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珠玉のインディーズ映画

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記事一覧

地方出身の僕、上京したいともがく女子高生に共感 ー 映画『溶ける』

田舎の生活が嫌すぎて、このまま大人になっていいのか、ここじゃないどこに行きたいともがく女子高生の映画『溶ける』を見ました。 僕も地方出身で上京したので気持ちはすごくわかります。このまま田舎にいたら、平凡な大人になって、仕事して、ごはん食べて、風呂入って寝るだけの生活で人生が終わっちゃう!と悲観してしまう。 毎日ちゃんとごはんが食べられて、お風呂に入って、眠れる幸せの尊さをなめんじゃねぇ!と今の僕なら言えますけど、当時は「こんなにつまらないのは、ぜんぶ田舎のせいだ」と決めつ

病気になりたくてなる人はいない… 映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』

病気になりたくてなる人はいない。これは幼いころから母に聞かされてきた言葉です。僕自身が国指定の難病に罹り、状態は安定していながらも通院を続けている身であることもあって、母の言葉は本当に沁みます。 今回紹介する映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』は、アルコール依存症となった男の物語。彼もアルコール依存症になりたくてなったわけではありません。作中でも医師が語りますが、「この病気の怖いところは他の病気と違って同情を得にくいこと」なのです。 アルコール依存症と聞くと、 なるべ

「ブラジャー貸して」から始まる恋の行方は? 映画『もとめたせい』

「ブラジャー貸してほしい」と男子高校生がクラスの女子に懇願する映画『もとめたせい』を見た。 【登場人物】 頼まれたら断れない女子高生:相川 ブラジャーを借りたい男子:馬場 正確には、「よかったら…相川さんのブラ…貸してほしい」である。 よかったらの意味がわからないし、よいわけがない。しかし、相川は頼まれたら断れない性格で知られている。切羽詰まった馬場の頭の中には、もしかしたらいけるかもしれない…というわずかな希望があったのだろう。 それにしてもわずかすぎる。普通に考え

もし明日でリモートワークが終わったら? 映画『ラスト リモート ショー』

リモートワーク(テレワーク)をはじめ、レッスン系も飲み会も、そしてイベントもオンラインでの開催が珍しくない現在。 オンラインにはオンラインの良さがあるなぁ…なんて感じることも多くなってきたところですが、 「はい、明日から以前のようなオフラインに戻りまーす!」 と言われたらどうしますか? 今日ご紹介する映画『ラスト リモート ショー』は、とあるオンラインマッチングサービス終了直前の10分間で起きた、人々の葛藤と行動を描いた短編作品です。 非常事態宣言の解除に伴い、オン

自粛生活を明るくしてくれる映画『薄明りのパレード』

不要不急の外出は控える。自分の身と誰かの身を守るために自粛しているはずなのに、心が「腐ってくる」気がするのはどうして? 以前より気持ちが暗くなったし、テレビやネットで文句を聞く、見る頻度も増えた気がする。なにより自分も愚痴や文句が多くなっている…。 これではいけないと思ったときに、ちょうどいい映画と出会いました。 『薄明りのパレード』です。 ダンサーの真理恵は自体待機中。外出は食料の買い出しのみで、恋人にも会わずに自粛を続けています。狭い自宅では踊ることもできず、ただ

刺激がなくても毎日は楽しい…だけど… 映画『Repeat After Me』

毎日をそつなく生きる。悪く言えば「平凡」になってしまうけれど、その生活がずっと続くことは、それはそれで幸せなことだと思います。 でも、いつか夢中になれること、寝食を忘れて没頭できることに出会ったとき、自分は平凡な生活を捨てて、そっちを選ぶことができるのかと考えることもあります。 今回おすすめする映画『Repeat After Me』は、15分の短編でありながら、その瞬間は予告なくやってくると教えてくれる一本です。 英会話講師、ヨシ。37歳、独身。趣味はジグソーパズルとお

この幸せが一生続けと泣きながら願った… 映画『閃光』

元カノが結婚すると知った夜、公園で台湾人の女性と偶然出会う。すべての男の夢みたいな映画を見ました。これが本当の話だったらな…と思うほどに、切なくてエモーショナル。恋愛に傷つき、傷つけし誰もが見る1本です。 久しぶりに会った元カノから結婚すると言われたとき、男はどう思うでしょうか。いろんな感情を抱きつつも、一言で言えば「やるせない」です。 別れた彼女に対して、どれだけの気持ちが残っているかによりますが、かつて自分とは合わなかったにせよ、別の人と幸せになります的な話をされて無

