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1億円の低カロリー

「田中、飯食いに行くぞ。」
会議の後、課長に誘われた。今日は、これで3度目のランチだ。でも、あと4食食べなければ、ノルマは達成できない。

あれは、この国が得意としていた情報産業や自動車産業が傾き始めた頃だった。当時の首相が秘策に打って出た。

食による経済の復興。

決め手は、農業省が開発したどれだけ食べても太らない低カロリー主食だ。太ると嫌厭されていた主食を低カロリーにして国民に普及させる狙いだが、なぜか、1食当たり1円高い。

農地のすべてが、この低カロリー主食に置き換えられ、耕作放棄地にも作付されたので、国民が3食食べても余るほどの収穫が得られた。

すると、国は、国民に1日7食のノルマを課した。

低カロリー主食は消化しづらいため排泄物が多く出る。国は、ノルマにより手に入れた大量の資金と排泄物で海を埋め、低カロリー主食の作付拡大を行った。

やがて、細長かった国土はまるまると太くなり、国民は、望んでいたとおり、やせ細っていった。

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