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トガリズムイベントの歌パート編に見る、前田玲奈さんと相坂優歌さんの表現力の高さ

第二部の歌唱コーナーにて、前田玲奈さんがリトルマーメイドの『パートオブユアワールド』を歌った。

清楚なメイド服で歌うリトルマーメイド。
最初はミスマッチな気もした。

しかし、青い照明に染まった会場で、イントロからすでに玲奈さんの表情はスッと変わっていた。
歌い出す前から、そこにはもう陸に憧れる人魚の少女がいたのだ。

歌唱力の高さもさることながら、特筆すべきはその表情、動き、仕草。
玲奈さんの放つ表現のすべては、完全にアリエルだった。
ステージだけでなく客席の通路まで泳ぎ回り、会場全体が海底になったような一体感。
その瞬間客席の私たちは、マーメイドが住まう海の住人になった。
サンゴであり、海藻であり、エビでありカニでありシャコでありフジツボであり……とにかく我々は海底で、マーメイド玲奈を彩るための何かだった。そういう気がした。(ちなみにマーメイド玲奈が「ねえ、これ欲しい?20個もあるの」と示したのはカラオケのデンモクだった。きっとこの海には、まねきねことかカラ鉄がテナントごと沈んでいるのだろう)

くるくると歌い踊り、最後はステージに戻って、床に静かに座る。
そこにいたのはどうみても本物の人魚だった。
……そう、本物の人魚はメイド服を着ていたのだ。
これは歴史が変わる。

一部のジェスチャーゲームのときにも感じたことだが、玲奈さんは声優でありながら、言葉を使わない表現もとても上手だ。
表情、しぐさ、動き、身振り手振りとその緩急。
すべてを使って表現する。
ミュージカルや舞台も向いているんじゃないかと思う(そういえば朗読劇で老女を演じたときの表現もとても素敵だった)

もちろん、声そのものも素晴らしく美しい。
透明感と艶が絶妙なバランスで存在している声質は最高の楽器だと思う。
表情、仕草といった彼女の全ての視覚的表現を下支えしているのは、やはり声なのだ。
この人を好きになってよかったと心から思う。


海底の余韻に浸っているのも束の間、今度は相坂優歌さんが登場した。
青い光の会場が一転してピンクに変わり、流れたのは「可愛くてごめん」のイントロだった。
髪型とメイド服にぴったりと合った選曲。イベントコンセプトを考慮してくれたのだと感じる。

にわか相坂くんファンとして個人的に思うことだけれど、この方は本当に「声に込めるパワー」が凄まじい(みんな“相坂くん”と呼ぶのでそうしている。そういうしきたりだと思っている)。
歌詞や曲のストーリーをさらに超えて、とにかくその声、空気を震わせて発するそのエネルギーの純度が高いのだ。

玲奈さんと同じくジェスチャーゲームを例に出すならば、相坂くんは一生懸命身振り手振りで伝えようとしてもなかなか伝えるのが難しい様子だった。
多分、“今心の中にない感情”を顔や体で表すのが難しいタイプなんじゃないかと思う(ファンとしての解像度がまだ高くないせいかもしれないが)。

ところが、相坂くんは“伝えたい気持ち”を声に乗せたときの爆発力がすごい。
誰かを励ましたい、癒したい、感謝を伝えたい……そういう感情のすべて。
曲調や歌詞に直接は含まれてない彼女のメッセージさえも、声のみでバシバシと伝えてくるのだ。

会場でペンライトを振りながら、私はそのメッセージを全身に浴びた。
このイベントに参加する前、個人的に少しつらいなと思うことがあった私であったが、相坂くんの歌を聴いたことで切り替えるきっかけにもなった。
声そのものにエネルギーがあるってこういうことだな、と思う(なので、私は普段からちょっと元気が出ないときに相坂くんの曲を聴くことが多い。純度の高いエネルギーは音源からでも摂取できるのが素晴らしいところだ)

と、こう書くとまるで相坂くんが声に全振りしている人かのように聞こえるかもしれないが、そんなことは全然なくダンスもとても上手な方だ。
「可愛くてごめん」の細かくて速い振付も完璧に仕上げていて、しかもそれをほんの2日程度で仕上げたと言っていたから驚いてしまった。
ラジオ体操はあんなにやりたくなさそうだったのに。

そういうわけで、総じてこの二人はものすごく『表現者』なのだと感じる一日だった。
二人がそれぞれ違う方向から色んな表現をしてくれる。補完し合いながら高め合う、最強のコンビネーション。
相坂くんが何かしているところをニコニコ眺めている玲奈さんはめちゃくちゃ可愛いし、玲奈さんが斜め上に飛んでいっても動じない相坂くんはとっても頼もしい。

……つまり、今後もトガラジから目が離せないってわけ。

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