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本日、金融マン辞めて起業します

(1)はじめに
琉球大学を卒業後、4年半お世話になった地元沖縄の政府系金融機関「沖縄振興開発金融公庫」を本日退職しました。金融マンとしてはもちろん、1社会人として成長させて頂きまして、誠にありがとうございました。
私上原は、令和5年7月5日に友人のエンジニア・中村京平とユアトリー株式会社を創業します。起業家やクリエイターの、事業への想いや創業経緯といった Story に付加価値を創出するプラットフォーム、Yourtoryを開発するスタートアップです。
この note では、金融マンだった私が起業に至るまでの過程を、過去の記憶も辿りながらご紹介します。原稿用紙12枚分ありますが、終盤には人生初の修羅場もご用意しておりますので是非最後までお付き合いください!
※写真は私が住み込む沖縄市コザのシェアハウス「ギークハウス沖縄」。ユアトリー株式会社はそこから徒歩10秒の Startup Lab Lagoon に登記予定。

(2)私と起業
「誰が一番お金持ちなの?」
運転する父に、私が質問したのは幼稚園生くらいの時でした。
Microsoftを共同創業したビル・ゲイツは、その時から私の偉人リストに名を連ねています(直近では大谷翔平も加入)。
琉球大学に在学中、Apple のスティーブ・ジョブズと Facebook(現・Meta)のマーク・ザッカーバーグに関する本や映画に感銘を受け、「俺はいつ起業しようかなぁ」と漠然と思いながら大学を卒業しました。
会社で退職を告げた時は多くの方が驚いていたのに対し、従兄弟や友人(特に琉大の同期)は「いよいよだね」「時間かかったね」という反応が多かったのは非常に印象的でした。「なんだ、みんな分かってんじゃん」って妙に嬉しかったです。
2017年8月、私が琉大4年の時、その従兄弟を含む地元(沖縄県那覇市小禄)の人たちと一緒に、移民した親戚を訪ねるためブラジルに3週間ほど滞在しました。13歳離れている従兄弟の上原奨太郎は、那覇市の浮島通りで anshare という革製品専門店を営む起業家です。バスや電車、休憩時間の散歩などブラジルで多くの時間を過ごすうちに彼のanshare 創業ストーリーに自然と聞き入りました。本や映画ではない「リアルな起業」を感じたのはその時が初めてで、以来、上原奨太郎にはスティーブ・ジョブズ並みの憧れと尊敬を持つようになります。
ちなみに、彼が脱サラしてanshareを創業したのが27歳だったので、私も27歳で起業することになったのは無意識に合わせに行ったのかもしれません。上原奨太郎の anshare 創業ストーリーは本当に面白いので、Yourtoryで発信できるようお願いしています!

(3)名護市立中央図書館での出会い
2021年4月、金融マン3年目にして沖縄県北部に位置する名護市の支店へ転勤になりました。
車を持たない私は自転車が主な移動手段だったため、社員寮から近い名護市立中央図書館、バッティングセンター、ムエタイジムには大変お世話になりました。
2021年のゴールデンウィークに、図書館の起業関連コーナーにあった黄色い本「起業の科学」に目が留まります。田所雅之さんが書かれたこの本は、「スタートアップの成功に再現性はないが、スタートアップを科学的に考察することで失敗は減らせる」という仮説に基づき、豊富な事例をイラストや図を駆使して頭に叩き込んでくれる最高の本です。日本スタートアップ界のバイブルと言っても過言ではないかもしれません。
起業の科学とあのタイミングで出会えたのは幸運でした。というのも、オーナービジネス向けの金融実務を通して財務会計や創業の基礎を身につけていたため、ビジネスモデルやファイナンスが全く異なるスタートアップを学ぶ基礎体力を持ち合わせていたからです。起業の科学が出版された2017年に私は大学4年生でしたが、当時読んでも「いいこと言ってるな」程度で終わっていた気がします。いま振り返ると、あの連休中に名護市の図書館でふと見つけたのがベストタイミングだったなと感じています。
この「起業の科学」がきっかけとなり「アイデアを磨くだけならサラリーマンでもできるな」と思い、ライフワークの一環としてスタートアップの深淵へ足を踏み入れました。
余談ですが、私の感覚ではオーナービジネスの起業とスタートアップの起業は野球とサッカーぐらい違います。優劣ではなく、そもそもゲームのルールが異なります。

(4)沖縄スタートアップエコシステム
「事業案があれば一緒にそれを育てましょう」という参加費無料のプログラムをたまたまTwitterで見かけたのが2021年7月でした。私も法人を登記するStartup Lab Lagoon の公式アカウントからのツイートで、締切間近だったので約15回の講義日程を確認してすぐに応募しました。それが、ターニングポイントになる Okinawa Startup University(通称:スタユニ) でした。
申請した事業案はバイブルを使って検証後わずか1ヶ月で廃案にしましたが、半年に渡るスタユニがきっかけでメンターを担当していた麻生要一さんを初めとする多くの起業家・投資家と出会うことができました。
2022年夏にも第二回のスタユニに応募し、その時の事業案が絶賛開発中のStory Sharing Platform = Yourtory(ユアトリー)です。
共同創業者 CTOの中村京平ともコミュニティが形成されている沖縄市コザのソーシャルバー「べべばー」で出会うなど、先人たちが形成してきたこのエコシステムの一員になれたことが私にとってかけがえのない無形資産となっています。

