youの血統考察 #43 -G1血統考察 スプリンターズS〜天皇賞・秋-
こんばんは。
今週から秋のG1戦線が開幕するということで、今回はG1レースにおける血統傾向を、過去の結果からまとめたものをご紹介したいと思います。
G1の血統傾向を理解するということ=そのコースやその条件で適した血統を理解するということにも繋がります。今回のシリーズで紹介する計12Rに限らず平場のレースにおいても応用は効きますし、何度も何度も読み返して頂けるような内容になっているかと思います。
今回、ご紹介するレースはスプリンターズSから天皇賞・秋までの計4Rです。前・中・後編の3部作で有馬記念までを予定しております。
今回の記事は、「私は血統初心者だ」という方や、「血統についてまだよくわからないけど、これから勉強していきたい」という方にも読んで頂きたい記事です。血統について興味を持って頂けるきっかけになればとも思っています。
① スプリンターズS 中山芝1200m
中山芝1200mというコースは、スタートしてすぐに下り坂、最後のゴール前は急な登り坂というメリハリのあるコース形態をしており、他競馬場の1200mよりも「テンのダッシュ力+ゴール前で粘る力」が要求されるコースとなっています。
それがG1レベルとなればさらに顕著で、より速いアメリカ的な短距離ダートの才能が必要となります。ダート短距離のレースというのは、"テンが速い+ラストの失速幅が大きい"というラップになりやすく、その辺りが芝1200mのG1級で求められる能力と酷似することから、このような血統傾向が発生します。
•フォーティナイナー系
先日、同系統のサウスヴィグラス産駒がダ1200mの日本レコードを更新しました。サウスヴィグラスのような短距離ダートをより速く走る才能がフォーティナイナー系には備わっているので、このレースと好相性であるとご理解頂ければイメージしやすいかと思います。
18年
1着 ファインニードル(父アドマイヤムーン)
3着 ラインスピリット(父スウェプトオーヴァーボード)
17年
1着 レッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)
3着 ワンスインナムーン(父アドマイヤムーン)
16年
1着 レッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)
•ゴーンウェスト系
昨年1着タワーオブロンドン、2着モズスーパーフレアとワンツーを決めた父系統です。ゴーンウェスト系の代表種牡馬と言えば、モズスーパーフレアの父でもあるSpeightstown(スパイツタウン)。こちらはダ1400mの日本レコードを持つマテラスカイの父にも該当します。ダート短距離を速く走れる血統と言うことができ、スプリンターズSとも好相性です。
19年
1着 タワーオブロンドン(父Raven's Pass)
2着 モズスーパーフレア(父Speightstown)
まだ登場から日が浅い系統なので好走実績は少ないですが、これからどんどん勢力を伸ばしてくるのではないかと考えています。
•ニジンスキーの血
欧州的な粘りに特徴がある血統で、中山の急坂を最後まで粘り通す"馬力"の部分を底上げしてくれます。この血統は新潟芝1000mとの相性も良い血統です。新潟芝1000mは、「テンが速い+ラスト1Fの失速幅が大きいダート短距離的なレース」になりやすいことから、スプリンターズSとの適性のリンクが発生します。実際に新潟芝1000mの日本レコードを出したカルストンライトオもこのレースを制覇しています。
ただ、あまり近くにあり過ぎると"馬力"の部分が前に出過ぎてしまい、速さの邪魔をしてしまうので、少し奥にあるぐらいがベターです。
18年
1着 ファインニードル(母母父ニジンスキー系)
2着 ラブカンプー(父ニジンスキー内包)
3着 ラインスピリット(母母父ニジンスキー系)
17年
2着 レッツゴードンキ(父&母母父ニジンスキー内包)
16年
3着 ソルヴェイグ(母母父ニジンスキー系)
15年
1着 ストレイトガール(母父ニジンスキー内包)
2着 サクラゴスペル(父ニジンスキー内包)
3着 ウキヨノカゼ(母父ニジンスキー系)
以上がスプリンターズSの血統傾向です。
② 秋華賞 京都芝2000m
牝馬三冠の最終戦。三冠レースの中で最も直線の短いコースという特性上、早めスパートが起こったり、前半から流れる展開になることも多く、ゆったり流れやすい前哨戦とは逆の適性(持続力、耐久力)が求められることも多いです。
昨年はローズSの勝ち馬ダノンファンタジーが1人気ながら8着、ローズSで4着だったシゲルピンクダイヤが10人気という低評価を覆し3着という巻き返しも発生しました。ここが秋華賞が荒れやすい要因でもあります。
