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prologue:君はまだあの星を見ているのか

私は誰なのか

 榎本八千代です。ただのおばちゃんです。人様に紹介される時に「こちらは写真家の。。。。」といわれてしまうと「いやいやいや申し訳ありません、写真家なんておこがましい、(卑屈)ただのおばちゃんです。あ、強いて言うなら”主婦写真コレクターです♡」と土下座する勢いで否定したくなる。だって、写真なんか撮ってない。カメラもレンズもほぼ持ってない。2年前に社会人向けの通信学部の美大の写真コースを卒業して、東京(レンタルギャラリー展:自費)と大阪(同人ギャラリー企画展)で個展を開催して、コマーシャルギャラリーのグループ展(企画展)に出て、台湾で写真フェア(共同出展で自費)にでて、この前はあるコンペにファイナリストに残ったけど、雑誌に掲載されたこともない。依頼仕事も受けたことない。ましては日本のメーカーギャラリーで個展を開いたこともなく、日本のメジャー写真コンペに受かったことも入賞したことも、アワードもない。どこからが写真家なのか、いつから名刺に"photographer"と書いていいのか、教えてくれ。頼む誰か教えてくれ。

女性ではない男性でもない

 閉経しました。この前。確実に確認しました。血液検査で。別に、全世界に向けてこんなことを発表しなくていいんだが、1967年生まれの52歳。 まあ少し早い閉経であると思いますが(そうでもないですかね)予想はしてました。多分、閉経は早いだろうな。ずっとそう思ってましたよ。どうしてそんな風に思っていたかというと、30代後半からずっと不妊治療をしていました。ステップアップしていき、最後は高度体外受精をずっとおこなっていました。顕微授精をした卵子を子宮内に戻し、卵子を採集するために、かなりの量のホルモン治療(注射、服薬など)を受けておりましたね。

 数年程ずっとおこなって、何回か着床してもすべて流産してしまいましてね。最後には子宮外妊娠になり、生命の危機まで経験して、やっと治療を卒業できました。だから、多分閉経は早いだろうなと思ってました。それから治療を卒業してから毎月のように生理は止まらずきてました。しかし、(もう子供は産めないくせに、役に立たない子宮なんか、卵巣なんかいらない)と呪いのように憎々しく思いながらトイレに流れる鮮血を見ていたのです。

 数ヶ月生理がこなくなって、体調も悪くなって、(更年期障害だな)と自分で自覚して、血液検査でやっと数値的に確認して、医者に残念そうに「終わってますね」と言われても 別になんとも思わなかった。だって心からこう思ったのですから

(ああ、やっと解放された)

ただ、思った。子宮こそあるけど、ポンコツで使い物にならない。卵巣はもう停止してる。だとしたら

私は女でもない。男でもない。じゃあ自分は何なんだろう?

「欲望の形」の女性版ってなんだろう?

 やっと写真の話に入ります。山本渉さんという写真家がいます。(ルックスはミュージシャンの浮雲に激似)そして、彼の作品の代表作の一つに「欲望の形」という作品のシリーズがあります。

男性用の自慰道具であるオナホールの内部に石膏を流 し込み、型取りした立体物を被写体としたモノクロームの作品群です。一見して植物のようにも見える有機的な造形や、生物工学から着想を得たスパイラル状のもの、果てはアニメのキャラクターを模した造形など、凄まじいバリエーションを持った「欲望の形」は、見るものに新鮮な驚きをもたらします。(2014年NADiff HPより http://www.nadiff.com/gallery/yamamotowataru.html

 この作品の凄さに感動して、(いつかこの方に会いたい)と思って毎日を過ごしておりましたが、簡単に会えました。ええ、通ってた大学の自分の卒制のゲスト講評の一人としてきていたのです。感激のあまり、私は大きな声で本人に言っておりました!「あ、あの山本渉さんですか!あの有名なオナホールの作家さんですね!!!!あえて光栄です!」 間違っていなかったと思う、、、いや、すべてのことが間違ってたかもしれない。 山本渉さんは、困ったように笑っていた。。。。。。。。。            あの時は申し訳ありません。。。。ううう

 で、何が言いたいかというと

この作品の女性版というのはどういうものだろう?

