メモリアルワールドーヨゾラ編(2)ー

 私はその夜、少し浅めに眠り、朝になるとスワリーに起こされた。

「ヨゾラ様、昨晩は眠れたでしょうか」
「……ぐっすりと眠れたから大丈夫」
「では朝食をご用意しております、こちらへ」

 スワリーはそう言うと、すたすたと案内を始める。私はその小さな歩幅に合わせて付いていくのだった。

 少し歩いた先にあったのは食堂だった。

 そこまで案内をすると、注文の仕方だけ教えてスワリーは去って行ってしまった。

 私は教えられた通りに注文をして、受け取った料理をもって着席する。本来、城の関係者以外は有料だが、今回は特別に無料らしい。

 さてさて、この食堂初めての注文はシンプルなパンのセットだ。

 内容は、輪切りにされたバケットにクロワッサン、ベーコンとスクランブルエッグが乗せたパン。スープまでついているシンプルながら満足できるセットですね。

「ふー、ふー」

 まだまだ熱いスープを息で冷まして、ひとくち。

 うん、おいしいですね。芯から身体があったまります。

 今回はポテトポタージュスープを選んでみたが、他にも種類があるようなのでまた来るときがあればそれも選びたいところです。

 小さなバターをバケットに薄く塗り、口に運ぶ。

 このパンもうまく焼けていて、いい小麦の匂いがする。ようするにとても美味しいということです。

 スープも時々飲み、そのたびに、ほっと息をつく。

 いまさらですが、私は人形です。自律機械人形というのが正式名称ですが。

 人形ならなぜ食事ができるのかといえば……まあ、私がものすごく高性能だからですかね。

 ……この機能の詳細を話していると、折角出来立てのパンが冷めてしまうので、割愛します。

 続けてクロワッサン、ベーコンとスクランブルエッグがのったパンも味わって食べる。

 バケット以外の二種類のパンが選べるセットなので、スープと合わせても無限の可能性があります。

 最後にスープを冷ましながら一気に飲み、ほっと息を吐いてから席を立ち、皿を乗せたトレーを返却口に持って行ったのだった。
 
 そのあと再びスワリーに連れられ、馬車に乗ってドーリー地区へ移動する私は、スワリーにメモリアルワールドについての話を聞かされていた。

 まず、メモリアルワールドには七つの主要な場所があり、それぞれメモリアル城、不滅の森、妖精のルースター地区、動物のヤハナ地区、人形のドーリー地区、人間のナータス地区、貿易のアーカス地区があるらしい。

 私は人形なのでドーリー地区に住むことになるらしいが、他の種族はそれぞれの地区に住むことになるらしい。

 他の地区へ昼は行ってよいが、夜間はダメらしい。

 そして最後にスワリーは真剣な顔で「これだけは絶対に守ってください」と断りを入れてから話を始めた。

 内容は、ここでは生きている頃を思い出してはいけない。という物であった。

 思い出し、口に出してしまうと直ぐに刑に処されてしまうらしい。

 なぜなのか? と質問したが「……私は存じ上げておりません」と返された。

 ではなぜ城が生きていたころを口にしたことが分かるのか? と質問をすると、スワリーは近くにとまっていた梟を指さした。

「あの梟が見えますか?」
「梟ですか? 見えます」
「あの梟が城に報告しているのですよ」
「…………」

 ……それはつまり私たちをあの梟が監視しているということか。

「安心してください。思い出さなければ問題はないですよ」
「……まあ、そうですね」

 またすこし、このメモリアルワールドへの警戒心を高めながら馬車にゆられるのだった。

「ヨゾラ様、ドーリー地区に到着いたしました」

 当たり前のことだが、ドーリー地区には人形たちがたくさんいた。だがちらほらと他の種族たちもいるようだ。

 スワリーは食料品店などの生活に必要な店、通貨、そして最後に私が住むことになる家を案内してくれた。

 嬉しいことに一か月間は無料で暮らすことができるようだ。

「なにかありましたら梟にお伝えください」
「分かりました」
「では私はこれで」
「ありがとうございました」

 私はスワリーを見送った後、少し街を巡ってから夕ご飯をたべて就寝した。

 翌朝、朝ごはんをさっと食べた後、朝の街に出かけてみることにした私は、ぶらぶらとメインストリートを歩いていた。

 どうやらまだまだ店などは開店していないようだ。

「っ、すみません。お怪我は……」

 すこしぼーっとしすぎていたのか、通行人とすこしぶつかってしまった。

「あっ、だ、大丈夫なのです。こちらこそぼーっとしちゃって……」

 ぶつかってしまったのは、袋を持った金の髪色をしている子供の人形であった。

「……やっぱり私はダメだなぁ。はぁ……」
「あ、いや。そんなこと、ないと思いますけど……」

 うっ、私は子供の相手が苦手なんですが……。

「本当にダメダメなのです、私。なにをしても失敗ばっかりで……」
「……誰でも最初は、失敗すると言いますし」
「……十年も八百屋のお手伝いしているのに、まだ仕事を覚えられないのです」

 まさかの年上ですか……!

 私は創られてから五年しか経っていません。つまり目の前の子供型人形は最低でも五年以上は年上……!

「…………」
「ど、どうしたのです? も、もしかしてまた私、失礼なことを……!?」
「い、いえ。なんでもないです、大丈夫です……」

 いやよく考えたら、五歳より年下を探す方が大変でした……。

「私やっぱり何か、失礼なことをしてしまったのです……?」

 あらぬ誤解を生んでしまった……!

「すみません、貴方が年上ということにショックを……」
「え? あ、あぁなるほど。ここでは歳をとらないですもんね」
「と、歳をとらない?」
「あれ? もしかして最近来た人?」
「あ、はい。そうです。昨日メモリアルワールドにきました」

 歳をとらない、ですか。つまり不老不死……。ここ博士がいたら狂喜乱舞しそうですね……。

 あれ……? 博士って誰だっけ……。

「私はルーナっていいます。は?」
「っぐぅ……」

 ちょっとした精神攻撃やめてください……。

「……私はヨゾラです。ヨゾラでいいのでお姉さんはやめていただけると……」
「ふふっ、分かりましたヨゾラさん」
「ありがとうございますルーナさん」

 さすがに年上にお姉さんと呼ばれるのは抵抗がありますからね……。ありがたい……、いやこれってありがたいでいいのでしょうか……。

「あっ、そうだ配達してたんだった! すみません、また会ったらこの地区を案内しますね!」
「あ、引き留めてしまってすみませんでした。ではまた」
「また今度!」

 ちょっと疲れた……。


      【世界観共有型企画 メモリアルワールド】

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