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オレの一座【戯曲/コント】

この作品にはとある思い出がある。
大学一回生、「衝動―喜劇的ドラマに添えて―」を早々に書き上げた僕は、
同期が一本目を書き上げるのに苦労している中、恩師に「もう一本書いてみたら?」と進められ、
「君がどんな人か教えてくれ」とそんな会話をしながら、
自分に影響を与えた作家の話をすることになった。
「星新一さんが大好きです」
その言葉で、恩師から「星新一で好きな作品からイメージを拾っておいで」
「それで一本書いてみて」
そう言われてワクワクしながら書き上げた。
星新一さんの「おれの一座」というSS作品。本当に大好き。
是非読んで欲しい。
そしてこの作品からイメージをかき集めてこの作品を書いた。数時間で書き上げた。
勢いと、楽しさで筆が進んだ。
恩師に渡すと、彼は驚くほど淡々と言い放った。
「僕は世渡さんにはこういう作品を書いてほしくない」
頭を鈍器で殴られた感じ、とはよく言ったもんだ。殴られたことは無いけど、
こういう感覚か、と思った。
めんたまひん剥いた。びっくりした。
正直恩師には全肯定しかされたことがなかったのでここまで強く言い切られると
「わかりました」とすぐに頷いて原稿をしまうことしかできなかった。
今思うと、なぜ彼がそう言ったのか、自分では分かるつもりだ。
まぁあの時の自分は「先生に嫌われたかもしれん」とおかしな方向で凹んでいた。
そして、次の「おれの一座」という作品が二度目の作品になる。
どう変わったか、も、読み比べて頂けたら嬉しいです。
すごーく長くなってしまった。思い出は重たいねぇ。
恩師、あの時方向を修正してくれて本当に有難う。



https://note.com/yowatari_mitu/n/n420c36d9e903/edit
「衝動―喜劇的ドラマに添えて―」☝はこちら




人物
座長             
アシスタント         
団員A
団員B
団員C


友人



映画の上映開始を思わせるようなブザー音。
音が鳴り終わると幕があがる。舞台は真っ暗のまま。足音だけが響き渡る。
座長が舞台センターにつくと、彼にのみスポット(センターサス)があたる。

座長は派手すぎず、また地味すぎない、極めて座長らしい煌びやかなスーツを身にまとっている。頭にはシルクハット。
彼はハットを脱いで深々とお辞儀をする。その顔は常に自信に満ち溢れた笑顔でなければいけない。

座長       レディース アンド ジェントルマン!
         さぁさ今宵も始まるショータイム!!息つく間もないスリリングなステージを貴方にお届けいたします。
どうぞ最後まで、お楽しみください!!


座長がもう一度お辞儀をするとスポットライトは消える。
ほどよい間の後、舞台すべてが明るくなる。
常に蛍光灯の光のような淡い光で灯された室内。
舞台上には何脚かのパイプ椅子。折り畳んだまま積み重なっているものもある。
奥にはハンガーラック。何着もの舞台衣装がかけてある。
舞台上手に長机。その上にはモニターが3つ。(黒くて四角い箱のような形のものが好ましい)
下手には丸テーブル。積み上げられた台本の山。
他、床のあちらこちらに衣装が散らばっていたり、木材が乱雑に置かれている。
居心地のいい場所ではなさそうだ。

モニターを食い入るように見つめる座長。
その表情は先ほどのさわやかな笑顔が嘘であったかのような、不機嫌そのものである。
その座長の後ろにはアシスタント。
座長から出ている禍々しいオーラを感じ取った彼は、この後座長がどんな態度に出るか既に悟っているよう。
ソワソワと落ち着かない様子である。


座長       (拳を机に叩きつける)クソッ!!何なんだあの演技はッ!?オレの言っていた演出と全然違うだろ!!どうゆうことだ!!
アシスタント   あー…はは…(苦笑い)
座長       (振り返ってアシスタントを睨みつける)
アシスタント   ウワー…怖い怖い…。
座長       どうゆうことだって聞いてんだよ!!(モニターをバンバンと叩く)
アシスタント   ちょっと!!壊れたらどうすんだよ!!!もー…(モニターをさする)
座長       (舞台上を動き回りながら)こんな、こんな舞台じゃ、あいつが満足してくれるはずがないだろ!
アシスタント   あー、確かに、いつも以上につまんなさそう。
座長       っち…(舌打ち)
         あー!!ちがうちがう!!そうじゃねェ、そうじゃねェんだよ…(モニターを見てから頭を抱える)
アシスタント   ……。
座長       ……。


