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限りある時間の使い方

オリバー・バークマン(Oliver Burkeman)
イギリスの全国紙ガーディアンの記者として、外国人記者クラブ(FPA)の若
手ジャーナリスト賞などを受賞した気鋭のライター。


1.時間に追われる現代人 なぜ私たちは「生産性」の罠にハマるのか?

本書は、現代人が感じる時間のプレッシャーと、その根本原因に迫る一冊です。日々の生活で感じる「時間がない」という焦りは、なぜこれほどまでに私たちを追い詰めるのでしょうか?その答えは意外にも、「生産性」にあります。

私たちは効率を追求するあまり、次々とタスクをこなし、さらに多くのタスクに追われるという無限ループに陥っています。メールの洪水や増え続けるやることリスト、そして仕事でも家庭でも期待に応えようとするプレッシャー。これらすべてが私たちの時間を奪い、結果的にタイムマネジメントを試みても生活はますます加速するばかりなのです。

著者はこう指摘します。「本当の問題は“限られた時間をどう使うか”に対する厄介な先入観だ」と。私たちは「この時間になったら、あれをしなければならない」という思い込みに縛られています。では、なぜ現代人はこのような先入観に囚われてしまうのでしょうか?答えは「時計」にあります。

時計がなかった時代、どんなに忙しくても「やることが多すぎる」「もっと急がねば」と感じることはありませんでした。逆に余裕のある日にも「退屈だ」「何かしなければ」という焦りもなく、「時間を節約しなければ」というプレッシャーや「時間を無駄にした」という罪悪感もありませんでした。これは、単に昔の人がのんびりしていたわけではなく、根本的な違いがあったのです。

当時の人々は「時間」という概念自体を持っていなかったのです。時間を抽象的な存在として体験していなかったため、時間に追われることはなかったのです。しかし、現代人は時間を自分や周囲の世界から切り離されたものとして捉えています。例えば、明日の午後をどう過ごすか、去年一年間で何をやり遂げたかを考えるとき、無意識のうちにカレンダーや時計、ガントチャートなどが頭に浮かびます。これこそが、時間という概念によって現実を架空の物差しに当てはめている状態なのです。

2.タスクに追われる日々からの脱出 3つの原則で上手にタスクと付き合う方法

「タスクを片づければ片づけるほど、時間に追われる」そんな経験を持つ方は多いのではないでしょうか。限られた時間の中で、どうすれば効果的にタスクを管理し、充実した日々を送ることができるのでしょうか?本稿では、「タスクを上手に減らす3つの原則」をご紹介します。

第1の原則:まず自分の取り分をとっておく

まず最初に、自分の本当にやりたいことを最優先します。これは、給与を天引きして貯金するようなものです。お金の場合、最初に貯金を確保しておけば、残りのお金で日常の支出をカバーできます。同様に、時間も自分のやりたいことを最初に確保することで、他のタスクに追われて自分の大切なことができなくなるのを防ぎます。人生は限られた4000週間です。まずは自分にとって大切なことに時間を使い始めることが、充実した生活への第一歩です。

第2の原則:進行中の仕事を制限する

同時に複数のプロジェクトを進行させるのは効率的に見えますが、実は注意力が散漫になり、どれも中途半端に終わることが多いです。進行中の仕事を制限し、一度に一つのプロジェクトに集中しましょう。もっとも重要な仕事に集中し、それが完了するまで他の仕事は一切手をつけないことです。大きな仕事は小さなタスクに分割し、少しずつ進めることで、短期間で無理なく達成できます。

第3の原則:優先度「中」を捨てる

人生でやりたいことをトップ25リストアップし、その中から最も重要な上位5つに集中します。残りの20項目、いわゆる「優先度中」のタスクは思い切って切り捨てましょう。これらは一見魅力的で、つい手を出してしまいがちですが、本当に大切なことに集中する妨げになります。適度に魅力的な選択肢に対して「ノー」と言える勇気が、重要なことを達成するための鍵です。

3.現実逃避したい

人生の時間は限られており、その貴重な時間をどう使うかで、私たちの未来は大きく変わります。本当にやりたいことを先延ばしせずに「すぐにやる」ことの大切さに気づいたとしても、なぜかやる気が出ないという状況に悩まされることがあります。

例えば、仕事中についついSNSを見てしまう経験はありませんか?一生懸命仕事に没頭している時はSNSの誘惑なんて気にならないのに、退屈を感じた途端にスマホを手にしてしまう。この現象は、私たちがささやかな苦痛から目をそらすために無意識のうちに気を紛らわせようとする行動です。そして驚くべきことに、これはやりたいことをやっている時にも起こるのです。

やりたいことに挑戦することは、自分の限界に向き合うことでもあります。その挑戦には怖さが伴い、逃げ出したくなる気持ちが生まれるのです。さらには、心からやりたいと思っていた活動が急に退屈に感じられ、集中できないことすらあります。なぜこんなジレンマが生じるのでしょうか?

その答えは、私たちの「有限性」にあります。時間が限られている現実や、それをコントロールできないという不安を避けるために、つい気晴らしに逃げてしまうのです。これは、自分の有限性に直面するのを恐れる行動です。

想像してみてください。重要なことに取り組む時、自分の限界を痛感します。完璧にできないもどかしさ、自分に思っていたほどの才能がないかもしれないという不安、そして予期せぬ困難に直面する可能性…。これらの不安から逃れることはできません。

では、このジレンマからどう抜け出すことができるのでしょうか?その答えは、「すべてをコントロールしたいという欲求を捨て、とにかく進むこと」です。私たちは「無力な囚われの身」として自身を受け入れ、その有限性を認めた上で前進することが大切なのです。

まとめ

工業化の普及によって、私たちの生活は「時計」の管理下に置かれました。「時計」の登場によって、いかに時間をうまく使うか、いかに生産性をあげるかが重視される世の中に変わります。しかし、人間そのものが時間であることを踏まえると、一つの答えが見えてきます。与えられた貴重な4000時間は他人のためのものではありません。今一度、自分の人生を省みる必要があるのです。

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