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とある地方のパン屋さんのZOOMコンサル

先日、地方のパン屋さんのZOOMコンサルをしていました。そのお店は複数の従業員を抱えていて、店舗販売、移動販売、道の駅などへの卸の売上を中心に、多い時で月に300万円ほど売り上げているのですが、人件費、材料費、リース代などの経費がかなり多く、結果として赤字になってしまっている。という状態でした。

今回は、どのような問題点を見つけ、どのようなアドバイスをしたかを書いていきます。

問題点①利益率が低い

まずパンのラインナップを見せてもらった際に第一印象で感じたのは、パンの値段が安すぎるという事でした。

おそらく冷凍生地を使用しているので、値段を上げにくいと感じていると思うのですが、冷凍生地は人件費を減らせますがベースの原価は上がってしまいますので、パンの値段を下げる理由には出来ません。

値段をいきなり上げることは難しいので、ここは長期的に少しづつ上げる事を目指す。という話になりました。

また、全ての値段がお手頃価格である為、単価の高いラインナップをもう少し増やすべきであると思いました。

お店来るお客さんは、たまに来るお客さんからファンの方までいると思いますが、ファン向けの高単価商品が無く、お金を落とせる人がお金を落とせない状態になっているので、これは非常に勿体無いと感じました。

問題点②コストが多すぎる

・店舗営業7:00~15:00(長い時で17:00)
・移動販売(スタッフが車で販売)
・道の駅などへの卸(場所代として売上の20%を取られる)

と、売上のメインはこの3点で、ざっくりですが店舗2:移動販売5:卸3くらいの割合で、店舗売上が少なく、移動販売が要となっている状態です。

卸の売り上げなのですが、場所代で売上の20%を取られてしまい、そこに対してパンの値段の割増もしていない状態でした。これでは利益を上げることは出来ません。

なので卸のパンの値段を割増にするか、もう卸をやめてしまうという判断をするべきだと思いました。オススメしたのは、卸の中断です。

パンの単価に対する売上をみると、かなり多くのパンを焼いている状態であることは予想出来るのですが、パンの製造量自体を一度見直し、製造にかかる人件費を減らしていく方向に持っていくべきだと感じました。

また、現状は店舗の売上が多くないのに、朝7時からオープンしている為、スタッフの人件費がかかります。大体時給900円くらいでも、一日2時間レジスタッフの人件費を減らせれば、週5日の1週間で9000円減らせます。

9000円の利益を上げようとする場合、こちらのお店ではかなりの量のパンを売らなければいけない計算になります。なので、総合的に見て今一番大事なのは業務全体の縮小である。という事です。

その為、店舗の営業時間を7:00〜ではなく11:00〜に一度変更し、スタッフの人件費を抑えるという提案をしました。店舗の営業時間を減らすと売上も下がるように思えますが、実際はそこまで大きく減る事はありませんし、現状の売上では下がった所で影響は少ないはずです。

問題点③商品への割り切りが出来ていない

こちらのお店は、現状半分が冷凍生地、半分がミキサーで仕込んでいる状態です。ミキサーは30コートミキサーが一台で、多くの量を仕込める状態ではありません。(元々はほぼ冷凍生地だったそうです)

菓子パンや惣菜パンは冷凍生地も使用していますが、ミキサーで作っている生地もあります。ここは、菓子パンと惣菜パンに関しては割り切って全部冷凍生地にするべきだと思いました。

逆にミキサーで仕込む生地は、こだわりのハード系のような冷凍生地で再現しにくいものと、高級食パンのような単価の高い商品に絞るべきです。

その中で提案したのはカンパーニュの生地にナッツやドライフルーツを多く入れた商品です。クランベリーなどのドライフルーツ25%、ナッツ25%くらい入れると、市販のパンではなかなか出会う事ができない贅沢なカンパーニュになります。

[カンパーニュのレシピ一例]
準強力粉80
全粒粉20
塩1.75
サワードディレクト(発酵風味料)5
ドライイースト0.2
加水70
▼クランベリー25・くるみ25
【L5M2で混ぜた後、具材混ぜ込み】
捏ね上げ後、30分おきにパンチ2回。30分放置後に冷蔵庫でオーバーナイト