その時、下手から団員Aが登場。その表情は若い好青年らしい快活なものである。
が、目に悪い色合いの派手な衣装をまとっている。


団員A      ヘイ!座長!どうだったかい?俺のスペシャルでアグレッシブな演技は??
座長       (食い気味で)お前っ!!
団員A      なんだい?
座長       なんだい?じゃ、ねェよ!!何がスペシャルで、アグレッシブな演技、だよ!ただ舞台上走り回ってただけじゃねェか!!ふざけんなよ!!あんなシーン台本にはなかったはずだ!
アシスタント   ま…、まぁまぁ…。
団員A      だって、キミの台本ちっとも面白くないんだもの。あんな演出じゃ(モニターを見てから)彼だって退屈に決まっているさ。
座長       お前が勝手な演技ばっかりするから退屈そうにしてんだよ。ふざけんな。どうしてくれんだ。
団員A      じゃあ言わせてもらうけど
座長       なんだよ。
団員A      キミが最初に、スリリングなステージをお届けします~。みたいなこと言ってたんじゃないか。だから俺だって、その期待に応えようと思って、
座長       確かに言った。言ったけどそれは、お前の演技みたいに粗くて雑なものじゃなくて、繊細な、綿密な、設計図の元に作りあげなくちゃいけねェんだよ。
団員A      なんだいソレ。(うんざり顔)
アシスタント   …あ!(モニターを見ながら)
座長       だから!!オレの台本通りにやってれば間違いねェってことだよ!!同じこと何回も言わせんじゃねェ!!
アシスタント   ちょ、ちょっと、
団員A      ハァ…。
         いい加減にしてくれよ。前から言ってるだろう。キミの台本はつかみどころがなさすぎて面白みに欠けているって。しかも笑いのセンスがこれっぽっちもないときた。こんなの続けていたらお客さんだって飽きるに決まってるだろう!
アシスタント   ちょっとー!!
座長       オレの台本はいつでも完璧だ。演じきれないお前らが悪ィんだよ。
         …っち。せっかく主役はらせてやってんのに…毎日毎日つっかかってきて…何だってんだ…。
         だいたいなんであそこで急に飛び回るんだよ!あのシーンはな、静かに始まって、徐々に…徐々に…。そう、獲物を見つけた猛獣が…今か今かとその瞬間を待ちわびているように……ジワジワと…ジワジワと……
団員A      ドッカーン!!!
座長       ちがう!!それはまだだ!!
アシスタント   ねぇ!!
座長・団員A   うるせェ!!(うるさい!!)
アシスタント   …。(モニターから離れて舞台奥に座り込む)
団員A      話にならないよ!
座長       それはこっちの台詞だ。いいか、(下手の丸テーブルに近づく)オレの台本は客好みに仕立て上げられた完璧で完全なモンなんだよ。(一番上にあった台本を取りページを捲る)
         最初のシーンはのどかな田園風景だ。はるか遠くに山脈、澄んだ空気に、穏やかな緑の情景…。(酔いしれている様子)
団員A      …。
座長       その風景がどんどんと変わっていくんだ。徐々に…徐々に…追いつめてくように……
         廃れた景色…色も音もない…。そこでお前がようやく登場して、そして客の反応を見てから…(そこまで言って、ようやくモニターに目を向ける)
         って、いねェェェェェ!!!(台本を叩きつける)
アシスタント   …。だいぶ前に出ていったよ。彼、
座長       何で教えねェんだよ!!
アシスタント   …。(溜め息)
団員A      あーあー。今日も途中で帰っちゃったね。これからが俺の見せ場なのに。(衣装の上着を脱いで床に放り投げる)

