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困った上司・やっかいな同僚 職場のストレスに負けない人の考え方

エイミー・ギャロ
イェール大学を卒業後、ブラウン大学にて修士号を取得。職場環境の問題に関する専門家で、ジェンダー、対人関係、効果的なコミュニケーションなどのトピックを中心に扱っている。国内外で、個人や企業、組織などを支援しながら、数多くの講演活動を行う。


1.職場のストレスに負けない人の秘密――良好な人間関係が生む驚異的なパフォーマンスとは?

「職場のストレスに負けない人の考え方」――このサブタイトルに込められたメッセージは、現代の働く環境において極めて重要です。では、どうすれば職場の人間関係を成功させることができるのでしょうか?著者が提唱するのは、「いい関係もそうでない関係も大切にしよう」というシンプルでありながら深い洞察です。

私たちは一般的に“やっかいな人間関係”を避けがちです。しかし、現実的にはそれを完全に避けることは不可能であり、職場の人間関係は私たちの仕事の成果を大きく左右します。ほとんどの職務において成功するためには、他人とうまくやっていくことが不可欠です。もしあなたが仕事で輝き、最高のパフォーマンスを発揮し、生産的に働きたいのであれば、良好な人間関係を築くことが重要なのです。

これは単なる感覚ではありません。数多くの研究が、社会的なつながりが認知機能や忍耐力、積極性を高めることを示しています。仲のよいチームは高い業績を上げ、協力的な同僚がいることでストレスが軽減されます。同僚との親しい関係は、情報やアイデアの共有、自信や豊かな学びにつながります。たとえ単調な仕事であっても、社会的なつながりに貢献することで、刺激的な仕事と同じような満足感や充足感を得ることができるのです。

さらに、職場文化の研究で有名なコンサルティング会社ギャラップの調査によれば、「職場に親友がいる」と答えた人たちは、仕事に対するエンゲージメントが高く、顧客とのかかわり方が上手で、幸福度も高いことがわかりました。その割合は、そうでない人たちと比べて7倍も高く、仕事中にけがをする確率も少ないのです。対照的に、職場に親友がいないと答えた人たちのエンゲージメントは、わずか12分の1にとどまりました。

また、米国、ドイツ、インドの3か国で1万2000人以上を対象に行われた調査によれば、パンデミック中に在宅勤務をしていた多くの人々が、生産性の低下を感じていたことが明らかになりました。特に同僚とのつながりが弱まったと感じた人のうち、80%が「生産性が下がった」と答えています。

これらのデータが示すように、職場の良好な人間関係は人生の幸福度や仕事のパフォーマンスにとって不可欠です。あなたがもし職場のストレスに打ち勝ち、成功したいと願うならば、まずは周囲との関係を大切にすることから始めてみてください。それがあなたのキャリアを大きく飛躍させる第一歩となるでしょう。

2.理解することが大事

職場の人間関係で悩む人は少なくありません。特に上司との関係がうまくいかないことは、多くの人にとって頭を抱える問題です。信頼されない、アイデアを説明もなく却下される、失敗の責任を押し付けられる――こんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。中でも特に厄介なのが「不安を抱えた上司」です。

「不安を抱えた上司」は、細かい揚げ足を取って相手を追い詰めたり、すべてを管理しようとしたり、部下の自信をじわじわと削いでいきます。自分にとって脅威となる部下には、意図的にキャリアの妨害を仕掛けることすらあります。もし次のような行動を上司がとっているなら、その人は「不安を抱えた上司」かもしれません。「他人の評価を過度に気にする」「小さなことでも決断を先送りにする」「上の立場の人の意見に右往左往してプロジェクトの方向性を頻繁に変える」「チームのプロジェクトの詳細をすべてコントロールしようとする」「全ての決定事項に自分の承認を求める」。これらの行動が見られるなら、要注意です。

