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改訳「月下独酌」李白

月下独酌

李白



さくらの花のさかりに壺一杯の酒を 独り
飲んでいたが そんなやつあほかに一人もなかった

盃を持ち上るとお月さまを迎えるかたちになって
それで影までもが現れて 三名となった

お月さまはもとから飲むってことが解ってないし
影ときたらこちらを空しく真似してくるだけ

しばらく お月さまと影とそうしていた けれども
楽しいことをするなら春っきゃない――

わたしが歌うとお月さまはうろうろしだした
わたしが踊ると影はどっかへ行った

酔っていないときはいっしょになってはしゃいでいるが
酔っていたらてんでばらばらで

これからもこんな心の通い合わない交遊を約束しあって
ごきげんよう! つぎは星の河の向うで


原文

花间一壶酒,独酌无相亲。
举杯邀明月,对影成三人。
月既不解饮,影徒随我身。
暂伴月将影,行乐须及春。
我歌月徘徊,我舞影零乱。
醒时同交欢,醉后各分散。
永结无情游,相期邈云汉。

花間一壺の酒 独り酌むにあい親しむもの無し
杯を挙げて名月を迎え 影に対して三人を成す
月既に飲を解せず 影いたずらにわが身にしたがう
しばらく月と影とを伴い 行楽すべからく春に及ぶべし
我歌えば月徘徊し 我舞えば影零乱す
醒むる時は同じく交歓し 酔いて後は各おの分散す
永く無情の遊を結び 相期す雲漢のはるかなるに

ノート

Tkhsさんの出題(2020/09/06 11:30)。提出(2020/10/17 21:15) 。

 この改訳は、「零乱」という言葉を「どっかへ行った」と訳したことが気になっている。うまく訳せなかった。
 それ以外は、だいたい原文通りだと思う。
 わたしが訳文で強く出したのは、「盃を挙げてしまったがゆえに仕方なく月を迎えることになってしまった」という嫌々感と、にもかかわらず即座に月光により影までもが際やかに現れ、せっかくの独りの時間が、鬱陶しく邪魔されるという仕方なさである。
 実際のところ、そう読めないだろうか。
 はっきり言って、そういういきさつで、くだらない人間連中をふくめて共に飲まなければならないことが結構しばしばあるわけで、それが今回は、月と影とだから、まあよかった、というのが、この詩の見どころでなくてなんだろう。
 独りだから、月を迎えて、影も数に加えて三人と数えて飲んだというのでは、くだらない。
 ナンセンスの気配があって、わたしは今回訳してみる機会で初めておもしろいいい詩だなと思えた。
 きょう友達とも話しながら、ブルースというか、歌にして訳してみたら、なにか楽しくなりそうな気配を感じた。

     さくらが綺麗だから
     酒を一本 買ってきた
     ひとりで飲んでたら
     だれとも飲みたくねえ

      だれとも飲みたくない oh~

     紙コップかかげたら
     お月さんと目が合った
     よ!ってあいさつしたら
     お月さん 来ちゃった

      だれとも飲みたくない oh~

     お月さんが来たら
     とってもまぶしくって
     床でもう酔いつぶれて
     寝ている俺の影もいる

      だれとも飲みたくない oh~


 へたくそでごめーん! でも、こんな感じで、聴いていると、「あ、これ月下独酌じゃん」って思うような歌詞で歌ったら、しゃれてるよね。だれか一緒に作りません?
アハハ!




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