スクリーンショット_2020-01-28_10

No.62 『企業分析に関する3つの視点』 1つ目は市場の成長性を見極めること

数回に分けて『企業分析に関する3つの視点』をお伝えしたいと思う。特別な話では決してない。むしろ、ごく当たり前のことばかりだ。でも、基礎的な所作を守ることが意外に難しいのもまた事実であろう。

まずは1つ目の視点。『市場の成長性を見極める』。

企業が身を置く環境が、成長市場か、成熟市場か、衰退市場か、という話である。これを知るには大した労力を要しない。ネットで検索すれば大半の市場の様子がわかる。もう少し踏み込んで調べたければ、矢野経済研究所のホームページを参照するのが良い。レポート自体を購入するのは高価だが、レポートが発売される際のリリースに調査の概要が記されている。それだけでも、市場動向について十分な情報を得られるケースがわりと多い。

当然ながら、成長市場に身を置いている方が企業も業績を伸ばしやすい。成熟市場や衰退市場で成長を続けるにはかなりの経営力が必要だ。逆に言えば、経営力に劣るとしても、成長市場が相手ならばその恩恵に浴することができる。

ここで大切なことは、なぜ成長しているか、なぜ衰退しているか、その背景を考えることだ。「市場の平均成長率は+10%です」。これは単に事実を述べているにすぎない。なぜ伸びているのか。その背景が分かれば、これからも成長を続けるのか、あるいはそろそろピークを迎えるのか、先行きについて推測することができる。

デジタルカメラを例に挙げてみよう。2000年初頭に本格的な普及期を迎えたデジタルカメラは、それから成長の階段を急速に駆け上がった後、2010年頃に終わりの始まりを迎えた。デジタルカメラが成長した要因は、ユーザーの利便性が格段に向上したことにあるのだろう。アナログカメラとは異なり、撮影したその場で画像を確認でき、現像ショップに足を運ぶ手間がなくなった。画素数という形で画質の良し悪しが見える化され、メーカー各社による画素数競争が買い替え需要を刺激したことも大きいだろう。にもかかわらず、本格的な普及からわずか10年程度でピークを迎えてしまったのは、iPhoneに代表されるスマホによる代替が背景にあることは今さら指摘するまでもない。画素数競争というハードウェアの技術改良に力を注ぐ一方、デジタルカメラはネットワークへの接続というソフトウェアの技術開発で遅れを取ってしまった。結果として、成長を牽引したユーザーの利便性が相対的に失われたことが凋落の背景ではないかと思う。

スクリーンショット 2020-01-28 14.29.27

『市場の成長性を見極める』ことの難しさは、市場の変節点を予想できるかどうかにあるのではないだろうか。ともすると、われわれは今の勢いをそのまま未来に延長して物事を考えがちである。潮目の変化を予期するためにも、市場の成長性の背景を分析することがとても重要だと思う。

2つ目以降の視点はまた別の機会にしよう。

(注記)デジタルカメラの生産出荷実績はCIPAの統計データより作成


無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。