•ヌレイエフ
近10年の勝ち馬のうち7頭が持っており、ここ5年では勝ち馬すべてが共通して持っていた血統です。やはり日本的な"溜めて伸びる能力"が要求されるレースではなく、欧州的な"耐久力"が求められやすいレースということもあり、ヌレイエフから来る耐久力は持っていると有利になりやすいです。
19年
1着 クロノジェネシス(父ヌレイエフ内包)
3着 シゲルピンクダイヤ(母父サドラーズウェルズ系≒ヌレイエフ)
18年
1着 アーモンドアイ(母母父ヌレイエフ)
3着 カンタービレ(母父サドラーズウェルズ系≒ヌレイエフ)
17年
1着 ディアドラ(母母母父ヌレイエフ)
2着 リスグラシュー(母父サドラーズウェルズ内包≒ヌレイエフ)
3着 モズカッチャン(母父ヌレイエフ内包)
16年
1着 ヴィブロス(母母父ヌレイエフ)
15年
1着 ミッキークイーン(母父ヌレイエフ系)
3着 マキシマムドパリ(父ヌレイエフ内包)
•ダンチヒ
ある程度流れる展開になる場合は、追走するためのスピードの底上げが必要。そのために芝短距離のレコード血統であるダンチヒの血は有効です。その中でもより耐久力に優れた欧州型のダンチヒ(=デインヒル系)が特に有利です。
19年
3着 シゲルピンクダイヤ(母母父ダンチヒ系)
18年
2着 ミッキーチャーム(母父デインヒル系)
17年
1着 ディアドラ(父デインヒル系)
3着 モズカッチャン(父デインヒル系)
15年
2着 クイーンズリング(母父ダンチヒ系)
•ナスルーラ系
京都コースは3コーナーから下り坂。そのため下り坂を得意とするナスルーラの血はこのレースにおいて非常に有効です。その中でも特に下り坂適性が高く天皇賞・春においても有効なプリンスリーギフトの血や、芝中長距離適性の高い欧州型のナスルーラ系(ネヴァーベンド、ブラッシンググルーム、トニービン)を持つ馬は好走例が多い傾向にあります。
19年
1着 クロノジェネシス(父ブラッシンググルーム系)
3着 シゲルピンクダイヤ(母父ネヴァーベンド内包)
18年
2着 ミッキーチャーム(母母父&3代母プリンスリーギフト系持ち)
3着 カンタービレ(母母父ネヴァーベンド内包)
17年
2着 リスグラシュー(父トニービン内包&母母父ネヴァーベンド系)
3着 モズカッチャン(母父ネヴァーベンド内包)
16年
1着 ヴィブロス(母母母父ブラッシンググルーム)
2着 パールコード(母母母父ネヴァーベンド)
15年
1着 ミッキークイーン(母父ブラッシンググルーム内包)
2着 クイーンズリング(母母母父ネヴァーベンド系)
3着 マキシマムドパリ(父ネヴァーベンド内包&母母父欧州型ナスルーラ系)
以上が秋華賞の血統傾向です。
③ 菊花賞 京都芝3000m
牡馬三冠の最終戦。3000mという距離は全馬にとって大幅な距離延長というシチュエーションになる為、「初距離への大幅な延長」というところがポイントになります。そのため米国的な速さよりも、欧州的なタフさを持つ馬の方が有利にはなりやすいです。
•ダンスインザダーク
自身がクラシック2冠を無冠で終わりながら菊花賞で突如の豪脚を見せて勝利したたように、ダンスインザダークの血というのは"初距離への延長"という局面において有利に働きます。また03,04年には同産駒がこのレースを連覇しています。
※過去10年 父or母父ダンスインザダーク成績
【1-1-2-1】
勝率20.0% 複勝率80.0%
単勝回収率384.0% 複勝回収率428.0%(全兄弟のトーセンダンス産駒も含む)
18年
3着 ユーキャンスマイル(母父ダンスインザダーク)
12年
3着 ユウキソルジャー(父トーセンダンス=ダンスインザダーク)
09年
1着 スリーロールス(父ダンスインザダーク)
2着 フォゲッタブル(父ダンスインザダーク)
•ディープやステゴは◎、ハーツは△
近年の菊花賞(天皇賞・春もそうですが)は、スローになりやすく長距離向きの資質があまり求められません。むしろそういった配合だと、どうしてもトップスピードに欠けがちな馬になりやすいため、最後の直線で伸びを欠いてしまうことも多いです。
ハーツクライは、長距離に強い種牡馬ではありますが、リスグラシューやジャスタウェイのように古馬になってから本格化する傾向があり、この菊花賞の時期には完成度の部分で他馬に劣ってしまうケースが多く、あまり良い結果を残せていません。ただし天皇賞・春に関しては、自身の成長力が追い付くため好走例も多くなる傾向にあります。
またディープインパクト産駒に関しては、母型にタフな欧州型血統を持つ馬が特に有利です。皐月賞やダービーに関しては、速さに特化したディープ×米国型の方が有利ですが、菊花賞に関しては逆転現象が起こります。
19年
