(ソネット) 「扉」




その白い手に触れるには余りに遠い
雨が開かない扉となって立ち塞ぐ
窓を打つ滴さえ 挑むように
愛しいはずの猫の鳴き声も虚しく

室を灯す一台のランプに油をさす
少年の日から続けていること
彼がいつか鍵を外す時までの
はてしない坑道を照らす小さな火

あなたの青い瞳は何処までも隠れ
彼の想いを先に読み取ってゆく
いやそれもランプに光る鏡の投影

水のような息吹きで澄んだ夜は
綴った言葉が薄い香りに消える
彼女の白い指が扉に触れる夢の中で