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生存確認

 「Live on the SEAT」ツアー無事終了、本当によかった! お疲れ様でございました。このご時世に、「やりたいことやってるだけです」とか言いながら私たちの元へ音楽を届けに来てくれてありがとう。そして眉間にしわを寄せながらも頑張ってくれたスタッフの皆さん、感染予防に尽力してくれたダスキンクリーンスタッフの皆さんにも感謝です。着席ライブを実現したファンの皆様にも、心からの拍手を。UNISONのファンはやっぱりみんなステキな人ばっかりだ! 大晦日配信ライブも楽しみ! ツアーが始まったばかりのころに書いたものです。完走を寿ぎ再投稿させていただきます。

 世界一カッコイイと思うバンドがいる。

 UNISON SQUARE GARDENというバンドだ。

 出会ったのは、一大ブームになったヒーローアニメのOP。その少しあと、わたしの大好きなマンガがアニメになり、そのEDを担当。耳触りのいい、カッコイイ、でもとてもきれいなメロディの曲たち。

 ちょうどそのころ、ライブにはまった娘1号がレンタルしてきたCDの中に、そのバンドのものがあった。便乗して録音させてもらって聴いた曲はどれも聞き心地、ベネ。娘1号は自分の趣味に母を巻き込み、あわよくば理解とライブ遠征の許可を得ようと、私を彼らのライブに連れていってくれた。

 並んだ入場待ちの列の年齢層から自分が明らかに突出している。「なんか場違いな気がする」と言った私に、娘1号はこう返した。

「でもさ、この人たちはいつも『俺ら好きなように演奏して楽しむので、みんなも自由に楽しんでってください』って言ってるらしいよ(彼女も初参戦だった)」

 そう、そのライブで彼らは本当にそう言った。勉強不足で知らない曲もあったけど、出会ったあの曲もなぞってくれたし、ステップも踏んでくれた。すごく楽しかった。もっと知ってる曲が多かったら、きっともっと楽しいだろう。たくさん覚えて、また来ようと思った。

 こうして私は彼らの音楽のとりこになった。

 彼らの魅力を話すと長くなってしまうのだけど、歌詞もメロディーもアレンジもヴォーカルのハイトーンな声も全部、聞いていて心地よい。ロックだから激しい曲も多いけど、しみじみと聞ける曲もたくさんある。私は特に歌詞が好きだ。心をえぐるような激しいもの、「ん? 空耳?」と聞き返したくなる、言葉遊びのようなもの、物語の情景が浮かんでくる抒情的なものがあれば、「(好きに)なっちゃう」「(なんか)やっちゃう」という、茶目っ気たっぷり、かわいいものもある。実に多種多彩。楽しい。時々、泣ける。曲がつくともっと泣ける。誰が、30代男子の書く曲で、親の気持ちをうたわれて、共感して泣かされると思います? しかもこれ、シングルのカップリングの曲なのだ。アルバムもカップリングも、本当に、捨て曲無し。

 そしてライブ。毎回工夫を凝らした驚きのあるセットリストで、CDと変わらないハイスペックな生歌が、MCなしで1時間半、ひたすらくりだされる。演奏している彼らはとっても楽しそうで、見ているこちらもとっても幸せになる。Perfectly Euphoria。なんという多幸感。1度経験すると癖になる。そして次のライブを待ちわびるようになるのだ。

 しかしこのコロナ禍。彼らだけでなく、全てのライブ活動は自粛を余儀なくされた。きっと落ち込んでるだろうな。ライブ大好きだもんな。ブログによるとやっぱりそうだったらしい。

 それでも音楽を届けるために、彼らは考え、工夫を凝らし、オンラインライブをしてくれた。いつもと変わらぬ演奏と熱量。スマホの画面越しに、大騒ぎしながら参戦した。3回開催された(1回はお友達や先輩を呼んでのフェス形式だった)オンラインライブはどれもとても楽しめたけれど、でも、最初のライブでカメラがひとりも聴衆のいない客席を映した時、無性に寂しくなった。すごく楽しいよ、このライブを届けてくれてありがとう!という気持ちを直接彼らに伝えられないことが口惜しかった。

 そんなある日、ファンクラブ会員の娘から「メール来た!」とLINEが飛んできた。「Live on the SEAT」……このご時世に⁈ たくさん悩んで、たくさん考えて、彼らはライブツアーをやることにしたのだという。国のガイドラインに沿って、可能な限りの感染防止策を講じて。すごい、英断! 採算も心配(余計なお世話)。きっとどこかで逆風も吹いているに違いない。でも、やるというのならば我々ファンは全力でそれに応えねばなるまい。行く。もちろん行く。ガイドラインを守って。その日まで、かの病にかからないよう気をつけて。

