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ねこのはなし〜お注射キライにゃん

 ニチアサが終わった。

 さて、それでは始めるか。

 人手が必要なのでこの日を選んだ。娘1号も帰省中で家族フルメンバー揃っている。

「おのおのがた、やるよ。万事抜かりなく」

「おお」「心得た」

「ではかかれ!」

 我が家には5匹の猫がいる。家族と同じ数までなら飼ってもいいかなと思ってここまで増やしたけれど、娘1号が一人暮らしを始めたので、猫の方が多くなってしまった。以下、ご紹介をば。

 ◆長女モカ(モーちゃん):のんびりおっとり。しかし食い意地の塊で、隙あらば人間の食べ物を狙う。三角コーナーもあさる。彼女だけペットショップから来た。面倒見がよく、後輩にゃんこ全員の教育係。全員に慕われている。

 ◆次女①サクラ(サクちゃん):「あたしが一番カワイイ」女王様。隙あらば撫でられ隊。せっかち。正しい猫なので人間の食べ物はもらってもいただかない。しかしお刺身は別(だよね)。長毛の美人さん。パンチは軽いが1回で2発くる(二重の極み)。譲渡会で出会う。

 ◆次女②ソルト(ソルちゃん):サクちゃんの三つ子の姉妹。「とっても仲良しなんですよ」と言われてつい2匹とも連れてきたが、家に来てみたらそれほどでもなかった。譲渡会あるある。サクちゃんと毛並みは同じだが顔は似てない。マイペースでユルい。よく舌をしまい忘れている。「馴れ合いはせん!」なので家族でも娘2号と3号にしかデレない。私も尻しか撫でることを許されていない。パンチは重くて爪でえぐってくる。痛い。

◆三女チビ(チビこ):公園で親兄弟とはぐれているところを娘3号に保護された。2号のお友達に貰われたが、お家の事情で飼えなくなり出戻る。唯一の経産婦(前のおうちで)。繊細。後輩が来たときは、環境の変化でトイレができなくなり、とうとう私のお布団で……(お察しください)ベッドごと取り替える羽目に。もう増やすのはやめようと思った。

◆長男まる:件の後輩。初の男子。譲渡会にてほかの子がアピールしまくる中ひとりだけトイレにこもっており、不憫になった娘3号が連れ帰る。しかし全然不憫じゃなかった。譲渡会あるある。元気。言われたことを理解するが秒で忘れる永遠の小学4年男子。いつまでたってもごはんの吐きぐせが治らない(噛まないで飲み込むから~)。しかし唯一旦那を嫌っていないので、「まるは賢いな〜」とその寵愛(えこひいき)を一身に受けている。

 本日、猫5匹の予防接種の決行日。

 冷蔵庫の脇の隙間を逃げ込まれないように塞ぐ。各部屋の戸も閉めた。1階の納戸から5匹分の洗濯ネットと4匹分の段ボールとバスケットを出し、いよいよ捕獲を試みる。敵はまだ気づいていないようだ。
 捕獲する順番が大事である。要注意なのはサク・ソル姉妹。どっちも半端なくバネが強くて、身をよじり抑えた手を振り切って逃げる。長毛の毛がつるつるしているので、つかみにくい。そして捕まると、チビるのだ。なんなら大きいほうまでも。それだけはやめてほしいと願いつつ、最初にこのふたりをやっつける。

 まずはソルトだ。1号3号が逃げ道を塞ぎ、旦那と2号が追いこみ押さえ込む。すかさず洗濯ネットを被せ、暴れるのを抑えファスナーを閉める。成功! そのままバスケットに入れ蓋を閉じて終了。しかしやっぱりやられた。

「うわっ、ソルちゃんやりよった!」

 浴びてしまった娘2号の悲鳴。お疲れ様です。

 ソルトが捕まるのを見て猫たちは全員事情を察し、全力で逃げの態勢に入っている。ここからは手際の良さが勝負を左右する。サクラ、捕獲開始。もちろん逃げる。毛で滑って取り逃がしそうになるが、すんでのところで旦那が抑えて終了。やっぱりやられる。

「サクラもやったよ~」

 お疲れ様です。でも二人とも、「大」じゃなかった。ほっと一安心。

 この二人が確保できたのであとはまあ楽勝である。ここからは私がやりましょう、と残りの3匹を2号と取り押さえ、ネットに入れ、個別に段ボールに入れてふたを閉める。ところがここで、まるが意外な抵抗を見せた。去年そんなに暴れなかったから大丈夫だろうと、モカと一緒の大きめの段ボールに入れていたら、バゴス! バゴス! と頭突きでふたを中から開けて逃げ出そうとする。

「やばい! おかあさん、まる出る! 段ボールじゃだめだ!」

 マジか?! 捕まえる時は大変だけど、どの子もだいたい段ボールに入れると観念するのに……慌てて配置を交換する。まるを蓋ががっちり締められるバスケットに移す。こうしてなんとか、捕獲完了。やられた人が手を洗い、服を着替え、ようやく病院へ。1台では積みきれないので、旦那と2号の車の2台に分かれて出動である。

 かかりつけのお医者さんにとっては、毎年団体で注射に来てくれる”おなじみさん”の”お得意さん”。今年もよろしくお願いします~なんてもんである。ひとりひとり確認しながら、体重をはかってお尻にお注射。診察台にのせられるともう全員観念してそれ以上抵抗はしないので、滞りなく流れるように注射は済んだ。捕まえるまでの騒ぎが嘘のようだった。

 「みんなで来ていただいたので~」と注射代おひとり様1,000円割引していただいて、なんだか申し訳なかったけれど、恒例の年中行事は今年も何とか終了した。帰りの車の中はとっても静かだったけれど、2号の車ではチビこだけがずーっと「ぬわぁ、ぬわぁ」と文句を言っていたらしい。

 帰宅後は全員、お薬のせいで大人しく、今夜は食欲もあまりなし。ご飯も食べない子が多かった。でもモカだけ全部平らげる。一番年寄りのくせに衰えぬ食い意地。さすがだ。まあ元気な証拠かな。

 来年も、ひとりもかけることなく、お注射に行けるといいね。

 夕ご飯の時に、ひとり1,000円ずつ割引してもらったよ、と話したら、留守番をしていた3号がボソッと、

「GoTo予防注射」

 座布団1枚! 割引していただいた分で、次の日女子4人で『Jolly Pasta』でGoToランチしました。おいしかった。ごちそうさまでした!

サポートしていただきありがとうございます。もっと楽しく読んでいただけるよう、感性のアンテナを磨く糧にします! そして時々娘3号と、彼女の大好きなAfternoon Teaにお茶を飲みに行くのに使わせていただきます。