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Mリーグに学ぶ「鳴き」

謹賀新年。今年も、皆様方の麻雀ライフに、幸多からんことを。

さて、昨年の12月の頭に、ゆくりなく始めてみた当noteですが、思いもよらぬほど好評を博しておりまして、特に直近の「羽生は何故勝てなくなったのか?」は、

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という異常なヒットに。天鳳民、麻雀プロ、将棋勢等々から、こちらが気恥ずかしくなるほどに、お褒めの言葉も多数頂きました。一つだけ紹介すると、

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ありです、木原プロのブロマガを皆さん是非購読しましょう!

(しかし気楽にと言われても、一度上がったハードルは下げられない、下げたくない…)

ところで、将棋といえば、先日の麻雀最強戦で、プロ棋士の鈴木大介九段が優勝されました。圧巻の内容でした。(決勝面子だった、雀王位の堀プロが、noteで振り返られていましたね)

1枚目の東スルーしてカン4mチーから入った局は、アベマのコメ欄では、「東見落としかな?w」などと書き込まれていたようですが、勿論そういうレベルの話ではありません。ZEROさんの観戦記で紹介されていたので、興味ある方は是非そちらを参照して頂きたいのですが、もちろん鈴木九段は全ての要素を考慮した上で、唯一4mからは鳴くべき、という判断に至ってます。あの打牌速度で。

あと、その後のトップ目からの強烈な押し連発も、多くの視聴者は「どんだけ押すんだよw」ぐらいにしか思ってなかったに違いありませんが、鈴木プロの対局後のインタビューでの、「まだ差付けたかったですし、打点読みして」、といった趣旨での短い発言には、盆百の論評を全て無意味に化す趣がありました。

鈴木プロは、押す一牌毎に、放銃率と打点を考慮していました。特に、赤無しなので、最警戒すべき2ハン役である、三色と一通の関連牌のカウントと読みには、神経を研ぎ澄ませていたに違いありません。あの高速打牌の裏側には、真摯な経験と天性の感覚に支えられた、膨大な思考が潜んでいたのです。

果たしてMに同水準のプレイヤーが何人いるのか。

麻雀プロよ、覚醒せよ!などと、檄の一つぐらい外野から飛ばしたくもなりました。


話変わりまして、最近、鳳東のうさぎさんのnoteが話題ですよね。グイグイガリガリ押してくる雀風が、文体にも現れていて、また内容も大変面白く、いつも欠かさず拝見しております。

その中の、牌譜検討の一節を読んでいたら、「昔、自分も似たような事を書いたり考えたりしたことあったような…」、と気になってきたので、記憶を辿って、元日から、格付けを見ながら、天鳳log等を探ってみたら、ありました。

2013年の私の鳳東から。いきなりオーラス何切るです。

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点数状況を考えると、放銃すれば2→4のラス落ちが現実的。ドラが使い易い5mなので、他家が高打点になり易い。
2→1のアガリにはハネツモか7700直以上条件で、リーチをかけないと厳しい手牌ですが、曲げると、親はツモられればラスなので、ある程度は押さざるを得ず、つまり一騎討ち濃厚。

といったことを、ドラと配牌を見た瞬間に、頭で整理しておかなければなりません。

また、それに加えて、

他家の初打を見て、読みを入れ、

何を切るべきかを、速東風の思考時間で決断します。当時の私は、

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r5pを切り、次に西を切っていました。これは、

かなりアシスト寄りの選択です。

この選択に至る思考のプロセスを解説します。

まず、繰り返しになりますが、2→1のリターンは全然無理だと見切りを付けました。どの他家からのリーチにも鳴きにも、押せない。よってスリムに一応2着確保を目指すr5p。ただ、結局オリを余儀なくされそうです。

何か他の手段は無いのでしょうか。

ここで、他家の初打の情報を読んでみます。

親は9pからで普通の切り出しですが、安牌としてオタ風を残せる余裕はないので悪くはないのかなと読めます。

対面の南家は三元牌からで、これは一般的に手牌の価値が高いサインなんですが、この場合、トップ目で配牌オリが有力、マンガンは打てない、といった条件も加味すると、通常より更に好配牌と読めます。

最後に上家の西家ですが、初打8m。これが最も考慮すべき要素です。非タンヤオ系で字牌を持っている、あるいは重なりを狙っているように読めるのです。(この辺り、序盤の読みの詳細は、是非これまでの私のnoteを参照して頂ければ)
言うまでもなく、変則手で遊んでる場合でもありません。

そろそろ、勘の良い方はお分かりだと思いますが、私はこの8mを見た時に、西をアシストしようかと思いました。
といっても、あまりに早く切ると、手牌が不十分形である若しくは孤立してる場合に、スルーされてしまう懸念があるので、ひとまず温存。

しかし、西家の2巡目の生牌の中を見た時に、迷わずリリースしました。これはターツが揃ったというサインだからです。逆に切り遅れると、刺さってのラスリスクが増えます。切るなら今しかない。

実戦は完璧なタイミングのアシストとなり2着キープ。牌譜を見返して、此の局面を呟いたりもして満足していました。

なかなか昔の自分できますね、と言いたいところですが、この話には実は続きがありまして、当時の、とある某鳳東九段に、「一応2→1あるのだから初打はピンズ一通狙って2sのほうが勝ると思います」とすぐさま指摘され、恥ずかしくなった覚えがあります。あまりにもラス回避に汲々としていた、悲観的消極的になり過ぎてた、というより、

技に溺れていた、引き摺られていた、

のだと、6年後の今は思えます。

麻雀にはメリット・デメリットが共存しない選択肢はありません。

ある選択の特定の要素のみを強調して決断してしまうことは、上級者ですら陥りがちで、しかも修正し難い悪癖です。

この対局の舞台は鳳東で、持ち時間が短いので、事前にシステム化を済ませたこのような戦略を沢山用意しておかなければならないのですが、その大量の戦略の引き出しをいつ・どこで・どれを・どのくらい開けるべきか、ということを実戦で適切に判断・実行するのは私にはなかなか困難でした。

どうしても、「極端回避性」というのか、人は無難な選択に流れてしまうのです。まあラスらなきゃいいや、チャオらなきゃいいやと。

昔も今も、鳳東最上位の方の麻雀とツイートは、常に、ギラギラしていて、押しが強くて、ptに貪欲で、人と意見が相違していても我関せずで、世評になびずに、黙々と信念を押し通す、といった風情があります。

上に挙げたような、鉄強には必ず備わっている思考と行動の、真逆ばかりを私はずっと選んでしまっていたといいますか…すぐメンへラるし、勝ち切れませんでした。

次回も、無料スペースで、過去の鳳東を少し振り返りたいと思います。ちなみに此の上記のアシストと読みは鳳東平均レベルでしょうか。上位勢は当然もっと思考が広くて深いです。

さて本題に入ります。今回は麻雀の技術の中において、特に事前に用意できるであろう、

「序盤の副露判断」

について、多井プロの今季Mリーグの全牌譜から、私が気になった局面の全てを取り上げてみます。読みやアナログ的要素が介入しにくいので、我らガヤが最も批評し易い分野です。関連する手組等も必要に応じて触れます。
(ところで、これを今までしますしますと書き続けて、やらないできました。引っ張り過ぎてすみません。)

早速始めます。なお、画像は超多め、解説は幾分ばかり辛口でお送り致します。ファンの方は見ないほうが良いかもしれません。敬称は略します。(あとTwitterでバズった、松本プロの打8mについても最後に解説することにします)

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