 そんなことをずっとぼんやり思ってました。ディルド?いや、違う気がする。女性側の象徴として、様々な種類があって、そして、凝っていて、下手をすると美しく複雑な模様のモノはなんだろう?あの作品のように、「男性」を象徴するものと同じもので、「女性」を象徴するものって     そしてとてもリアルなものって、なんだろう? ずっと考えてました。

やっと二つのことがつながる

 つまり、閉経するのが、女性として体の機能が終了として、何か違うところへいくのだとしたら、何がもう必要ないのか?ふとそんなことをぼけっと考えた時に、やっと頭の中でリンクしたのでした。

「生理用品ってもういらないよね」これか!

 私たち女性は、初潮を10代で迎えてから、ずっと毎月毎月(妊娠中は除きますが)1回、数日間 体から流血していて、そしてトイレでナプキンやタンポンを替えてきて、太ももの間に羽根つきのテープを不器用に挟み込みながら、この白やピンクや様々のナプキンの模様やらを 太ももの間においてきたわけですよ。何十年間も。ずうっとずっと、あまり多くを人様に気がつかれないように。こっそりと。女性同士でもあまり話してはいけないようなタブーみたいな気がして。

これを写真を手段として何か表現としてできないかな

そう思ったわけですよ。photographerとして名刺に書けるかどうかわからない私ですが、そのために写真をやってるわけですから 手段として。また、作家ステートメントとして「喪失の可視化」を持ってる自分として、まあ理由もあるわけです。「女性としての何か」を喪失しているわけですし。

1枚も撮ってない作品シリーズ

 今の状態は「任せて、全部書き上げたら、絶対に直木賞受賞確実!」という状態ですが、「まだ一文字も書いてない」という状態で完全な詐欺まがいです。写真的に言えば「任せて、作品をまとめたら木村伊兵衛賞確実!」という感じでしょうか。まだ1枚も撮ってないけど。。詐欺まがいじゃなくて完全に詐欺ですが。。う

 この話を写真研究者である小林美香さんに話したら、かなり面白がってくれた。「撮ったほうがいい」そして、つい最近、あった時に私は進んでないプロジェクトの言い訳に(本当)こう言ってた。「すみません、まだどうやって撮っていいのかわからず撮影してません まだまだ、撮影の前に勉強することが多いです。」どこの詐欺まがいなんだ。ああ詐欺か。ううううううでも、美香さんは笑ってこう言ってくれた。

「別に私に謝る必要はないけど、いろいろと思考の準備が必要であるなら(シャッターを押す前に)、その経過を公開したら? 何を考えて、何を勉強して、何をしようとしてるのか? できたものをもちろん、結果として発表することも大事だけど、榎本さんはその経緯を公開することにも、価値があるような気がするよ。私もそしたら、一緒になんかやれるし」

 ので、noteに公開することにした。

 「閉経した」とか全世界に発表する必要な全くないのだが、、、その理由がコレである。小林美香さんも気が向いたら、この投稿を読んでなんか書いてくれるらしい。今後も、日記みたいにこの作品についてのことを書いたり、したいと思う。皆さんは、そおっと遠くから見守ってくれたり、同じ経験値の話をしてくれたりと、いろいろ参加して欲しい。(少したったら皆が参加できるようなプラットフォームも考えます)そして、作品として結局どのようにランディングするのか、着地できるのか、そのまま飛んでいってしまうのか?見届けて欲しい。

カバー写真は、ある会社のナプキンにある星の縫い目(というかミシン目みたいなおさえがあるじゃん。)我々女性陣はずっとこの星を見ていたのだよ。ベイビー

48歳からの写真作家修行中。できるかできないかは、やってみないとわからんよ。