kkkって笑いたい。
韓国ではwwwと似たような表現でkkkを使う。
僕はそのことをフィリピンの売春街で働く、何人もの韓国人の固定客を持つフィリピン人の女の子から教えてもらった。
当時、僕はフィリピンに語学留学をしていた。会社がどうしてそこの場所を選んだか理解に苦しむのだけど、その学校はフィリピンで2番目に大きい夜の繁華街のすぐ近くだった。
着いて一週間が経ったとき英語の授業の復習をしながら僕は決意した。何事も中途半端は良くない、と。それからは、すっぱりと英語の勉強はやめ、毎夜、繁華街に出掛けて行った。毎晩、欠かさず。
そんなときに彼女と会った。
はじめて会った時、彼女はまるで夏祭りの水風船みたいにガラスケースのようなステージに他の女の子と一緒にぎゅうぎゅうに詰められて、同じところをぐるぐると回っていた。
それから彼女と仲良くなり、一緒にお酒を飲んだり、カカオトークを使って英語でチャットをしたりしていた。
彼女はよくkkkを使った。
なんか直感的にwwwよりもkkkの方がクククと笑ってる雰囲気があって、僕は気に入っている。
彼女は何人もの韓国人の固定客を持っていて、週末になると近くの大型ショッピングモールで男性客と買い物をしている姿をよく見かけた。
その土地では韓国人男性客が圧倒的に多く、また人気も日本人男性よりもある。
彼女は、そのなかの一人のお客さんのことが好きなようだった。たまにフェイスブックで「missing you」と憂いのある表情のセルフィーを投稿していた。その彼へのアピールだったかもしれない。
僕は彼女には何かしら埋められない空白があるのだと思っていた。欠乏感、何かが欠けているという感覚。空虚さや、虚無感。埋められない何かを満たすための売春行為、みたいな。
それをクラスメートに話した。そいつは在学中に公認会計士の資格を取り、慶応の大学院生をしていて外見がめちゃくちゃチャラいやつだった。「んなわけないですよ、金に決まってるじゃないですか。金のためですよ、金」そう言って笑っていた。
その後、僕が日本に戻った後もしばらく彼女との交友関係は続いた。たまに彼女から電話もしてきてくれた。色んなことを話したし、彼女のことを知った。
彼女はごく普通の女の子だった。家庭にもこれといった特徴もないありふれた女の子だった。
なぜ売春とかしてたのかはわからない。たぶん、彼のいう通り、ただ遊ぶお金が欲しかっただけなんだと、今は思う。
フェイスブックの投稿も、その後、専門学校でクラスメートとふざけている写真とか旅行の写真とか家族との写真とか、ごく平凡なものばかりだった。今はもうどうしてるのかは知らない。フェイスブックもインスタも数年前に投稿が途絶えたままだ。
たまに、kkkと笑いたくなる時がある。