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成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

ロバート・H・フランク 
H.J.ルイス講座教授(経営学)。コーネル大学ジョンソンスクール経済学教授。
ニューヨーク・タイムズ紙では10年以上にわたり経済コラムを執筆。ニューヨーク州イサカ在住。


1.偶然か必然か

「成功には運が不可欠」成功した多くの人々が口を揃えて言う言葉。しかし、社会学者のダンカン・ワッツが指摘するのは、「成功は必然ではなく、後から理由をつける傾向にある」と言います。

心理学では、この現象を「後知恵バイアス」と呼びます。つまり、起こった出来事に対して後から理由をつけること。そんな中、成功には偶然の要素が大きく絡んでいるというのです。

小さな出来事が絡み合い、偶然の結果が成功につながる──そんな考え方をしてみるのも面白いかもしれません。たとえば、世界一有名な名画「モナ・リザ」も、ある事件がきっかけで世に知れ渡ることとなりました。

1911年の「盗難事件」。犯人がイタリアのフィレンツェ美術館に絵を売ろうとしたことで発覚し、それが世界的な注目を浴びることとなりました。しかし、イタリア人は犯人を「本国に絵を返そうとした愛国者」と称賛しました。結果、モナ・リザは盗難に遭わなければ、ここまで有名にはならなかったかもしれません。

偶然という要素が、時に成功に導くこともあるのかもしれません。才能や努力も大切ですが、偶然の幸運もまた、成功の舞台を演出するかもしれません。成功には様々な要素が絡み合い、その魅力はいつも私たちを惹きつけてやみません。

2.2位以下は評価されない

「一人勝ち市場」とは、才能ある者が技術革新によって輝く場所です。この市場には、2つの興味深い特徴があります。

まず、報酬は相対的なパフォーマンスによって与えられるという点です。競技の世界で言えば、常に1位に君臨していた選手がいなくなることで、2位の選手が光を浴びる機会が生まれます。その際、2位の選手が自身の実力を向上させたわけではなく、相対的に見て1位の選手がいなくなったため、その輝きが増したのです。

そしてもう一つは、報酬が少数のトップに集中するという点です。技術革新が進むにつれ、1位と2位の間に生じる差はますます大きくなりました。そのため、1位は世間的に注目を集め、褒め称えられる一方で、2位以下はその存在すら見過ごされがちです。テレビやインターネットなどのメディアも、トップにスポットを当てる傾向があります。しかし、2位以下はそれだけでは報われず、その努力や実績が十分に評価されないのです。

このような一人勝ち市場において、誰もが公平な報酬を得ることは容易ではありません。しかしそれでも、常に挑戦し続けることで、自身の才能を最大限に発揮し、光を浴びるチャンスを掴むことができるかもしれません。

3.努力と運、どっち?

成功は偶然の産物であるという考え方に対して、一部の成功者は異を唱えます。彼らが「運」を認めながらも成功した理由は何でしょうか?彼らは、運の存在を否定することで、自らの成功における努力と才能の重要性を強調するのです。

一流大学を目指す学生を例に取ると、運の存在を認めない学生は、賢明であろうとなかろうと、精力的に努力を続けることで合格を勝ち取ります。一方で、運を認める学生は一定の努力をしてきますが、あとは運次第とばかりに手を抜いてしまうこともあります。しかし、運を認めない学生は常に背水の陣で、最後の最後まで粘り強く勉強し続けることで、結果的に合格を勝ち取るのです。

このように、運の存在を否定することで、困難に直面した際にも自らの能力と努力によって乗り越える姿勢が生まれます。運を信じず、自らの能力と努力だけを信じることで、成功に向けた不屈の精神が養われるのです。

まとめ

成功には運が不可欠であることは誰もが理解しています。しかし、その運を待つだけではなく、努力と準備を怠らず、チャンスを掴む準備をしておくことも重要です。運が舞い込んでくるのを待つのではなく、自らの行動で運を呼び寄せる――これが真の成功への近道です。

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