1着 ワールドプレミア(父ディープ×母父欧州型)
2着 サトノルークス(父ディープ×母父欧州型)
ハーツクライ産駒→11着
18年
1着 フィエールマン(父ディープ×母父欧州型)
2着 エタリオウ(父ステイゴールド)
ハーツクライ産駒→6,10着
17年
1着 キセキ(母父ディープインパクト)
3着 ポポカテペトル(父ディープインパクト)
ハーツクライ産駒→10,17,18着
16年
1着 サトノダイヤモンド(父ディープインパクト)
2着 レインボーライン(父ステイゴールド)
ハーツクライ産駒→8着
15年
2着 リアルスティール(父ディープインパクト×欧州牝系)
•ナスルーラ系
ここは秋華賞と重なる部分でもありますが、下り坂適性の高いプリンスリーギフト系や芝中長距離適性の高い欧州型ナスルーラ(ネヴァーベンド、トニービン)の血はこのレースにおいても有効です。
19年
2着 サトノルークス(母母父ネヴァーベンド系)
3着 ヴェロックス(父トニービン内包)
18年
1着 フィエールマン(母母父プリンスリーギフト系)
2着 エタリオウ(父プリンスリーギフト内包)
3着 ユーキャンスマイル(4代母父プリンスリーギフト系)
17年
1着 キセキ(父トニービン内包)
16年
2着 レインボーライン(父プリンスリーギフト内包)
15年
1着 キタサンブラック(母父プリンスリーギフト系)
3着 リアファル(母母父ネヴァーベンド系)
以上が菊花賞の血統傾向です。
④ 天皇賞・秋 東京芝2000m
古馬中距離の王道G1。東京という大箱なコース形態でありながら、非常に良い馬場状態で行われることも多く、「道中の追走力+直線伸びる速さ」と総合的な能力が問われます。
•マイル(1600m)適性
昨年は歴代で2番目に早い1.56.2というタイム(芝2000m全てのレースにおいても歴代で2番目に早いタイム)でアーモンドアイが優勝。1〜3着馬までに共通していたことは、「マイルG1の勝利経験があった」ことでした。このように良馬場で行われる天皇賞・秋においては、道中の追走スピードが高いレベルで求められるので、マイルにも対応できる馬でないと追走の段階で苦戦しやすいという点がポイントです。
19年
1着 アーモンドアイ(桜花賞 1着)
2着 ダノンプレミアム(朝日杯FS 1着)
3着 アエロリット(NHKマイルC 1着)
18年
2着 サングレーザー(マイルCS 3着)
16年
1着 モーリス(マイルG1 4勝)
3着 ステファノス(富士S 1着)
15年
2着 ステファノス(富士S 1着)
3着 イスラボニータ(マイルCS 2着など)
•速さの源となるノーザンダンサー系
先ほどの話と繋がりますが、道中の追走スピードが大事ということで"速さ"の源となるノーザンダンサーの血(特にストームキャット、ヴァイスリージェント、ダンチヒ)は有効です。
19年
1着 アーモンドアイ(父ストームキャット内包)
2着 ダノンプレミアム(母母父ダンチヒ系)
3着 アエロリット(父ヴァイスリージェント系)
18年
2着 サングレーザー(母父ヴァイスリージェント系)
3着 キセキ(母母母父ダンチヒ)
17年
3着 レインボーライン(母父ヴァイスリージェント系)
16年
2着 リアルスティール(母父ストームキャット)
3着 ステファノス(母父ヴァイスリージェント系)
2着 ステファノス(母父ヴァイスリージェント系)
•レコードに近い時計だと父非サンデー系の欧州型
良馬場の芝中距離では、一般的にはコントレイルのような父サンデーサイレンス系×米国型血統が良しとされています。ただこの天皇賞・秋というレースに関しては、あまりにも前半から流れてレコードが出るような決着になってしまった場合、足を溜めて強さを発揮する父サンデー系よりも、父非サンデー系の欧州型の方が強さを発揮することがあります。
これは欧州血統の方が、"ハイペースへの耐久力"が高く、他馬がバテたとしても差せる馬力が備わっているからです。
天皇賞・秋 歴代最速タイム
11年 1.56.1
1着 トーセンジョーダン(父トニービン系)
19年 1.56.2
1着 アーモンドアイ(父キングマンボ系)
18年 1.56.8
1着 レイデオロ(父キングマンボ系)
09年 1.57.2
1着 カンパニー(父トニービン系)
08年 1.57.2
1着 ウオッカ(父ロベルト系)
12年 1.57.3
1着 エイシンフラッシュ(父キングマンボ系)
以上が天皇賞・秋の血統傾向です。
最後までご覧頂きありがとうございました。スプリンターズSから天皇賞・秋までの4レースの血統傾向をご紹介致しました。
ご参考になればと思います。
無料記事を読んで、役に立った!馬券的中の助けになった!と思って頂けた場合サポート頂けると励みになります☺️☺️