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料理男子はこう育つーー③クッキーならもう100回は作った

 ボクがスーパーに行ったら、真っ先に向かうのはどこだと思う? ちなみにボクは小学2年生。そう聞いたら、「おかし売り場」と思う人が多いだろうね。その答えはブッブー。正解は「こ・な・う・り・ば」だよ。粉売り場ね。

 ボクは、強力粉と中力粉と薄力粉の違いがわかるよ。グルテンの割合が薄力粉は6〜9%、中力粉は9〜12%、強力粉は12〜15%、さらにパスタ用のデチュラルセモリナ粉は15%以上っていう決まりなの。これはよく行くスーパーに看板があって覚えたよ。粉の使いわけとしては、手打ちうどんなら中力粉、お菓子や天ぷらの衣には薄力粉、パンやぎょうざの皮なら強力粉だね。
 ちなみにお母さんは、こんな人。

かあたんの
粉のえらびは
てきとうだ

 これはボクが考えた「5・7・5」で、お母さんに言ったら大爆笑だった。図星だったんだろうね。なんでも薄力粉で済ませようとするから、ボクからみたら、本当にテキトウ……。ちなみに粒の大きさもそれぞれ違うって、知ってた?

 ボクはこれまでいろいろな粉もの料理を作ってきた。お母さんが買って眺めるだけの雑誌「料理通信」の「粉物上手になる!」も大好きで、ほとんど読んだ。粉料理の中でも一番の得意はクッキーだね。得意すぎて、ボクが先生の「クッキー教室」も2回やったことがあるよ。

 初めてクッキーをたくさん作ったのは、通っていたよーちえんの誕生会のとき。ボクが通っていたよーちえんはちょっと変わっていて、「おたんじょうかい」は子どもたちとお母さんお父さんも一緒にみんなで料理を作るんだ。調理保育っていうの。
 それで、年長さんのボクの誕生会のとき、ボクはコックさんの格好をして、自分でクッキーを焼いてみんなに配りたいなと思ったの。

 ちなみになんでコックさんの格好をしたかったかというと、「おばけのアッチ」が大好きだから! ボクの料理男子のモデルはアッチ。いつかアッチみたいなコックさんになりたいってずっと思ってるの。アッチの話をすると大好きすぎて長くなりそうだから、それはまた今度!

 そう、それでお母さんが先生にボクの気持ちを伝えてくれて、先生たちはもともとお誕生会のデザートには「雪見だいふく」にイチゴをトッピングする予定だったんだけど、雪見だいふくにボクのクッキーをトッピングすることになったんだ! それもみんなには内緒で。ボクはとってもとってもはりきったよ!!

 本当はお誕生会の前の日の夕方にクッキーを焼いておく予定だったんだけど、前の日も暗くなるまで外でいっぱい遊んじゃって。帰ってきてお風呂に入ってご飯を食べたら、もうおねむで……。だから、誕生会の当日に、ボクは早起きをして、お母さんと一緒にクッキーを120枚くらい作ったの。

 ボクが作ったクッキーを、よーちえんのみんなやお母さんたち、お父さんたち、先生も驚いてくれて、「わぁ〜、ようたろうすごーい!」、「おいしいよー!」って言ってくれたのがすごくうれしくて、ボクはますますアッチみたいなコックさんになりたいって思ったんだ。

 ボクの誕生日は12月なんだけど、それからよーちえんを卒園するまでに、何回も何回もクッキーを作っては、先生たちやみんなに配るようになった。いつもお母さんと一緒に作っていたんだけど、あるとき「ボクひとりで作ってみたい!」って思った。

 ある夜、お母さんがほかのお母さんと飲み会に行っていて、ボクはお父さんと留守番をしていた。ボクはその日はお昼寝をしたからなかなか眠くならなくて、お父さんが先に寝ちゃったの。それで、お母さんが夜の10時半くらいに帰ってきたとき、「ねぇ、クッキー作ってもいい?」ってお願いした。ボクは作る気持ちが満々だったから、すでに手ぬぐいを頭に巻いて、料理人っぽくしておいたんだ。
 お母さんは、「こんな夜に?」って驚いていたけど、「お母さん、先にお風呂は入りたいから、できるところまで一人でやってごらん。それならいいよ」って! 夜に幼稚園児一人でクッキー作りさせようっていうところがテキトーなお母さんそのものだよね(笑)

 ついに、ボクひとりで作るときがやってきた! ボクはとても張り切ったよ。お母さんはとっととお風呂に入ってしまったから、材料や道具を出すところからひとりでやった。薄力粉と砂糖と牛乳と卵と……と材料を揃えたかったんだけど、冷蔵庫に入っている牛乳が重くて、ボクだけでは取り出せなかった。バターも冷蔵庫の奥のほうにあって、手が届かなかった。
 だから、薄力粉と砂糖と卵とオリーブオイルと、牛乳の代わりに水を入れた。それと、ちょっと使ってみたかったベーキングパウダーも入れちゃった!
 生地が一つにまとまったところで、お母さんがお風呂から出てきて、ビックリしていた。お母さんは台所が粉でグチャグチャになっていると思っていたんだって。料理人のボクを甘く見すぎだ! ボクは丸めた生地を綿棒で伸ばして、型で抜いて。オーブンの出し入れはお母さんにやってもらったけど、それ以外は全部ひとりでできたんだ! 焼きあがったクッキーは・・・

「おっとっとみたい!」とお母さんが言った。

 ベーキングパウダーをこっそり入れちゃったから、ぷっくり膨らんじゃったんだ。それでもおいしかったから、次の日またよーちえんで「おっとっとクッキーだよ」って言いながらみんなに配った。ボクひとりで作った「おっとっとクッキー」も、友だちやお母さんたちにとっても喜んでもらえたよ。

 ボクは今も、友だちの誕生日にはクッキーを焼いてプレゼントしてる。一番人気は、スノーボールクッキー。ボクのクッキー教室に参加してみたい人がいたら、喜んで教えてあげるよ!


参考文献:料理通信2020年3月号「少ない素材でとびきりの味 粉もの上手になる!」料理通信社

 


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