見出し画像

犬小屋 | #シロクマ文芸部

愛は犬ではなく犬小屋に注がれている。

そう確信したのは、ここ1年くらいかな。初めは普通の犬小屋だったんだけどね。リフォームされて、ジャグジーとウォーキングマシーンのついたゴージャスな犬小屋になったんだ。なんかジャラジャラしたのとか、キラキラしたのとかもついているんだ。
相棒は犬小屋じゃなくて、ドッグハウスって呼ぶんだけどね。
まあ。
まあどっちでもいいんだけどね。

相棒の友達が来ると、みんな言うんだ。「立派な犬小屋だね」って。ぼくの方なんて見もしないで、興味津々で犬小屋を見学して。「こんな犬小屋で暮らせるなんて幸せだね。私も犬になりたい。」とか簡単に言うけどさ。
まあ。
なってみたらいいと思うけど。

ちなみに犬界隈でも噂になっていて、散歩で通りすぎる犬友達はニヤニヤ見ていくし、知らない初めまして犬は、だいたい2度見するよね。恥ずかしくてしょうがないよ。平気なフリはしてるけどさ。

相棒はさ、熱い眼差しで見るんだよね。
犬小屋を。
愛情を注ぎ込んでいるんだよね。
犬小屋に。

ぼくへの愛が足りなくて気づいたら遠吠えしてたよ。わーん。わーん。

でもさ、優しかったんだ。ぼくを見つけてくれた夜、とっても寒い夜だった。抱きしめて連れて帰ってくれたんだ。犬小屋なんかなくてさ、毎日一緒に寝てたんだけど。あの時の相棒の温もりはさ、一生忘れないと思うよ。

相棒の腕のなかが、どんなに立派な犬小屋、あ、ドッグハウスよりも安らげる場所なんだって思うんだ。

ぼくをもっと愛して。大好きだよ相棒。
わん。


(おわり)


🔸#シロクマ文芸部 に参加させていただきました。今週も楽しく書きました。
書き出しから思いもよらない世界が頭の中に浮かんでくるので楽しいです。
ありがとうございました。

(犬界隈が気になる…。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?