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使い続けると危険な便秘薬

前回は快便のコツをみてきました。
とはいえ、すでに便秘薬を使っていてある程度大丈夫だという方もいるかもしれませんので皆さんが使っていて特に要注意の便秘薬を2つみていきましょう。
1つ目は酸化マグネシウムです。

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酸化マグネシウム(塩類下剤)
マグネシウム製剤は安全で日本で最も使用されています。市販の薬も多く使用した事がある方も多いのではないでしょうか。重炭酸塩となって浸透圧維持のために腸壁から水分を奪い、腸管内容物を柔らかくし緩下作用を示します。ただし①高齢者の方②抗菌薬を使用する方は要注意です。
①高齢者の方は腎臓の機能が落ちている方も多く、マグネシウムの排泄がうまくいかず、血中のマグネシウム濃度が高まり、不整脈などの心血管イベントを引き起こしてしまいます。初期症状としての嘔吐・徐脈・筋力低下・傾眠などみられたら中止にする事が大事です。
②抗菌薬:テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬とマグネシウムが難溶性のキレートを形成し吸収阻害をしてしまいます。飲み合わせないようにしましょう。
そのほかにもビスホスホネート製剤やビタミンD3製剤と相互作用を起こしてしまうので病気になった場合はチェックが必要な薬剤です。安全性から以下のモビコール (浸透圧性下剤)が無難でしょう。ただし酸化マグネシウムが6円/錠に対し、モビコール 84円/袋のため長期連用にはやや薬価が高いのが難点です。

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2つ目はセンノシドです。

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センノシド
よく使われる下剤の一つです。大腸で腸内細菌によりレインアンスロンを生成し、大腸の蠕動を起こす薬剤です。薬価も5円/錠でかなり手頃です。ただし、この薬剤の最も注意すべきことは連用で効果が減弱することです。薬を使用しても便秘が続くことになってしまいます従って使い方としては頓用に留めておくことが大事です。

便秘を治すために以下の手順を守りましょう

1st(薬に頼らない)
①運動する
②食物繊維をとる
③朝食後の大蠕動に合わせて排便する習慣をつける
これらを行うようにすれば、おおよそ便秘は解消されます。

2nd(弱い薬を使う)
①便秘を引き起こす薬剤をやめる
制酸薬・抗コリン剤、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、麻薬(モルヒネ製剤、リン酸コデイン)、咳止め・風邪薬、喘息の薬(気管支拡張剤)があります。
②下剤を使用する
・浸透圧性下剤:ポリエチレングリコール(モビコール )、ラクツロース
・上皮変容薬:ルピプロストン、リナクロチドは小腸からの水分分泌を促す

3rd(強めの薬を使う)
刺激性下剤:センノシド、ビサコジル 頓用で使用する事
消化管運動賦活薬:ガスモチン 連用で効果を発揮する

高齢者にお勧めの便秘薬
高齢者の方は前述の通り、腎機能が悪くなっている事が多く酸化マグネシウムを漫然と飲むことはお勧めできません。安全なモビコールも薬価が高く、お勧めし難いものがあります。使用期間が長くなりそうな場合は麻子仁丸(ましにんがん)をお勧めします。漢方薬の中では珍しく質の高いエビデンスを持つ薬剤であり効く事が証明されています。腸管の蠕動を刺激し、油性成分で便を滑りやすくしてくれます。薬価も7円/袋であり、連用しても負担になりません。

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参考
1)便秘薬との向き合い方
2)高齢者のための漢方診療

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