(詩) 「祝祭」




午下の陽光を受け止めた大気が
白く霞む
野を刺す新緑が
輪のように静寂を描く

湖畔
剥がされた石
娘たちの手でひとつひとつ
摘み取るように
灯されてゆく 時間

程なく 群青 ウルトラマリンの水の火が
湖面に立ちあがり
無音のままに燃え盛る

涯ない歳月の車輪が回転を止めた

そして 一帯を
墨のように青く匂う風が流れ
薄い光の下で舞っていた

水が燃える火を抱き寄せ
闇深く濁った青を
湖底へ沈めてゆく

娘が水面に手を触れると
長く閉ざされてきた記憶が
糸のように手繰られ
ゆったりと波打って
彼方に揺らぐ地平線へ
大きな弧を広げていった

掬いあげた水が 指の隙間から
砂になってこぼれてゆく
そしてそのまま
記憶の底まで
落ちてゆく

祝祭を見下ろす瞳があった

燃え立つ火柱が
暮れない落日の陽光に溶けて
彼女の視線と絡む

緑青の巨大な帯が滲み
涯の山々を覆っている

彼女の瞳から
数多の宝石がこぼれ
蒼白の大地が赤く染まった

散らばる灯火は花弁になって
地の生命の上に咲き誇った
彼女の瞳はそれを映していた

一夜の境界を踏み越えた季節が
やがて扉を閉ざし
瞳の中に吸い込まれていった