作業工程も、ミキサーで10分程度で仕込め、オーバーナイトで朝に分割して丸めて焼くだけ。という流れなので、手間も多くありません。4枚差しのオーブンを所有しているので、300g程度でしたら一度に24個ほど焼くことが可能です。(小麦粉にして4kg仕込み程度)

その為にはバヌトン(発酵カゴ)が24個必要になります。サイズはばんじゅうに6〜8個入るサイズがオススメです。(バヌトンを使用しないやり方もありますので、それでもいいかもしれません)

バヌトンをしっかり揃えるとここに経費がかかってしまうのですが、需要が確認できるまでは100円ショップのプラスチックのザルでも十分です。クープを入れるとそれっぽくなりますので、需要が確認出来てからバヌトンを24個購入する事を決めてもいいと思います。

作業の一例としては、ドライフルーツ入りのカンパーニュを5〜6kgで仕込み、300〜350gで24個焼成、余った生地は100gに分割して天板に乗せて小さい状態で焼くと、これもまたそれなりに単価の取れる商品を短時間で作ることが可能になります。(クリームチーズなどを入れてバリエーションを増やすことも可能です)

解決策❶生産性を意識する

生産性とは、以下の式で表す事ができます。

生産性=成果(利益など)/コスト(金銭的・時間的)

生産性を上げるには、成果を多く出すか、コストを削減するかの二択になります。この時に一番効果を出しやすいのが、成果をなるべく維持したままコストを大きく下げる事です。

利益を上げるために売上を上げなければいけないのですが、販売価格をいきなり大きく上げる事は難しいので、現状はコストをかけずに単価を取れる商品をラインナップするという方法が一番合理的です。

そして現状ではコストが大きくかかってしまっているので、無駄なコストを削減すると、生産性を両面から向上させる事ができます。

また、広告や宣伝などに使える写真が少なかったので、一度時間をとってパンの写真を撮る事をオススメしました。これは一度撮ってしまえば、Googleマップやインスタなどの更新時に使い回せるので、少ないコストで成果を上げる手段として効果的です。デジタルデータは生産性が高いという事を覚えておくと良いです。

解決策❷人気商品を作り、店舗に人を流す

卸を削減した分、店舗へ人を流すのが一番理想的な形です。現在は店舗の売上が少ないのでイメージが出来ないそうですが、ここでしか買えない人気商品を作りあげ、店舗の売上を移動販売の売上に近づけるくらいのつもりで取り組むべきです。

ただし、すぐにそんな理想的な状態にはならないので、まずは営業時間を減らしコストを削減し、売上の維持を目指します。

卸の売上が全部店舗売り上げに置き換わるだけで、今まで取られていた卸の手数料がそのまま入ってくる計算になります。それだけで月に20万円弱の利益になる計算です。

それを促す為には人気商品は必須であり、宣材写真、キャッチコピーなど、時間をかけて考える価値が大きいです。ここはオーナーさんの頑張りどころです。

解決策❸変化に慣れる

全体的に会話をしていて思った事は、変化する事への抵抗感です。これは誰しも持っているので僕も気持ちはとても分かるのですが、自分の事業を向上させていくには変化に慣れるということがとても大事になります。

僕も最初の4年はずっとギリギリで、全然成果が出ませんでした。成果が出るようになったのは、意識して変化していってからだと思います。

変化に慣れると、営業時間を減らすとか、営業日を減らすといったことに抵抗感がなくなります(ゼロではありませんが)。身体もメンタルもボロボロになり、営業時間を初めて1時間半減らした時、いつも店にいる時間にお風呂に入っている。という事に感動したことは未だに覚えています。

宣伝:現在電子書籍を執筆中です

最初の店舗を9年やってみて、その間に起こった失敗、トラブル、考え方の変化などを1冊の電子書籍にまとめています。もう原稿はほぼ出来上がっていて、書籍内のイラストや表紙を待っている状態です。2月の上旬には販売出来ると思います。

それと、自分のお店のレシピを書いた電子書籍も執筆中です。こちらも8割完成しているので、2月中には出せれば良いなと思っています。またこちらでも宣伝しようと思います。

今回の記事は一部有料にしようか迷いましたが、とりあえず無料で出してみます。もし良かったら、電子書籍も合わせてご購入いただけますと幸いです。(コロナ隔離で新店舗のオープンが遅れて、2週間分の売上が飛びました…)

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