では、どうすればこの「不安を抱えた上司」に対処できるのでしょうか?まず最初のステップは、彼らがなぜそのような行動をとるのかを理解することです。

自己不信は人間の自然な本能です。不安を抱えること自体は誰にでもありますが、それを隠そうとしたり、補おうとしたりすると問題行動が出てくるのです。他者からの承認や賞賛を求めるのも、人間がかつて生存のために共同体に依存していた名残と言えるでしょう。成功するためにはコミュニティに頼る必要があったのです。特にリーダーという立場は自己不信に陥りやすく、研究によればリーダーになることで自信のなさからくる不安が増大することがわかっています。「自分には役職に見合う実力がない」と感じ、明日には職を失うかもしれないという恐怖が、不当な扱いを他者に強いる原因となるのです。

こうした理解を持つことで、不安を抱えた上司への対処法が見えてきます。まずは、上司を理解することから始めましょう。上司の不安の根源を理解し、その不安を和らげるためのコミュニケーションを取ることが、より良い職場環境を作る第一歩となるでしょう。

3.自分の解釈を疑うこと

職場での日々が楽しいものになるか、それともストレスに満ちたものになるか。それは、私たちがどのように人間関係を築くかに大きく左右されます。不安を抱えた上司や悲観主義者、さらには差別的な同僚など、さまざまな性格の人たちと一緒に働く環境で、どのように円滑なコミュニケーションを保つかが重要です。

そこで、著者が提案する「誰とでもうまくやっていくための9つの原則」は、まさに職場での人間関係をスムーズにするための必携ガイドです。

「原則1 自分コントロールできることに集中する」
「原則2 自分の視点は、1つの視点に過ぎないと知る」
「原則3 自分のバイアスに気づく」
「原則4 『わたし対やつら』という構図で見ない」
「原則5 相手の身になって考えることで、新たな視点を手に入れる」
「原則6 自分の目標を知る」
「原則7 ゴシップを(基本的に)避ける」
「原則8 試行錯誤しながら対策を選ぶ」
「原則9 好奇心を持ち続ける」

この中から今回は、「原則3 自分のバイアスに気づく」について掘り下げてみましょう。

私たちはつい、問題の原因を他人に押し付けがちです。しかし、多くの場合、問題の根源は自分自身にある「バイアス」かもしれません。厄介なのは、このバイアスが無意識のうちに働くことです。特に重要なバイアスには、「親和性バイアス」と「確証バイアス」があります。

親和性バイアスは、自分と似た人と親しくなろうとする無意識の傾向です。似たような考え方や背景を持つ人を好むため、新しい視点を受け入れることが難しくなります。例えば、同じ学歴や同じ趣味を持つ人に対しては自然と好意を抱き、異なるバックグラウンドを持つ人には距離を置いてしまうことがあります。

確証バイアスは、既に持っている信念を裏付けるような情報だけを受け入れる傾向を指します。ネガティブな思いを持っていると、その人の行動を否定的に解釈しがちで、逆の行動を見てもその考えを変えにくくなってしまうのです。

では、このバイアスからどうすれば脱却できるのでしょうか?著者は「自分の解釈を疑う」ことを推奨しています。もし職場でいざこざが起きたら、自分が本当に公平に状況を見ているのかを自問自答しましょう。その方法の一つが「ひっくり返し検証」です。相手のジェンダーや人種、性的思考が違っていたらどう感じるかを想像してみるのです。例えば、女性のリーダーに偏見を持っている場合、その人が男性だったら同じように感じるかどうかを考えてみる。同様に、相手が白人男性だったら同じ発言をしたかどうか、自分自身に問いかけるのです。

自分のバイアスに気づき、それを疑うことは、職場での人間関係を円滑にするための鍵です。

まとめ

職場の人間関係は、仕事の効率や満足度に大きな影響を与える重要な要素です。例えば、ある調査によると、職場の人間関係が良好な企業では従業員の生産性が平均で20%向上することが示されています。また、職場でのストレスの主な原因の約40%が人間関係に関連しているというデータもあります。円滑なコミュニケーションや協力体制は、業務の進行をスムーズにし、ストレスを軽減します。良好な関係を築くためには、相手を尊重し、適切なフィードバックを行い、共通の目標に向かって協力する姿勢が求められます。こうした努力が、働きやすい環境の創造につながります。

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