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株式会社の作り方

・はいどーも!ユアトリー株式会社の上原です。
・先月の投稿(https://note.com/yourtory/n/n923a2fbed4b1)から1ヶ月が経ちました。人生初の起業を無事に成し遂げましたが、商号(会社名)・決算期・目的・出資金と発行株式数・発行可能株式総数・官報掲載 or 電子官報・役員任期 ...etc… と意思決定の連続だったため、ユアトリー株式会社では「なぜ、そのように決定したのか」という理由をまとめてみました。
・大いに活用させて頂いたのは、以下3点です。
(1)Coral Capital・澤山陽平氏がYouTubeで発信している「スタートアップ向け法人設立のベストプラクティス(全6回)」
(2)AZX総合法律事務所が公開している会社設立関連書類の書式/雛形(https://www.azx.co.jp/library/docs/category/category-01
(3)写真の「よくわかる株式会社のつくり方と運営」。私は過年度版を使用。毎年夏に最新版が出版される。

・本投稿は潜在的なスタートアップ起業家やそのサポーターの皆様向けに執筆したものです。スタートアップ(※)のみが考慮すべきマニアックな内容が一部含まれております。

(※)スタートアップ
・非連続な成長を実現するため、株式放出による資金調達(出資やJ-KISS等)を駆使して事業を進捗させる集団。対義語として線形的な成長を目指し、出資による調達を前提としない「オーナービジネス」がある(スモールビジネスという呼称は好みじゃないので使わない)。
・スタートアップの定義は国や地域によって様々で、岸田内閣が掲げるスタートアップ5ヵ年計画では広義のスタートアップとしてオーナービジネスも含めているが、この note ではポール・グレアム氏や 澤山陽平氏、スティーブ・ブランク氏が提唱している「スタートアップ」を踏襲する。
・「株式放出による資金調達を駆使する」ことを前提にすると「スタートアップ=株式会社」となる。合同会社は1株でも持っている人(=社員)が意思決定機関で拒否権を発動できるため出資調達は現実的でない。個人事業もそもそも「経営権」という概念がないのでこのスタートアップに含めていない。

(1)商 号(会社名)
・法人検索(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp)で同一市区町村に同名称の法人がないか、ドメイン(---.com, ---.jp 等)は既に使用されていないかを確認するといいと思います。
・尚、弊社はリリース予定のサービスがYourtory ですが、行政や金融機関での手続き、マスメディアでの掲載を考慮して「ユアトリー」というカタカナにしました。蛇足ですが、定款では英語名称を定めることもでき、弊社はYourtory Inc. としています(敬愛する Apple Inc. を参考にした)。

(2)決算期
・法人の事業年度最終月です。決算期で1年間の事業成績(PL=損益計算書等)を締め、2ヶ月以内に税務申告を行います。個人なら12月のみ(確定申告は3月中旬が期限)ですが、法人は1月〜12月で自由に決算期を選べます。
・将来的に株式上場を目指すなら3月と12月は避ける方が無難という声を聞きます。多くの上場企業が3月や12月を決算期としており、上場に必要な監査(決算書の数字は信用に足るかチェック)をしてもらうための監査法人が見つからない問題があるからです。実際、公認会計士は大手・中堅問わずに転職や独立する人が急増しており人手不足に拍車がかかっています。
・ユアトリー株式会社では「6月」を決算期にしましたが、大きく2つの理由があります。
(理由1)3月と12月の決算企業が多いので、これら企業の直近決算に1/4や1/2を乗じて比較分析がしやすい(完全に金融マン目線です 笑)。
(理由2)決算期は繁忙期より閑散期に置く方が望ましいと一般的に言われています。「今期の売上と利益はどれくらいで着地するのか」が閑散期間近だと予測し易いからです。理由1の比較分析の容易性は9月決算でも達成されますが、7〜8月の夏休みシーズンで業績が上がる沖縄の傾向を考慮すると事業進捗後は当期決算の予実管理が難しくなる可能性があると判断し、9月ではなく6月決算としました。
・とはいえユニクロは8月決算で、みんな大好きサンエーは2月決算です。なので「適当に決めてもいいよ」と言いたいところですが、法人を登記したのが7月で決算期を8月にすると起業してすぐに税務申告(この場合10月末期限)が必要になります。決算期は何月でもいいけど、少なくとも法人登記から遠くの月を決算期にすることで「面倒な税務処理を起業後すぐはやらない」というのはどの企業に対してもオススメできると思います。

