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都知事選、各候補者の医療政策を徹底比較

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2020年7月5日に東京都知事選が行われます。
コロナウイルスへの対応もあり、十分な選挙活動が出来る状況ではないため小池ゆりこ氏が優勢となっていますが、都知事選は今後4年間の都政の方向性を見ていくことになり、仮に落選したとしてもその候補者の評価された政策は当選者によって自身の政策に取り入れる可能性がありますので丁寧に政策の評価はしていきたいと思います。ここでは私の専門である「医療」の分野を比較していきます。

今回の選挙では22人が立候補しています。
そのうち医療政策を出しているのは16人です。
さらに検討に値するだけの医療政策を出しているのは5人でした。(検討に値しないと判断した各候補者の政策と簡単な評価コメントはページ下部にまとめてあります)
主要な5人は山本太郎氏/小池ゆりこ氏/小野たいすけ氏/宇都宮けんじ氏/立花孝志氏です。1人ずつ見ていきます。

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山本 太郎
【政策】
PCR検査・隔離・入院体制を拡充 都立病院の独立行政法人化は中止
【評価】
△:医療政策としての効果は薄い。
すでにPCR検査は十分に行えている体制はあり、ホテルの協力などもあり隔離や入院体制はかなりバッファを持つことができている。独立行政法人を中止にすることだけで感染爆発に備えることは不十分。むしろ独立行政法人化した後にも助成することで効果的な対策を打てることも多いだろう。総論としてcovid-19対策には場当たり的でマネジメントする意思が薄い。またcovid-19以外にも重要な医療政策に触れられていない。
参照公式HP:https://taro-yamamoto.tokyo/

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小池 ゆりこ
【政策】
第2波による感染拡大の防止・感染症対策の強化
東京版CDC(疾病対策予防センター)の創設/PCRほか各種検査体制の強化/重症・軽症患者の医療体制の整備/病院・医療従事者へのサポート強化/救急搬送体制の強化/マスク・消毒液などの衛生資材の備蓄/ワクチン・治療薬の開発支援強化/空き病床状況などの感染関連情報の把握・公開の強化/オンライン診療の拡大/保健所業務の効率化・デジタル化、緊急時に備えた都と区市との連携強化/人工呼吸器など配備支援/専門医療機関のあり方検討/医療機関・社会福祉施設における感染防止策の強化/地域の医療機関への支援・連携の見直し強化/都立・公社病院改革を活かした感染症医療体制の充実/疫学的調査の強化、組織体制強化による感染症対策全般の再検証/国と連携した水際対策の強化/高リスク業態への働きかけの強化(ガイドライン作成・対応への支援など)/都民への関連情報の提供体制の強化
感染症と風水害・地震などの複合災害への対応の強化・災害対策
避難所の感染拡大防止のための各種資材の配備/ドクターヘリの強化
「予防」と「共生」のアプローチ強化
免疫力強化:フレイル予防・EIM(「運動は薬」)の強化(特に在宅や少人数の場)/生活習慣の改善:禁煙治療など/がん対策の戦略的展開(早期発見・早期治療、緩和ケア)/認知症・介護・病気と仕事・社会活動との両立:柔軟な働き方と夜間休日診療体制の強化、ケアラーズカフェの整備など
【評価】
○:やらなければいけない必要事項は網羅している。
現都知事であり今まさに取り組んでいることも多いだろう。ただし、現在やっていることが問題を解決できているかは別。例えばがん対策のがん検診なども推進しているものの半数も受診できていない。目玉対策の一つの東京版CDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国の感染症対策の総合研究所)を設立するというのもあるが、新型コロナウイルスや新興感染症対策に対して行政機関に干渉されず一貫とした姿勢で調査・提言出来る機関が必要ではあるものの、その理解や実行性はこの4年の都政を見るとやや懐疑的。covid-19前からSARS/MERSや新型インフルエンザを経験していても設立できていなかったのだから。
参照公式HP:https://www.yuriko.or.jp/policy