座長、暴れる。
台本をアシスタントに投げつけたり地団駄を踏んだりする。しかし苛々は収まる気配がない。
座長が投げつけたもの、団員Aが脱ぎ捨てたものを嫌々ながらもきちんと片していくアシスタント。
そこに舞台下手から団員B、団員Cがコソコソと入ってくる。

アシスタント   あ、お疲れ様ー。
団員B・C     お…お疲れ様です…
座長       クビだ!!(団員BとCにつかみよる)
         お前らみたいな下手クソな役者いらねェんだよ!!
団員B      ヒィッ!!
座長       何なんだよさっきの演技はよォ…。ア"ァ?客が帰ったじゃねェか…どうしてくれんだ!!
団員C      すみません!!
座長       謝って済むならpolice officerはいらねェんだよ!!!


(間)

座長       …。
         謝って済むならpolice officerはいらねェんだよ!!!
団員A      聞こえてるよ!!二回も言わないでくれよ恥ずかしい!!!
座長       ……。
どうしてくれんだよ!!!スベッたじゃねェか!!!
団員B      えええええッ…?!
アシスタント   やめなよ。
座長       ……。
団員B      ……。
団員C      ……。
座長       ……。(二人から手を離す)

アシスタントと団員Aにお辞儀をして、座長から逃げるように上手からはけていく団員B、団員C。
まだ怒りがおさまらない座長。

座長       あーもうッ!!!
アシスタント   もう諦めなよ。
座長       …。
アシスタント   …。無表情だったよ。今日も。
座長       …。
アシスタント   舞台の路線を変えるべきだと思うよ。(床にあった台本を拾う)
         面白くない。それはお前や俺たちが判断するんじゃない。お客さんである彼一人に、彼だけにその権利があるんだ。そこを認めない限りお前の演劇が彼に受け入れられることなんてないよ。断言できる。
座長       …。
団員A      (その辺にあったお菓子を食べ始める)
アシスタント   彼が望むものを見せるのが俺たちの仕事じゃないの?
座長       …。(アシスタントが拾った台本を受け取る)
団員A      あ。戻ってきた。
座長       (モニターに飛びつく)よっし…!
アシスタント   続き見に来たのかな?(モニターに近づく)
団員A      さぁ。今日は休日だからじゃない?
アシスタント   なるほど。
団員A      何でもいいけど。お客が戻ってきたんだ。(お菓子を口に詰めこんで)行って来るよ。
座長       待て!お前じゃ駄目だ!!あんな演技、これ以上あいつに見せらんねェ。
         オレが行く。(走って下手から出て行く)
アシスタント   え…
団員A      …行っちゃった。


残った二人、モニターを見る。


アシスタント   …。
団員A      …。
アシスタント   …。スベってるね。
団員A      …うん。見てよ、お客の顔。
アシスタント   信じられないくらい真顔だね。
団員A      …座長頑張ってるね。
アシスタント   …スベってるね。
団員A      (モニターを見るのをやめる)確かに座長のギャグはびっくりするくらい面白くないけどさ…、でもさ、こんだけ頑張って毎日芝居してるのにクスリとも笑わない彼って一体何者なのさ。
         この間の舞台、キミも覚えているだろう?
アシスタント   いつのだ?
団員A      確か水曜日。
アシスタント   あー。あの趣味の悪い幽霊が出てくるやつか。そのわりにあれはいい出来だったと思ったんだけどな。
団員A      ホラーにもサスペンスにも反応しないし、やってるこっちも全然楽しくなかったんだぞ。笑いもしないし、怖がりもしないし、泣きもしない。叫ぶどころか声を発することもしない。
         お客が盛り上がればこっちだってもっと楽しいと思うんだけど。
         彼にそんなこと求めるのは無理なのかもね。
アシスタント   それでも毎日来てくれる大切なお客さんなんだ。どうにか楽しんでもらいたいんだけど……。
         …今日も駄目みたいだねぇ。
団員A      …ハァ…。(モニターの電源を切る)


