の受注も回復。第3四半期の決算において当期利益の計画はなんとか10億円に上方修正できました。そして今回の本決算。当初の予想をさらに上回る実績となりました。2020年はまるでジェットコースターに乗っているような激動の一年であったと思います」

文面だけを見ると平板に思われるかもしれませんが、これが衛社長の口から紡ぎ出されるとなんともいえない深みとコクが加わります。激しい戦火をくぐり抜けた兵士が醸し出す悲壮と迫力に似た雰囲気とでもいいましょうか。手元に原稿は用意されているのでしょうが、単に字面を読みあげるだけでは表現されない生々しさが感じられます。HOYAの鈴木CEOのような飛び抜けた自由演技とはまた異なる、規定演技ながらも表現力が横溢している印象を強く受けました。これはできそうでなかなかできない。

スター精密で懸念されるのは新たな収益柱の育成。工作機械、プリンタ、電子部品が主要な事業でしたが、外部要因から電子部品の戦線を大幅に縮小しました。一方で、数年前に注力を宣言していた振動発電事業は頓挫し、クラウドサービス事業も軌道修正を迫られています。このままでは、工作機械の受注動向のみに株価が左右されるシクリカル銘柄とのイメージにとどまってしまうでしょう。

実は先日、肇会長からお電話をいただきました。「note」へのわたしの投稿に目を留めてくださったそうです。本当にありがたい。

「金融機関の人とは基本的に会ってないの。だってさあ、おれの話はどうしたって面白いから、衛社長の影が薄くなっちゃうじゃない。だけど、あなたなら会ってもいいよ。インサイダーに引っかからない範囲でなんでも話すから。コロナが落ち着いたら静岡までいらっしゃい」

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「なんだよ、ただの自慢かよ」。そう思われたかもしれません。そして事実、そうかもしれません。新規事業の育成・拡充を会長はどのように考えているのか。静岡へお邪魔するにはまだ時間がかかりそうなので、まずは電話で話をうかがってみようと考えています。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。



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