誰かの人生に巻き込まれる感覚 映画『オーファンズ・ブルース』

知らない人の人生に途中から絡んでしまった、巻き込まれてしまった、そんな体験ができる映画を見ました。途中から巻き込まれるので、わからないことだらけです。でもわかったときには… 今回ご紹介する映画『オーファンズ・ブルース』は、ロードムービーが好きな人はもちろん、ロードムービーってどんなの?って方にはもっとおすすめの作品です。 永遠に続きそうな夏が舞台。何かが起きているんだろうけど、何も起きない。このまま何も起きないのかな、と思ったタイミングで、油断しているところ、今かよってと

42歳の僕は、いまも小学生の夏休みに憧れる――映画『子どものおもちゃ』

小学生に戻って夏休みをもう一度だけ満喫したい。42歳になってもセミが鳴くたびに願っています。夏休みの価値をこれっぽっちも理解していなかった、夏が来るたび何度でも訪れるものだと思っていたあの頃に戻りたいと… 小学生の頃は、鬼ごっこだろうと、ガンマンごっこだろうと、すべての「ごっこ」は真剣勝負であり、あえていうなら命をかけた闘いでした。 捕まったら終わり、撃たれたら終わり。終わりとは死であり、絶対に避けたいことだったのです。 映画『子どものおもちゃ』は、誰もが子どもの頃に持

15歳の女の子の思春期が終わる瞬間を見る映画『胸にTATTOOなんかいれて』

今回は思春期にまつわる短編映画の紹介です。恥ずかしながら、僕にもきっちり思春期はありました。思春期だからこその反抗期の愚行をこれでもかと親にぶつけたことがあります。何をどうかんがえてもただの勘違い野郎のバカ野郎で、穴があったら入りたいし、無いなら自分で掘ってでも入りたいです。 僕は思春期の時に「もう親がいなくても生きていけるな」と思ってしまったのです。恥ずかしい!!! でもきっとみんな大なり小なり思うはずなんですよ。子どもと大人の間に位置する思春期ど真ん中において。身体は

もしも失恋の傷を医者が治せたら? 映画『失恋科』

突然ですが、失恋したことはありますか? 今回ご紹介する映画『失恋科』は、失恋の傷を医者が治せる未来が来たら…というお話です。 失恋の経験、僕は何度もあるんですけど、特に思い出すのは初恋での失恋です。初恋は中学2年と遅め?でした。思春期真っ只中、恋に焦がれて想いを募らせまくった僕は、休日に彼女の自宅まで行き、真剣に告白して振られました。 いま思えば休日に何のアポイントもなく自宅に来られるなんて恐怖しかないのですが、当時の僕からすると必死のパッチの純愛だったのです。一歩間違え

【オススメ短編映画】柄本佑主演の『風見鶏と煙突男』

僕は手ざわりのある演技をする俳優が好きです。本当に居そうな人、過去に会ったことがあるような人、いまそこにある雰囲気をまとって演技に昇華させる人のことです。 作品によってはいわゆる「たっぷり演技」と呼ばれる、大げさかつわかりやすさ重視の演技が必要なときもあります。テレビドラマの半沢直樹のような。しかし、フィクションといってもリアルを感じたい僕にとっては、手ざわりのある演技をしてくる俳優が本当に大好きなのです。 さて、今回はそんな大好きな手ざわり俳優の一人である「柄本佑」さん

お茶の間で展開するゆるいSFが最高だった。映画『スリッパと真夏の月』

SF映画と言うと、宇宙、未来、科学をイメージしますか?するでしょうね。僕だってそうです。でも、わずか30分の短編SF映画『スリッパと真夏の月』を見ると考えがちょっと変わりますよ。 お茶の間でも、サイエンスなフィクションは起こせる、起きます、起きているんです。 『スリッパと真夏の月』のあらすじ 町の発明家であった亡き父が作った『物質転移装置』を発見した昌子は、姉の光子と実験をしていたが、機械が故障していまい光子が異世界へ消えてしまう。昌子はなんとかして光子を自分たちの世界へ

あれ?ここにあったお店ってなんだっけ?映画『モラトリアム・カットアップ』

「卒業してもずっと友だちだよ」と、小学生の僕も、中学生の僕も、そして高校生の僕も言った記憶があります。だけど正直なところ、誰に言ったか覚えていません。 他にも、角にあったお店がなくなって更地になり、しばらくすると「あれ、ここにあったお店ってなんだっけ?」と思い出せなくなることもよくある話で。 少しさみしくて悲しくなるけれど、乱暴に言えば「忘れてしまっても差し支えなかったこと」とも言える。でも当時は絶対に忘れないと心に誓ったり、忘れるはずないと思っていたことばかりのはず。