(5)退職の決意
「退職しなきゃな」と考えさせられた機会が2回ありました。
まず最初は、なんと言っても徹夜です。平日朝と土日はもちろん、仕事から帰ったら手を洗ってすぐ Mac を起動させるのですが、ご飯とシャワーを後回しにして夜中までひたすらコードを書くこともしばしばありました。頭にある構想をプロダクトに落とし込むのは充実しつつも体力的にはキツかったです。2022年の秋頃、原因が特定できないエラーにハマり数日間も前に進めないことがありました。ただでさえ時間がないサラリーマンが数日も足止めするのは精神衛生上も良くないところ、「あれ?これでうまくいくんじゃ・・・」と閃いた瞬間にハッと目が覚めたことがありました。その日の私は、夢の中でもプログラミングをしていたんです。衝撃のあまりこの閃きがなんだったかは覚えていませんが、この時に初めて「そろそろ二刀流はムリだな」と悟りました(エラーはFlutter大学の講師・ダイゴ氏に聞いたら数秒で片付けてくれました)。
次なる退職の悟りは、スタユニから私のメンターとしてお世話になっている麻生要一さん、この人です。連続起業家・経営者・個人投資家・機関投資家として活躍している方です(まだ40歳です・・・)。
2022年10月30日(日)、スタユニでとある企画がありました。1日で成果を最もあげた起業家4人に、11月に宜野湾市のコンベンションセンターで開催されるRisorTechでスタートアップ・ピッチ(事業案のプレゼン)をしてもいいよというものでした。エンジニアでもない私が作っているサービスはクソほどしょぼく、そもそも起業もしていないので選ばれる訳ないと思い気楽にやっていました。しかし幸運にも、その日初めて顧客を1人見つけることができ、なんと麻生さんが私を指名したのです。最後の4人目に「上原さん!!!」と呼ばれた時のことは今でも鮮明に覚えています。「僕ですか!?!?」って思わず叫びました。
ちなみに、Yourtory の顧客第1号は沖縄市コザで直焙煎コーヒーを提供しているAMBER HOLIC. の野村雄太さんです。カッピング体験や焙煎機メンテナンスの見学と、その日以降も非常にお世話になっている方です。野村さんはQグレーダーという資格を有し、コーヒー勉強会やイベントも主催する生粋のコーヒー職人ですので、コザまでお越しの際はぜひお立ち寄りください。
話を戻しまして、このスタートアップ・ピッチへの登壇が決まった翌日、10月31日(月)に退職の意思を伝えました。感慨深いハロウィーンでした。
そして2022年11月18日(金)のピッチが、私にとって人生初の修羅場になり忘れられない日になりました(もちろんいい意味で・・・)。

(6)修羅場が人を強くする
・スタートアップピッチに出場することが会社の規程で問題ないか、入社して初めて就業規程を読み込みました。 長いし退屈だし、全て読めるようなボリュームでもないので該当しそうなワードを片っ端から検索していきました。後にも先にも、Ctrl + F にあれほどお世話になることはないでしょう。
・問題ないと確信してホッとしましたが、ピッチ前日にSlackで送られてきた画像に私は唖然とします。登壇するのは大きなメインステージで、その前に100席くらい椅子が並べられていたからです。残業していたため Slack に気づいたのは夜9時過ぎでした。「こんな大きいステージって知ってたら断ってたのに・・・」。明け方まで眠れませんでした。
・当日は午前中だけ出社して、高速バスとタクシーで会場のコンベンションセンターに行きました。案の定、会社の職員が数人おり当日辞退も頭をよぎりましたが、私を選んでくれた麻生さんに申し訳ないし、いつか本を書く時のネタになる大丈夫と、どうにかポジティブに思考を切り替え思いっきりピッチをしました。起業家仲間の株式会社lollol・キャンヒロユキさんの動画の甲斐あり(スタートアップ界隈では)大好評でした。
直属の上司には大変なご迷惑をおかけすることになりましたが、終わってみると、今後ハードシングスに直面しても「本を書くときのネタ思考」を使えばどうにかなると気づけたのは非常に大きな収穫でした。

(7)終わりに
少し時計の針を戻して2019年11月、私は初めて、調査・審査・融資実行という一連の工程を、とあるラテアート職人の創業融資で経験しました(後になって偶然知りましたが、彼も創業したのは27歳でした)。
それから月日は経ち2021年11月、仕事中に蛍光灯をぼんやり眺めている時にふと「あのラテアート職人の創業ストーリー、顧客にも届けられたら面白かったな」と思い、その日の夜に上原奨太郎とのライン電話による壁打ちを経て Yourtory は立ち上がりました。

その後、

・独学していたプログラミングでエラー解消のサポートをしてくれた多くのエンジニア仲間(そのうち1人が共同創業者CTO・中村京平)
・いつもユーザーヒアリングに協力してくれる従兄弟とたくさんの友人たち
・数多くのロゴ案を作成し、1年半かけて一緒に最高のロゴを生み出してくれた柔道家(81キロ級・元沖縄県チャンピオン)
・営業に必要だからと、軽自動車と保険まで手配してくれた長身・イケメンのバスケットボーラー
・いつも情報と機会を提供してくれる沖縄スタートアップエコシステム関係者の皆様

法人登記前にも関わらず、多くの方の支えがあり今日まで試行錯誤を続けてこれました。この note を書いている時にもたくさんの方の顔が浮かんできました。本当にありがとうございました。
起業後は更にお願いを重ねることになりそうですが(お願いすることが確実ですが)、いつも沖縄を盛り上げている起業家やクリエイターと一緒に、私は起業家として、ユアトリー株式会社は沖縄市コザのスタートアップとして、目覚ましく成長していく姿をお見せすることが最高の恩返しであると肝に銘じています。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!!!

令和5年6月30日(金)
先ほど退職した沖縄振興開発金融公庫を、サンエー那覇メインプレイスのスターバックスで眺めながら

ユアトリー株式会社
共同創業者 CEO
上原 宇行


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