(3)目 的
・目的にない事業は行えません。また、許認可がなくても目的には掲載できます。つまり、飲食業許可がなくても飲食店営業を目的に記載できます。
・ユアトリー株式会社では9つだけ設定しました。株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社サイバーエージェント、株式会社メルカリの上場3社の定款を参考にしております。上場企業の定款はネットで閲覧できるので類似サービスを提供している企業の定款は非常に参考になります。
・事業目的は載せられるだけ載せた方がいいという意見があります。後から変更するのに登記手数料(数万円)と時間(1〜2週間)を要するのでその意見も理解できますが、私は貸付担当だった時に目的盛り沢山の定款と登記簿を確認するのがクソほど面倒だったのでユアトリー株式会社ではシンプルにしています。
・余談ですが、貸金業(お金を貸して利息を得る)が事業目的にあると金融機関との取引に支障を来す可能性があるので必要でないなら記載しないことをオススメします。

(4)出資金と発行株式数
・出資金は100万円にしました。これより少なくも多くもできましたが、借入や補助金の調達まで工面できる程度の自己資金と私個人の生活費を考慮してこの水準としました。
・1株1円で100万株を発行しました。将来的な第三者割当増資で創業株主(私とCTO・中村)が希薄化防止のため株式分割するという面倒な手続きをしたくなかったので大量の株を設立当初で発行しました。
・第三者割当増資(新たに発行した株式を投資家に渡してお金をもらう)、希薄化(株式の持分低下)、株式分割(1株を⚪︎株に分ける)はいずれも専門用語という水準から格下げされた感がありますので、ここでは詳細な説明を割愛します。

(5)発行可能株式総数
・出資金の4倍という話をよく聞きますが、これは上場企業が発行済株式数の4倍までしか発行可能株式総数を設定できないというルールから来ていると思われます。正直、ここは適当に1,000万株にしました。覚え易いからです。
・上場まで何年かかるか、そこまでの資本政策はどうするか、このタイミングで緻密エクイティ・ストーリーを計算するのは徒労な気がしたためです。ただ、サイバーエージェント・藤田晋さんのような目に遭わないために上場直後でも51%を創業メンバーが保有している状態にしたいとは思っています。

(6)官報掲載 or 電子官報
・商業登記簿謄本(※)の内容変更をどこで公にするか、紙の官報(TSR)か電子官報か選ぶというものです。電子官報で出すと関東財務局に次年度以降から決算書類を提出することになるようで、さすがにその手間とリスクは無視できないなと思い紙の官報に掲載を選びました。
・スタートアップは競合他社に財務状態を簡易的にでも知られるとCAC(顧客獲得単価)等の主要指標を推測される恐れがあります。電子官報でその様なリスクは取りたくないなと思い、消去法で官報掲載としました。尚、金融マン時代に見た企業の多くも官報掲載がスタンダードでした。

(※)登記簿
・履歴全部事項証明書、現在事項証明書、代表者事項証明書、閉鎖事項証明書がありますが、「登記簿持ってきて」とお願いされたら何も考えずに「履歴全部事項証明書を法務局から取ってくる」という認識で結構です。(2)を除く上記項目に加え、3年前の1月1日以降に変更があった「履歴が全て」載っています。なので履歴全部事項証明書です。銀行口座作成、補助金申請、融資申請、何かの契約等々、出番の多い資料ですが有効期限は一般的に3ヶ月なので必要な時に発行するスタンスでいいです。

(7)役員任期
・1年〜10年まで選べます。ユアトリー株式会社は2年にしました。短い場合のデメリットと、長い場合のデメリットを並記します。
(任期1年)毎年、期末に退任と就任の事務作業と手数料が必要。
(任期10年)10年間は変更できない上、期待に沿えなかったり社内で問題を起こして退任させる時に残りの任期分、役員報酬を支払うよう訴訟を起こされる可能性がある。
・ということで、役員任期は2年としました。将来的に就任する取締役に2年で退任してもらう道を残しておいた方が安全と考えたたためです。

(※)取締役と取締役会について
・合同会社では取締役という概念はありません。株式会社の役員について取締役と言い、代表権がある取締役を代表取締役と言います。
・また、取締役会は株主(会社の所有者)から会社経営における意思決定を委任された機関になります。いわゆる「所有と経営の分離」です。
・取締役会を構成するためには最低3人の取締役と1人の監査役(取締役会のチェッカー)を要するため相応のコストがかかります。ガバナンス上は取締役会がある方が望ましいですが、小規模スタートアップのユアトリー株式会社もまだ「取締役会非設置会社」です。

(終わりに)
・法人登記は司法書士にお願いすると全て代行してくれます。私も、マイナンバーカードの関係で電子署名の手続きを司法書士宮城事務所・宮城直先生(沖縄県西原町)にお願いしました。
・一方、それ以外の多くの手続きを自分でやってみて非常にいい勉強になりました。「お金がある&時間がない」ケース以外では、Google 検索やYouTube、書籍で情報を集めながら自分で挑戦してみるのもいいかなと思います。
・法人登記や不動産登記など、登記手続きは司法書士の独占業務でありアドバイスや代行は無償でも行えないことになっています。那覇地方法務局にも同様の注意書きがありましたので、起業の際は十分にご注意ください!!!


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