 そしてついにその日はきた。参戦するのは初の「1日2公演」の2回目。あの演奏を、いつもより短い時間とはいえ、1日2回やるって、本当に大丈夫なの? しかも着席、マスク着用、声出し禁止のロックバンドがどんなことになるのか……わくわくと不安の入り混じった気持ちを抱えて会場入り。検温、チケット確認、消毒と徹底した感染対策の中、いよいよ開演時間。

 あれ、いつもの始まり方じゃない。アカペラで始まったその曲は、「ありがとう」というフレーズが印象的なバラードで、ワンコーラス謳ったところで、真っ暗な会場の幕が上がり、ステージの上にいつもの3人が浮かび上がった。来てくれてありがとう。そう言ってくれている(と思った)。もう、涙がボロボロこぼれてきた。私たちもみんな、逢いたかったんだよおおおお! 来てくれてありがとう!

 ――彼らはいつもと何も変わらず、同じ熱さでライブを駆け抜けた。1曲目で流れた涙は、2曲目がとびきり楽しくてあっという間に引っ込んだ。そのあとはとにかく、席に座ったまま曲に合わせて、モンキーダンスみたいなかなり怪しく激しい動きで踊りまくった。うるさかったと思う。両隣のお兄ちゃん、すまんかった。折々に挟まれる穏やかなバラードでは、胸の前で手を組んで、乙女のポーズで聞き入った。完全に、変なおばちゃんである。しかし、人の眼は全く気にせず、全身全霊でライブを満喫した。

 そして。

 ライブが始まる前、会場を見回していた時、見つけた方。シルバーヘアの品のいい、おしゃれなマダム。たぶん私よりもお年上。お孫さんの付き添いでいらっしゃったのかな? なんて思った。そしてラスト前。宇宙まで飛んでいけそうな、楽しくてポップな曲で踊りながらふと、そちらの方に目をやった。――マダム、めっちゃノってる⁈ シートから身を乗り出して、楽しそうに体を動かしている。もしかして、ガチのファンですか⁈ 遠目にだったけど、たぶん満面の笑顔だったような気がする。

 そして気づいた。もしかしてあのマダムは、「着席ライブ」だから来ることができたんじゃないだろうか、と。

 ライブは楽しいし行きたい。だけど、ライブハウスでの参戦は、正直身体にこたえる。開演までずっと立って待っていると、始まる頃にはだいぶ体力を使い果たしている。ホール公演でも、始まるまでは座って待っていられるけど、始まると若者たちみんな立ってしまうから、立たずにはいられない。

 今はまだ聞きに行けるけど、あと何年か経ったら、私も参戦出来なくなるかもしれない。おんなじように「体力的に……」とか、「若い人たちのノリについていけなくて……」と、ライブをあきらめている方が来れる着席ライブ、いいんじゃないかな。彼らの音楽は若い人たちだけのものでなく、みんなのものだから。ぜひ、またやってください。ちょっと遠くても絶対行くから。

 最後の曲のピアノのイントロが流れ始めた。多分一番好きな曲。ずっとライブで聞きたかった曲だ。何度目かの涙がぽろぽろ出てくる。

 さよなら さよなら ここからまた始まってく

 ありがとう ありがとう また会えるまで 会える日まで

 ステージの照明が絞られて、ベースとドラムの彼らがはけてゆく。ギターの彼が歌い終えて、最後に一礼して照明が消え、場内が明るくなった。みんなが余韻をかみしめながら、粛々と案内に従って帰り始める。不思議な一体感。満ち足りた気分。席を立ち、会場を後にしながら、心の中で繰り返した。「ありがとう、そしてありがとう!」

 素晴らしいライブだった。音楽は不急かもしれないけど、断じて不要ではない。こんなご時世でも、ライブができることを、彼らはみせてくれた。新しい時代の新しいかたちのライブが、ここから始まるのかもしれない。その目撃者になっているとしたら、なんだかわくわくした。2回とも参戦した娘は、そのあと自宅まで2時間運転して帰った(もちろん次の日は仕事)。23:00ごろ届いたLINEは

「夜な夜なドライブ終了しました」と『控えめに言ってサイコー‼️』のスタンプだった。

 うん、ほんとサイコーだったね。

 そして最後に、明るくなったステージに駆けられた、彼らのロゴの上に赤で書いてあったメッセージ。

「SEE YOU NEXT LIVE!」

 いつも満席で立見席まである彼らのライブだが、ガイドラインに沿っているとはいえ、今回は空席があった。悩んで不参加を決めた方もいたのだろう。でも大丈夫。彼らはまた来てくれると約束してくれた。だから安心して参戦できるときになったら参戦したらいい。それまで皆様、お互いに元気でいよう。そして彼らにまた魅了され、次のライブを楽しみに待とう。

君を追いかけるよ その未来まで

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