マガジンのカバー画像

短歌

21
短歌の連作をまとめています。
運営しているクリエイター

#創作

短歌「さよならグッドモーニング」(18首)

g 00 d M oRn I N g 斜陽シテ目がまわり超高速度で落下し定点 オーディオの音を抜き取り味見して噎せた入道雲の終わりに 路の傍に落ちてる花を噛み千切り匂いを嗅いだ探索犬B 朝靄の雑踏の隙間駆け抜ける閃光一筋フラッシュバック 蜘蛛の巣が地球をさらいに来るらしい試験は忘れていい雰囲気だ 貪欲にあの子の窓を這う蔦は血管らしく取り払えない ざらざらと小川に流るる太陽をつまむと白く溶け落ちていく 足元のレールの終わりが見えなくて線路と呼ぶのをやめ

短歌「世界が文字にならないうちに」

また朝だコインを投げたらうら/おもて 夜は深紅のカーテンに散る 換気する音がうるさい めちゃくちゃに海の氷は掻き混ぜられて 東京は3の腹から産まれ出た 012は足掻けども0 背表紙を撫でれば崖を越える日が孵化する いつかの自分が飛んだ 美しき君の裸を見せてくれ 世界が文字にならないうちに 煮えたぎるブルーベリーに溶ける日の少年は重い銃を手にした 灰はただ天に召される父たちよ静かな街を愛した者よ カフェインを摂るようにしてあなたからやさしさ奪う僕の指つき アルバ

短歌「あかあかと砕ける」

愛嬌をさわるこわさは盲目に辿る煙の螺旋階段 褐色に唐辛子舞う水面のどこにいるのか鈴振る者は 連れてゆく列車の夜は夢を切る 明日の天気を教えないよう 腐食するセーブデータの餞にスーツを羽織る父を見送る ザリガニはエビと同じであったろう 傷は報われねどもうるおし 死に至る時流に揺られ往く路の惑わす風の耀かしさよ 恋人は互いの扉を行き来する 星のあいだを横切るように 肉慾の海のごときにうねる夜は錆びつく胸のひずみにとおく できるだけ傷ませた胸つかみとり投げ込む池の声

短歌『カラフルという色』(21首)

*こちらは『POP & END』に収録された一篇です。『POP & END』のご購入は https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168 から 『カラフルという色』 法律が白くて飽きる羽根外すドラッグストアに履歴書送る 痩せ煙草喫むキッチンで革命の卵焼かれる匂いは朝だ

有料
100

短歌『吐息の見える街角』

『朝』 1.海の陽もぼろい硬貨も暗がりもシーツに包んで燃やそう全部 2.モザイクにひらいた網の膜間へと紛れる朝は汽笛に霞む 3.さえずりの音階が意味不明すぎる愛を囁くことにしておく 4.だらだらと崩れる放縦精神はベッドでひたに存在を吐く 5.街宿る雨は地上に跳ね壊れゆく、白き朝の吐息は奏 6.色褪せる永遠(とわ)を謳った翌日に囀る鳥は雪に踊りて 『木陰』 1.屋根たちに隠されるあのけやきにはきっと異界の鍵がねむれり 2.なつかしいにおいを寄せる木漏れ日にあな

0-2013.6短歌

『部屋』 1.水槽に消えゆく霞に祈りつつ乾いた花びら千切っては口に 2.セーターの毛玉を食べた心地して猫のとなりにあった空咳 3.いなくなる瞬間気圧を下げるなら気象予報士のままでいたい 4.眠れずに吐いた言葉が合図して僕を海から引き剥がしてく 5.夕暮れに傘差してみるも青じみて浴槽に羽根が落ちていたんです 6.あのゆめの覗き込むのを壊そうと屋根裏に捨てたバットを探す 7.交わす舌灰の味しかないけれどふたつの身体に音素が落ちる 8.白日に消されてくのは焦燥でそれ