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小野 たいすけ
【政策】
コロナ禍の困難を乗り切る!
新型コロナICUセンターを整備し、重症患者への十分な対策/PCR検査については、医師が必要と判断した全員が、速やかに受けられるように機器と体制を拡充/大学、研究機関等と連携し、新たな感染症発症動向指標の開発
誰もが安心・安全で心やすらかに暮らせる東京へ
災害に強いインフラ、社会システムを副知事時代に発生した熊本地震の経験を生かし再構築/自身のがん患者としての経験に基づき、がん検診受診率の向上やがん患者の就労継続支援/子宮頸がん(HPV)予防ワクチンについて、正しい知識の周知を徹底し、接種の促進と公費助成の対象年齢外となった都民への助成
【評価】
◎:具体的で適切な対応が記述できている
各候補者が勘違いしがちなPCR検査もちゃんと有効な使い方が出来るように感度・特異度などの概念を理解しているようである。またがん対策も自身の肺腺癌を発見・治療した経験から早期発見の意義を理解し、力強く進めていく意思を感じる。子宮頸がんワクチンは、安全性や有効性を理解するのに科学的な思考力を必要とし、また言及した場合は根拠なき執拗な批判に晒される危険があるので多くの政治家が言及したがらないが、そのせいで1万人/年間の女性が子宮頸癌となり子宮摘出などの治療を必要とし、3000人/年が死亡している。この問題に(身の危険があるにもかかわらず)自分の名前を出して取り組もうとしている姿勢は評価出来る。医療政策として範囲こそ不十分だが、一つ一つの対策に対して科学的に判断し、意欲的に推進する能力は現状の政治家で稀有な存在であるため◎とした。
参照公式HP:https://ono-taisuke.info/policy/

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宇都宮けんじ
【政策】
新型コロナウイルス感染症から都民の命を守る医療体制の充実
PCR検査体制の強化/病院や保健所、医療従事者に対する財政支援の強化/病床、人工呼吸器・ECMO(人工肺装置)・マスク・防護服などの医療器具の充実/都立・公社病院の独立行政法人化を中止するとともに、これまで以上に充実強化を図る
【評価】
△:内容としては山本太郎氏と同じ。現状の対策で効果は出てきている。新興感染症やがんなどの重大疾患へのマネジメントの視点が欠けている。
参考HP:http://utsunomiyakenji.com/policy

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立花孝志(公式HPがないため写真は本人Twitterより掲載)
【政策】
新型コロナウイルスは正しく恐れ、有効な対策をとり自粛は解除
大麻解禁
低容量ピルで女性の働き方改革
出会いを斡旋して健康寿命世界一
【評価】
△:内容はユニークで、科学的な視点もあるが、都知事としての感染症対策や医療政策としては内容が薄い。
この政策は全て堀江貴文氏の著書「東京改造計画」からの引用であり、他のホリエモン新党の候補者(服部修/さいとう健一郎)と中身は同様。感染症対策を適切に対応できる体制を構築した後にこういったことに取り組むことは歓迎だが、当選したとしても本人たちの意思ではなく実行性も薄いだろう。

主要な5人の医療政策の比較でした。
以下は検討するに値しないと評価した政策です。

桜井誠
【政策】国民皆保険の維持、診療を受けにくい地域の医療充実、臓器提供 
【評価】△〜X:covid-19関連なし。必要なことではあるがピントがずれている。
関口安弘
【政策】屋外の運動を推奨せよ
【評価】X:covid-19に対して無策。
ごとうてるき
【政策】社会保障は全部無料・全国共通ネットカルテ
【評価】X:真面目に考える気がない。また共通で見られるカルテは必要だが都だけの話でない。
沢しおん
【政策】適切に指標の再設定や適切な運用
【評価】X:何か言っているようで何も言っていない。
石井均
【政策】診療報酬の総額を引き下げ、精神病院の入院日数を1カ月以内、処方薬を減らす方法を検討、ジェネリック医薬品の使用率を100%にする規制、公的医療保険を全て廃止・医療目的税を新たに設定、財源は企業の内部留保と個人金融資産、一律3割負担、尿素薬で新型コロナウイルス の治療と予防ができる。
【評価】X:お金のマネジメント一辺倒で疾患をマネジメントすることができていない。コロナウイルスの薬に関しては普通に嘘をついている。
長澤育弘
【政策】リフィル処方箋、零売できる医薬品の増加、コロナウイルスや新型インフルエンザウイルス検査のドラッグストアでの検査OK、アフターピル販売OK
【評価】X:薬局or自分のビジネスのことしか書かれていない。
牛尾和恵
【政策】オンライン診療、病院の混雑状況、ルート、配車(病人専用タクシー)、物資の状況、名誉欲のある人の受賞、感謝の声、口座番号(ネットで宣伝、ニュースでも上映)
【評価】X:支離滅裂
平塚正幸
【政策】コロナはただの風邪
【評価】X:無策。日本の対策と世界の状況が俯瞰できていない。もし「コロナ」が新型コロナウイルス のcovid-19ではなく普通の風邪のコロナウイルスだとしたら正しい見解だが、都知事選で主張することでもない。
ないとうひさお
【政策】コロナは検査を増やす
【評価】X:何も言えていない

以下の候補者は医療政策に言及なし
七海ひろこ/込山洋/竹本秀之/西本誠/押越清悦/市川ヒロシ

*各候補者の主張は東京都選挙管理委員会HP「東京都知事選挙立候補者一覧」にある「立候補者のウェブサイト等のアドレス」に掲載されているwebページまたは同ページ「選挙広報」より確認したものを掲載しています。

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