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【万年筆】憧れのカヴェコ

 先日、僕はこんなことを言っていました。

 僕の理性は必死に抗いました。
 ただでさえ、インクを抜いて眠らせている割合が高い我がコレクション。これ以上増やしても扱いきれるわけがありません。

 まあ結果はご想像の通り。僕の理性は声も小さければ自我も儚いので瞬く間に物欲に敗北。翌週なかばには僕の手元に新しい万年筆――カヴェコ アルスポーツシリーズ2021年限定カラー・バイブラントヴァイオレットが届いたのでありました。

 物欲の自制と言えば、春ごろにFerris Wheel Press のペンと新作インクを買おうか迷ったときは踏みとどまれたのですが、すべて売り切れになったあとでぶっちゃけ後悔しましたからね。
 海外の公式サイトから直接購入しようか迷って実際決済画面まで進んでしまうくらいぐらぐらしましたからね。
 そこそこ価格差がきつかったので輸入は諦めましたが、次に購入の機会があったら、少なくともペンは絶対絶対絶対買おうと心に決めました。

 物欲に無理に抗っても後悔するだけで、いいことは無いんですよ。
 それならね、いっそのこと思い切って買っちゃって、その穴を働いて埋める方がよっぽどか健全ですよ。
 だって物が手元にあることで、心の渇きは癒されているわけですから。

憧れの思い出

 数年前、代官山のブングボックスさんで、オリジナルデザインのカヴェコを試し書きさせていただいたことがあります。
 柔らかいペン先に、弾むような書き心地。そして美しいフォルム。
 あっという間に恋に落ちました。
 その時に買えばよかったのに、帰りの電車賃しか財布に残ってなかった僕は購入を見送り、そして――さあ買おうと思った時には、すでにその特別なペンは売り切れていたのでした。

 そして今年。

 同じ過ちを繰り返してはならない。

 その思いで自分を正当化しつつ、僕は財布のヒモをフルオープンにしたのでした。

開封の儀

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 今回はネットショップの『ペンハウス』さんから購入しました。
 一緒に購入したのはインクカートリッジ(ルビーレッド、サマーパープル)と金のペンクリップ、そしてインクカード(ツバメノート)です。

ペンハウスさんはネット経由で購入しても、保証書にきちんと店印を押してくださるので、大層信頼できます。
 保証書には購入店の店印が無いと修理対応などの特典が受けられません。でも、ネットで買うとハンコを押してくれないところがほとんどです。
 だから「万年筆をネットで買うな」と言われるわけですね。
 まあ田舎住なので僕はネットで買いますが。

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 外側の紫のスリーブを脱がせると、現れる金色のかんかん。
 いいですね。とってもおしゃれです。そしてかわいい。
 今まで買ってきたペンは、スリーブも箱も白か黒で、こういう装飾もついていないシンプルな梱包だったので、とても新鮮に感じます。
 ずっと取っておきたくなるデザインです。

 蓋を開くと……

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 はい、かわいい。きれい。美しい。

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 ご覧ください、この金文字のエレガントなこと!
 かつ弾むような筆跡は「僕と一緒に遊びに行こうよ!どこにでも連れてって!」と語りかけてくるようでもありますね。

 アルスポーツはキャップをはめた状態での全長がとても短く軸も細く、小さめのペンなのですが、そのボディにこの小さな金文字が躍る様は、なんともまあかわいらしい。

外見

 開封の儀で外見についてすでに触れておりますが、さらに掘り下げていきます。

 先ほどの画像でお気づきの通り、アルスポーツにはペンクリップがついていません。出っ張りのない、するんとしたボディとなっています。
 そのままでも素敵ですが、僕はクリップが無いとペンを転がしそうで怖いので別売りのクリップを購入しました。

 早速取り付けた姿がこちら。

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 かーーーーっこいーーーーい!!!!

 クリップひとつで表情が全然違いますね!!
 これはもう貴族ですよ。クラヴァットをんだ貴族。

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 ニブは金色。格調高いですね。
 アルスポーツシリーズはすべて鉄ニブなのですが、色はモデルによって銀だったり金だったりします。
 お店によっては、注文時に追加料金でニブの色や素材を変えられるところもありますよ。

 このモデルはペン先を収納した状態で全長107mm、キャップを外しておしりにつけた状態で132mmと非常にコンパクトです。

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 写真は無印良品の万年筆との比較。
 無印良品のペンは長さ太さともに、一般的なサインペンとほぼ変わらないつくりをしているので、比較によく使います。

 こうして並べてみると長さの違いは一目瞭然ですね。
 これで軸が細かったらちょっと扱いづらかったかもしれませんが、アルスポーツの軸径は最大11mm、キャップ径は最大14mmとなっており、これはセーラー万年筆の万葉シリーズよりひとまわり小さいくらいになります。
 万葉シリーズを使っていて違和感がなければ、アルスポーツも問題ないと思います。

 また、アルスポーツは素材がアルミなのでとにかく軽い!
 最近は作文の進みがうまくない時などてなぐさみにペンを磨いており、これがまあ文鎮のごとき重さ(※)なもので、アルスポーツの軽さにはたいそう驚きました。
 この軽さと、アルミのしっとりなめらかな肌触りが非常にしっくりきますね。これを手に持つためだけになんやかや書きたくなっちゃいます。

書き味

 非常に良いです。
 インク途切れなくさらさら書けるのは当然のこと、紙へあたる感覚が滑らかで心地よい書き味です。
 ぬるぬるやとぅるとぅるとはまた違う、しゅるしゅるっとした手触りがあります。

 インクのかすれ、溜まり、ともに無く、実用的な万年筆としての要件を備えています。
 これは日常使いとしてばりばり活躍させたい一本ですね。

 あくまで僕の感覚ではありますが、国産のペンと比べても、同価格帯の金ペンよりバイオレットちゃんの方が書き味が良いと思います。

 鉄ペンゆえに金ペンのような弾む感触は無いのですが、僕のような『つい筆圧強めになっちゃう勢』にはそれがかえって良いですね。うっかりペン先潰しやしないかひやひやせずに済むので。

総評

 いやぁ、カヴェコ最っっっ高ですね!!
 しっとりと手になじむ質感、艶やかかつ気品ある紫、滑らかな書きこごち、どれをとっても僕好みです。大好き!!

 調べてもよくわからなかったのですが、カヴェコのペン先はモデル変わっても共通なのかしら? やっぱり高いモデルかそうでないかで変わる?

 カヴェコの万年筆はアルスポーツ以外にもプラスチック軸のものもあって、廉価ながらそちらもデザインかっこよくって素敵なのですよ。チェスとかとってもいい感じ。
 そちらはペン先どうなのかな。

 少なくとも、アルスポーツは自信を持っておすすめできる万年筆です。
 形が独特なので、万年筆を触りなれない初めての人はどうかなと思いますが、二本目以降なら間違いなくこれがいいです!
 僕みたいに『金ペン>鉄ペン』の先入観ができてしまうともったいないです。ぜひぜひ、質の良い鉄ペンをお手に取ってみてください。

 僕はもうヴァイオレットさんの虜です。
 これから一緒にいろんなところにお出かけしましょうね! えへへ……。

 同時購入したインクについては、別記事で後日紹介します。


注釈

※)文鎮みたいな重さの万年筆について詳しくはこちらをどうぞ
【万年筆】魔法学校の学生証を買った話

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