下手からトボトボと座長が戻ってくる。舞台の奥に倒れこみ、体を丸める。


アシスタント   …毎度のことながら、ショック受けすぎだよね。
団員A      メンタル弱すぎなんだぞ。
座長       …うるせェ。(鼻声)
アシスタント   …ハァ…。
団員A      何でそんなに自分が作った舞台にこだわるんだい?
         こんな下手くそな舞台を続けるなら、いっそ既製品の映像を延々と流してる方がよっぽど彼も喜ぶんじゃないのかい?
アシスタント   たしかにねぇ。変なこだわり捨ててさ、他の演出家の作品をやってみるとか、
座長       そんなんじゃ、あいつは喜ばねェよ。
団員A      じゃあ何でそんなに彼にこだわるんだい?他のお客ならいくらでもいるだろう。
座長       ……。
         あいつ、いつもつまんなさそうな顔してんだよ。どんな舞台見せたってキョーミなさそうにして…
アシスタント   …。
座長       …悔しいんだよ。オレはあいつが笑っているところを見てみたいし、オレの舞台で、笑ってほしいんだよ。
団員A      …つまり下心?
座長       ちげェよ!!(ようやく体を起こす)
団員A      そんなに喜ばせたいならさ、はやく明日の台本、決めようよ。
座長       …。
団員A      俺だって俺の演技がお客の心に響かないなんて悔しいからね。明日はもっとアクションを多くしたほうがいいと思うんだぞ!
アシスタント   お、いいねぇ~アクション!
団員A      悪の組織に捕らわれた人々を華麗に救出するスーパーヒーローなんてどうだい!?俺にピッタリじゃないか!!
アシスタント   (舞台中央に走って)きゃー!誰かー!!助けてー!!
団員A      待たせたね!!正義のヒーローの登場さっ!!
アシスタント   きゃー!!かっこいいー!!
座長       …。(二人のやり取りを見ながらソワソワしている)
団員A      俺が来たからにはもう安心だぞ!!この世界の平和は俺が守ってみせる!!(舞台上で華麗にポーズを決める)
アシスタント   素敵!!(拍手)
団員A      HAHAHAHAHAHA!!!
座長       ふ、はっはっはっはっ!!来たな勇者!!この魔王の前にひれ伏すがよい!!!
アシスタント   …。
団員A      …。
座長       …。
団員A      いや勇者じゃないし。
座長       あ、すまん。
アシスタント   なに魔王って。
座長       かっこいいかなって。
団員A      ヒーローだから。勇者じゃないから。
座長       一緒だろ。
団員A      一緒じゃないよ!
座長       …。はっはっはっはっ!!来たな勇者、
団員A      もういいよ。
座長       …。
アシスタント   …。
団員A      …。
座長       明日はこの路線で行こう。勇者とヒーローの対決、
アシスタント   勇者とヒーロー戦わせてどうすんの。
座長       …正義のヒーローと世界にはびこる悪の組織との対決、でどうだ!!
団員A      うん、いい響きだね!(興奮気味に座長に歩み寄る)
座長       普段はごくごく普通の高校生だがその正体は世界を守るスーパーヒーローに襲い掛かる敵の罠を交わしながら捕らわれた少女を救い出す…そして二人は恋に落ちる…!
アシスタント   潔いほどありがちな設定!!
座長       わかりやすくていいだろ!
団員A      WOW!!かっこいいじゃないか!!
座長       アクション満載の超大作にしようじゃねェか。
         今度こそあいつを感動の渦に巻き込んでやる…!!

照明、徐々に暗くなり、舞台上がギリギリ見えるか見えないかの明るさになる。
点滅する光。
その中で団員Aをはじめとする団員たちが動き回っている。


団員A      そう!!!ここが一番の盛り上がりのシーンだ!!
団員B      はい!!!
団員A      俺の登場シーン!!最っ高にCOOLに決めるぞ!!(下手から走って出ていく)
アシスタント   今回は期待できそうだね!(上手から走って出ていく)
座長       全員位置につけ!!
(センターに立つ)ショーのはじまりだ!!

