笑いたくて笑っているわけではないけど、笑ってしまうとき。
笑ったらいけない場面で笑ってしまう。
そんないけない自分がいる。
歯医者さんでさ。
「よろしくお願いします」の挨拶の後、大きなリクライニングにどっさりと腰掛ける。椅子の腰の部分に深く腰掛ける。
検診してくれる若くて綺麗なお姉さんに「倒しますね〜」なんて言われちゃったりして。
「ああ、俺、今からお姉さんに倒されるのか〜」なんて思っちゃったりして。
ウイーンって、じわじわと倒されてるときに、なんか笑ってまう。
いうても私は、36歳のおじさんだ。ええ大人が、ここで笑ってしまっては、ダメなことはわかっている。
頭ではわかっている。けど、笑ってまう。なんかよくわからんが、笑ってしまう。
お姉さんがリクライニングのボタンを押してしまったものだから、じんわりとゆっくりと倒されて、仰向けになっていく36歳のおじさん。
あれ?思った以上に倒されるのね。
倒されてる時間、約10秒くらい。
「ああ、俺、どこまで倒されるんだろう。ああ、そんなに倒したら、ああ、もう。。。」みたいな気持ちになってくる。
うん。
頭ではわかっている。
きもいよね。
きもいのよ。
知ってるよ。
けど、思ってしまうのよ。
なんかすんごい恥ずかしい。
辱めを受けてるって思ってまう。
「ああ、俺、倒されちゃってる〜。なんかすんごい倒されちゃってる〜」って、思ってしまう。で、そう思ってしまったら最後、こちとら笑いをこらえるのに必死よ。
おそらくうっすらとエクボは出てるだろう。
仰向けになった私にお姉さんは「は〜い、歯茎チェックしますね〜。口開けてくださ〜い」と優しい声かけをしてくれる。私は、言われるがままに口をぱっかーんと開ける。
エクボを抑えながら、お口パッカーン。
そもそもエクボを抑えたいのは何故か。
キモいって思われたくないからよ。
こちとらおじさんよ。おじさんなんて、歯医者さんのリクライニングに座らされて、じんわり倒されて、ついに仰向けになって、お口パッカーンの時点で十分キモいのよ。
これ以上、キモくなりたくない。キモエクボになりたくない。おじさんの自覚があるだけにエクボをこらえる。
だからね。
エクボを抑えるために、必要以上に口をパッカーンと開ける。それでも笑いを堪えきれないから、左手で右手の痛そうな部分をつまむ。
笑けてくる感情を痛さでカバーしようとする。
おそらくお姉さんには、バレバレだ。
多分、ずっとバレバレだ。
なんてことをどうせ思っているのだろう。
俯瞰で考えたときに、笑いに拍車がかかる。
もはや、私の願いは一つだ。
早くウイーンって削ってくれ。
早くタオルをかけてくれ。
頼む。
お願いだ。
タオルをかけて、顔を隠してくれ。
・こぼれ話。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!サポートしていただいたお金はビールかスーパーカップかおむつ代に使わせていただきます。 これからもゆるく頑張らせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。