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INNOVATION STACK だれにも真似できないビジネスを創る

ジム・マッケルビー
起業家、発明家、慈善家、アーティスト。


1.イノベーションの積み重ねが生む革新力——「INNOVATION STACK」とは?

「INNOVATION STACK」とは何か?この言葉の持つ意味を紐解いていくと、「革新の積み重ね」といったニュアンスが浮かび上がります。著者のジム・マッケルビーはこの概念を、「未解決の問題を一つ解決することで次々に新たな課題を乗り越え、結果として一連の発明が積み重なること」と定義します。これにより生まれた多層的な革新は、競合他社が容易に真似できない強力な防御策ともなるのです。

ジムが創業した「Square」は、まさにこのイノベーションスタックの実例です。モバイル決済代行企業として、スマホやタブレットを用いたカード決済アプリを開発しました。このアプリは誰でも簡単に利用でき、低い手数料と手軽な操作感を実現し、全米で爆発的に普及しました。Squareは「加盟無料」「契約なし」「電話サポートなし」「迅速な決済」「低価格」「広告なし」など、実に14もの革新を積み重ねたのです。

特に注目すべきは「広告なし」というイノベーションです。Squareは広告を一切使わず、2年にわたり毎週10%の成長を遂げました。その秘密は、顧客自らが営業員として口コミで広めたことにあります。広告に頼らずとも、顧客の体験と満足が次の顧客を呼び込む。この無限の好循環こそ、Squareの強みであり、他社が簡単には追随できない革新の力です。

「INNOVATION STACK」とは、単なる技術革新にとどまらず、次々と課題を解決し続けることで形成される「革新の積み重ね」。それはジム・マッケルビーのSquareが証明するように、真にユニークで競争力のある企業を築き上げるための秘訣なのです。この本を通じて、その奥深い世界に触れてみてください。

2.イノベーション金融機関

本書では、Square社の成功にとどまらず、他の「イノベーションスタックを起こした企業」にも焦点を当てています。中でも際立つのが「バンク・オブ・イタリー」です。アメリカに本社を構えるこの銀行は、イタリア系移民のためにサンフランシスコで設立されました。少額取引を可能にすることで事業を急速に拡大し、瞬く間に全米有数の民間金融機関となったのです。

では、バンク・オブ・イタリーがどのようなイノベーションスタックを築き上げたのでしょうか?その革新の数々は、「女性のための銀行」「低金利」「広告あり」「簡単な融資審査」「開店時間の延長」「所有権の分散」など、多岐にわたります。特に注目すべきは「低金利」「簡単な融資審査」「開店時間の延長」の3点です。

まず、「低金利」について。競合他社が12%の高金利を課す中、バンク・オブ・イタリーはわずか7%に設定しました。創業者アマデオ・ピエトロは「10%だの12%だのを課したら借り手を倒産させることになる。低金利のために戦う人物こそ、当行がお金を貸したい人物だ」と語り、この方針が銀行の成功を支えました。

次に、「簡単な融資審査」。バンク・オブ・イタリーの融資審査は極めてシンプルでした。時には書類も信用審査も不要で、知り合いというだけで融資が行われることもありました。1906年のサンフランシスコ大地震の際には、

「握手だけでよかった」という逸話も残っています。

さらに、「開店時間の延長」。バンク・オブ・イタリーは、他の銀行が閉まっている夕方や日曜日にも営業していました。通常の銀行の開店時間には多くの人々が仕事をしているため、彼らの生活に合わせた営業時間が功を奏したのです。

バンク・オブ・イタリーの成功は、単なる金融機関としての枠を超え、人々の生活を支えるための真摯な取り組みによるものでした。そのイノベーションスタックは、今なお私たちに多くの示唆を与えてくれます。

3.イノベーションと価格戦略が交差する現代ビジネスの最前線

著者が明かす「イノベーションスタック」の真髄です。イノベーションの物理学を駆使し、著者は「値付け」の深淵に迫ります。その中で特に注目すべきは、単なる「安さ」ではなく、企業の命運を左右する「低価格」と「最低価格」の違いです。

多くの人が同じサービスや製品ならば、より安価なものを選ぶのは当然です。しかし、企業戦略としての「低価格」と「最低価格」には、微妙ながらも重大な差があります。「低価格」とは、市場での最安値を目指すものであり、その背景にある論理や戦略こそが鍵となります。つまり、値札の数字以上に、その価格設定に至る過程や戦略こそが真に重要なのです。

企業にとって「低価格」を追求することは、まさに危険な橋を渡るようなものです。しかし、著者はあえてその橋を渡る理由を「顧客の信頼」「企業の方向性一致」「競争優位」といった視点から解き明かします。特に「顧客の信頼」に焦点を当てると、その重要性が一層浮き彫りになります。信頼とは捉えどころがなく、時には裏切られるリスクも伴うものですが、低価格戦略はこの信頼を築くための強力な手段となり得るのです。

低価格は、顧客に選択肢を提供する力を持ちます。経済的に厳しい状況でも、選択の自由を与えてくれる企業に対して、顧客は自然と信頼を寄せるのです。これが、ブランドへの信頼構築に繋がり、顧客との関係をより強固なものにします。企業が躊躇しがちな「低価格」には、多くのメリットが隠されており、それは挑戦する価値のある戦略であると著者は強調します。

まとめ

イノベーションとは、新しいアイデアや技術を用いて、製品やサービス、ビジネスモデルを革新するプロセスを指します。既存の問題を解決し、価値を創出することが可能となります。イノベーションを築くためには、常に新しいアイデアを探求し、挑戦し続けることが重要です。過去の成功にとらわれず、柔軟な発想で未来を切り拓き、技術や社会の変化に敏感に対応する姿勢が求められます。失敗を恐れずに実験し、学ぶことを繰り返すことで、持続的なイノベーションを実現できるでしょう。

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