10年目を迎えた

セキュリティ業界に入って10年目を迎えた。一瞬だけの輝きではないか思っていたのだが、淡々と積み上げて、思った以上に実績を出し続けていることについては自分を評価したい。

経済的な面でも落ち着いた。特に物欲もなくあまりお金を使わないこともあって、この9年間は副業の方の結果だけで暮らしていけるくらいだった。人生の楽しみは散財だと思うので、より良い使い道を考えたい。

10年前のことを少し振り返りたい。

10年前、いろいろ終わる

10年前、継続していた大きな仕事が立て続けに終わり、掲載誌は発行を終え、収入の見込みがほぼなくなった。

幸いなことにギリギリ一人が生きていくくらいの収入が見込める数本の原稿仕事は残り、それがなくなったとしても数年は暮らしていけるくらいの蓄えはあった。

そこで、焦らず先行きが暗くなる一方の出版業界で何とかなるものか、そのあたりの仕事で他に収入に繋がりそうな何かがあるのか、一年ほど様子を見て次の道を決めようと思った。

伝手を頼って仕事を探したり企画を出してみたりもしたのだが、あまり感触はよくなかった。書籍も手間の割に収入にはつながらない。10万部売れる技術書なんて過去の話だ。

しかも仕事がなくなってることは周りだってわかっている。そういうときには条件の悪い仕事がやってくるものだ。

覚えてるのは大手WebサイトのQ&Aを考えて10本1万円くらいのことをお試しでやった。直しがないという話だったのだが、修正がきた。2回目の依頼ははもちろん無視だ。

他にも新規の単価の安い原稿もいくつかやった。1日かかる原稿1本5000円とかではさすがに生きてはいけない。趣味の世界だ。薄々感じてはいたのだが原稿だけで食っていくのには無理があると悟った。それまでだって、もともと安い原稿収入を別の業務でカバーしていたのだ。そんな年末。さてどうしたものか。

脆弱性を探す

いろいろ違う道を模索してた中で、別の系統の収入が入ってくるようになった。バグバウンティだ。

以前偶然にも代打でWebアプリケーションの脆弱性を探す原稿を書く機会があり、参考として動かしてみたアプリケーションに大きな脆弱性を見つけた。

もしかして、この分野ではほぼ素人の自分にも脆弱性が見つけられるのだから、他にも見つけられるのではないか、ということで調子に乗って脆弱性を見つけては報告したりしていた。

そしてこれが縁となり、Webアプリケーションの書籍のレビューをしたり、数万円のレベルだけど報奨金をもらったりもしていた。さすがにバグバウンティで食っていくのは無理だが似たような仕事ならできるのではないかと思い始めていた。

ということで脆弱性を探す仕事を探してみることにした。世間には脆弱性診断という仕事があるらしい。ペネトレーションテストとの違いはよくわからないが日本の求人は脆弱性診断なのでこれなんだろう。

とはいっても、40手前の未経験の私立文系卒だ。就職できるのかよくわからない。よしんば知り合いのコネで採用されたとして、実力が足りなくて若者に自分だけでなく紹介してくれた知り合いまでも冷たい目で見られる可能性もある、とか、とかいろいろ悩んだ。

脆弱性診断の仕事に忍び込む

しばらく考えを巡らせた結果、派遣でこっそり初心者に毛が生えたような人として自分のことを知らない職場に忍び込めばいいんじゃないかと思い探してみると、わりと募集がある。

そのうちの1つに申し込んでみると、そこじゃなくて似たような別のところがありますよ、と言われ、まあどこでもいいんで、と言ってると、あっという間に仕事が決まってしまった。それが9年前のちょうど今頃。

どんなレベルの職場でどんなすごい人たちが仕事しているのかとドキドキしながら、久しぶりの会社員的な体験が始まったのだが、最初に聞かれたことが「Firefoxって知ってます?」だった。

自分が技術的に足りなかったらどうしようという心配はすぐに杞憂だとわかった。ゆるふわな職場と仕事の内容で、その後も技術的なことで困ることはほぼなかった。

そういう緩いところからキャリアをスタートすることができたのはよかった。責任も残業もなく、経験も積めて楽しい職場だったが、半年くらいでキャリアアップした。初日にFirefoxの話をしていた人はその頃Chromeというブラウザがあることを話してくれた。

技術的には信頼の置けない人だったが、人間、何かしらの長所がある。出張の経費のことでは半日以上電話のやり取りを何度も何度も向こうが折れるまで続けることができる諦めの悪いネゴシエーターだった。敵にしてはいけないタイプだった。

そんな感じでスタートしたセキュリティ仕事も10年目だ。あそこでキャリアを転換してよかったな、出版業界にしがみついてるのはハズレだったなと、あそこで見切りを付けた自分を褒めつつ、真面目に働き、報奨金もいただいていきたい。

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