座長の言葉で暗転。同時にブザー音。
数秒後、明転。
舞台上は変わらぬ風景。床に倒れこんでいる座長、体育座りの団員A、舞台上を片づけているアシスタント。

     


座長       …。
団員A      …。
アシスタント   …。
         ちょっとー…いつまでしょげてんのさ。
団員A      …。
座長       …。
アシスタント   今日はきっと彼も忙しかったんだよ。だからあんなにはやく帰っちゃったのかも。
座長       そんなわけあるかよ…(鼻声)
団員A      …俺が登場する前にいなくなるなんて……酷すぎるよ…
アシスタント   ヒーローが出るまでがくどかったんじゃないの?悪の組織のくだりとか。あんなに必要あった?
座長       …。
…悪の組織のボス役が…楽しすぎて…ちょっとテンションあがりすぎた…
アシスタント   これまでにないアグレッシブさだったもんね。
団員A      キミが楽しんでどうするんだい!!(顔を上げる)
座長       …。
団員A      キミが言ってたんだろ!彼を楽しませたいって!!それなのにキミがはしゃぐとか、お門違いにもほどがあるぞ!!
アシスタント   言うとおりだけどさ、でもまぁ、(何も映ってないモニターを見る)いつもより楽しそうに見えたけど。彼。
座長       …気休めなんていらねェよ…
団員A      笑ってなかったんだろう?
アシスタント   それはそうなんだけどさ。
座長       真顔か。(顔をあげる)
アシスタント   …真顔だったね。
座長・団員A   …。(頭を下げる)
アシスタント   でもほんと、…なんか、少しだけ楽しそうに見えたんだけどなぁ…。
         …それで、明日の舞台はどうするの?

座長、団員A、ノロノロと立ち上がる。


アシスタント   …え、なに、どうしたの…。
座長       …。
団員A      …。
アシスタント   …。(二人に近づこうとする)
座長       ………だぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!腹立つ!!チクショウ!!ああああああっ!!!(地団駄を踏む)
団員A      (座長の叫びとほぼ同じタイミングで)あああああああああっ!!!悔しいっ!!なんなんだよ一体!!!
アシスタント   …。
座長       …絶対この台本であいつをギャフンと言わせてやる…。
団員A      (力強く頷く)


ここで二人の表情はこれまでにないくらい真剣で、目には強い光が灯ってなくてはならない。
長い付き合いのアシスタントがたじろいでしまうほどの迫力がなくてはならない。
それでもアシスタントはそんな状況を楽しんでいなくてはいけない。

座長       台本の変更はナシだ。次もこの舞台で挑む!最初のシーンは…大幅にカット!今日の続きから公演を開始する!…あいつを楽しませること、満足させることだけに集中しよう…!
         今日こそ最後の最後まで、舞台を観てもらうぞ…!
団員A      もちろんだよ!
座長       …この一座は最高なんだってこと、あいつに分からせてやろうじゃねェか…


無言で頷き合う。
座長が天井を見上げたら、暗転。


場転


舞台上は一変。
セットはなく、上手から一人の男子高校生が入ってくる。素朴だが凛とした立ち姿が好ましく、真面目で品のある性格がわかる歩き方、振る舞いが望まれる。
通学途中であるかのような恰好。
その後ろからもう一人高校生がはいってくる。


友人       本田!
本田       あ、おはようございます。
友人       最近お前朝はやいな。部活?
本田       いえ、試験が近いから早起きして図書室で勉強しているんです。
友人       ……。
本田       …??
友人       …なんかお前、雰囲気変わった?
本田       え?
友人       なんか最近楽しそうだなって。
本田       …そうですか?
友人       だってお前、何か楽しいことあっても全然表情変わんねーやつじゃん。怒ってんのか機嫌いいのかわかんなくて、俺何回も困ったことあるし。
本田       そんなことありませんよ。普通ですってば。
友人       …お前、そんなに笑うやつだったっけ?
本田       …。(友人から目をそらして)
         最近とても素敵な夢を見るんです。
友人       夢?

ゆっくりゆっくり、徐々に、スポットライトが暗くなっていく。

本田       私のことを楽しませようと毎日悩んでくれる人たちの、素敵な夢なんです。(綺麗に笑う)
友人       …。
本田       今夜は何を見せてくれるのか、すごく楽しみです……―――

 
暗転。ブザー音とともに、幕が下がる。




―幕―










素敵なサムネイル画像、お借りしました。
https://www.pixiv.net/artworks/51026556




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