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その17 殺人未遂の犯人は、命の恩人だった・・・

2018年 (平成30年) 40歳 1月下旬

年始の外来受診から約2週間後の再来日がやってきた。

女医先生に言われた通り、絆創膏の貼り替えは欠かさなかったし、シャンプーする勇気はなかったんだけど、体の清潔も保ってきたつもり…

(どうかな…良い方向に行っていたらいいけどな…)

「診察室へどうぞ~」

(よしよし!もう呼ばれちゃったぞ~)

今回は予約外来(時間指定)受診だから、待ち時間がほとんどなく呼ばれてご満悦な僕。

「失礼します…あっ…今年もどうかよろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

そう言われてから、僕の背後に回り患部を入念にチェックする女医先生。

「うん、良いですね!頭の傷は完全に塞がっています。今後は軟膏を塗った絆創膏を貼る必要はありません。」

「えっ…そうなんですか…(大丈夫なのかな?)それじゃ~薬を塗ったり飲んだりすることが全くなくなるんですか?」

「ええ、そうです」

「そ、そうですか…え~と、それじゃ~…足の傷跡は?」

「もちろん、今まで通り何もする必要はありません」

「そ、そうですよね…じゃ~傷跡って今の状態からどれくらい改善するものですか?」

「う~ん…少し薄くなるかもしれませんが…全くなくなることはないでしょう!」

「そうですか…仕方ないです…」

「あっ…じゃ~これ(常に被っている医療用帽子)は?」

「もう絆創膏を貼る必要はないので被らなくてもいいとは思います」

「でも、脱毛部分は特に…紫外線とかあまりよくないんじゃないかな~って思うんですが…」

「あなたが気にされている紫外線も、蓄積されると皮膚癌の可能性は高くなりますが、年齢的に考えて、後頭部に出来た基底細胞癌は、おそらく放射線治療を受けた影響から来ているものではないかと考えています」

(えっ?)

「放射線…ですか?」

「ええ」

「えっ…とですね…それって、いわゆる放射線の蓄積によるものってやつですか?」

「ええ、そうなります」

「そ、そうですか…」

後頭部皮膚癌の発生原因は、治療のために蓄積された高い放射線量

確定したわけじゃないけど、その可能性は大いにありそうだ…

衝撃的な事実を知って途方に暮れる僕

学生のころに受けた開頭手術で、腫瘍の摘出は全て散り除くことができたんだけど、根治治療というのか?その後に抗癌剤治療と放射線を頭部と脊髄に照射された僕。(悪性腫瘍の仕組みは生卵、良性腫瘍はゆで卵のようなものだと思っています。詳しくは 、体験記である 僕と脳腫瘍 を参照してください)

特に放射線治療は、体力的にも精神的にも非常に苦しかった

あれよあれよという間に、頭部全体の髪と眉毛がなくなり
食欲が次第に低下して、最後にはまったくなくなり
それなのに、日に何度も嘔吐する

脳腫瘍(髄芽腫)があった小脳付近には、後頭部から開頭して摘出手術が行われたからだろう…後頭部は照射された線量が最も高く、今でも広範囲が脱毛状態

なぜ脱毛状態なのか?

またいつか詳しく説明する機会を作れたらと思うんだけど、癌細胞に対して放射線は治療として有効なのに、人体(正常な細胞)には必ずしも良いものではないから…(正常な細胞である毛根にも照射してしまったから)

ま~それって残念なことではあるんだけど、悪性度が高い髄芽腫を、出来るだけ長い時間再発させないためには、放射線治療がなければ難しいだろうから、それを恐れて照射しないという選択肢はなかったと思うし、髄芽腫があった場所へ確実に照射するためには、当時の技術では仕方がなかったのかもしれない。

それに、主目的である「髄芽腫があった場所への確実な照射」が間違いなく行われたから、オジサンになった今も、僕はこの世に存在しているわけで

だからさ~

僕にとって、「命の恩人」

そんな放射線を、決して悪者扱いには出来ないんだよな~

ただ、「後頭部皮膚癌の発生原因の大きな1つ」として、今の僕を苦しめているのは確かであって

それって、何て言うのかな…

テレビアニメを見ているとき、みんなに愛されているヒーローが、突然悪の組織と仲間になって悪いことをし始めた瞬間っていうのかな?

(君は僕らのヒーローだったのに、何でそんなことするんだよ~)

そういう残念って言うのか?無念というのか?落胆って言うのか?

とっても複雑な気分だ…

(おっと、いろいろ考え事をして黙っていたから、女医先生が不思議そうな目でこっちを見ているぞ…)

「それでは…他に質問がないようですので、今日はこれで終わりです。後頭部の患部も、太ももの傷跡も、入浴に限らず通常生活に何ら制限はありませんので、何をされても構いませんからね」

「えっ…何もかもナシ…ですか?」

「ええ」

「そ、そうですか…」

「あとは…次回の受診ですが、一年後に来てください!それまでは特に何もありません。

(えっ…)

え~~~~!いっいっいっ一年後ですか~~~?

「ええ、あなたは、かかりつけの皮膚科に定期外来受診されていますので、今後は何かあれば紹介状を書いてもらってください」

「そ、そうですか…」

大きな病院は、地域のかかりつけ医の紹介状がなけれな基本的に受診できないことは知っている。でも、術後は今後しばらくは、週に一回ペースの受診できるものと思っていたんよね…

・・・

薬も治療も、執刀医の診察もない

今後、僕は大丈夫なんだろうか?

「でもですよ…やっぱり…」

まさかの展開にシドロモドロになる僕…

そこに追い打ちをかけるかのように女医先生の一言が!

「あとですね、再診は一年後ですが、今後5年くらいは経過観察していきたいと考えています」

「えっ…5年もですか…」

先生が5年診たいということは、そのくらいの期間は再発に要注意ということなんだろう…

「わかりました。それでは一年後に…失礼します」

いろいろなことが想定外であって、よく整理ができない状態…

これからは必ず前途多難になるだろう。

そこだけは、確信した僕でありました…

ー つづく ー


いかがでしたか?

今回送った「僕からの手紙」が、何らかの形で、みなさんのプラスになれたら、とても光栄です!

読んだよ〜ってことで、スキを押してもらえたら、今後書いていく励みになりそうな気がします。

できましたら、これからもたくさん手紙を送りますので、どうか目を通してほしいです。

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